ウルトラ怪獣に多すぎる「キング」の由来3パターン。制作の裏事情もあった?
マグミクス / 2021年7月8日 18時10分
■ぱっと見で疑問を抱くような「キング怪獣」も…
庵野秀明監督の『シン・ウルトラマン』や、2021年7月10日(土)から放送予定の新作『ウルトラマントリガー』など、生誕55周年を迎えても衰え知らずのウルトラシリーズですが、作品に欠かせない存在が“怪獣”です。これまでさまざまな趣向を凝らした怪獣が登場してきましたが、今回は彼らのネーミングに注目したいと思います。
怪獣において、定番のネーミングとなっているのが「キング〇〇」や「〇〇キング」というように、名前に“キング”がついた怪獣です。レッドキング、キングジョー、エレキング、ブラックキングなどは有名ですね。怪獣好きな方なら、一度は「キング」の乱用(?)に気付くのではないでしょうか。これら「キング(王)怪獣」たちの命名の背景には、いくつかのパターンがあるようです。
まずは、“強そう”というイメージ先行のパターンです。実は怪獣の名前には「ガギグゲゴ」をはじめとした濁音が多く使われており、これは舌や唇を強く弾いて発音するため、心理学的にも強そうなイメージになるという事情もあります。
名前に「キング」がつけられた怪獣が4体も登場する作品が『ウルトラマンA(エース)』です。同作では怪獣ではなく「超獣」という名称が使われ、怪獣より強い存在として描かれています。
超獣は、地球の生物と宇宙怪獣を掛け合わせて生み出されているため、登場する4体もわかりやすいものばかり。カメレオンの超獣で「カメレキング」、カブトガニは「キングクラブ」、カッパは「キングカッパー」、超獣同士を合体させて「ジャンボキング」……といった具合です。ある生物の頂点に立つ存在として、キング(王)が用いられているというわけです。
ふたつ目が“制作の裏事情”が反映されたパターンです。キングがつく怪獣において、「なんで?」と思える怪獣がいれば、大体がこのパターンになります。
例えば、知名度でもトップクラスの怪獣・レッドキングの体は黄色で、そもそも赤くないため、誰もが不思議に思う典型的な怪獣です。そんなレッドキングの由来は、血の“赤”を見るのが好きな「流血王」であるなど諸説ありますが、一般的に言われているのがウルトラマンの初期タイトルであった「レッドマン」に由来している説です。
『ウルトラセブン』で登場したキングジョー。画像は「ウルトラ怪獣シリーズ 07 キングジョー」(バンダイ)
『ウルトラセブン』に登場する敵ロボット・キングジョーについても、意味がわからない「ジョー」部分ですが、これはウルトラシリーズの脚本を手掛けてきた金城哲夫氏の苗字である「城」を意味しているという説があります。実は番組内では「キングジョー」という名称は使われず、「ペダン星人のロボット」と呼ばれていました。これが後にソフビ人形が発売される際に、正式に「キングジョー」と命名されています。
『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に続く『帰ってきたウルトラマン』にも、謎ネーミングの怪獣「キングザウルス三世」が登場しています。恐竜らしい見た目から「キングザウルス」までは理解できますが、続く「三世」とは何なのか…。一世、二世が登場していないなかで、急な「三世」の登場ですが、この由来も諸説あります。
ひとつは、レッドキング、エレキングに続く人気怪獣になってほしいという制作者の願いを込めて、「三世」とした説。納得感あるところでは、当初はお蔵入りとなってしまったエピソード「呪われた怪獣伝説」で登場する予定で、古代人に改造された恐竜の3代目だったという説もあります。
そして、3つ目のパターンとして近年増えているのが、過去作の怪獣を再登場させる際に、より強い個体として「キング」や「王」をつけるパターンです。映画『大決戦!超ウルトラ8兄弟!』に登場したキングゲスラやキングパンドン。2016年に放送した『ウルトラマンオーブ』には、怪獣の別名として「魔王獣」を与えてゼットンやパンドン、ガタノゾーアが登場しています。
脈々と続くキングネームですが、単純な強さを表現する名前だけでなく、意外な由来も多数あります。制作の願いや敬意が込めらた怪獣たちの背景を知れば、ウルトラシリーズの物語もより楽しめるのではないでしょうか。
(椎名治仁)
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