ガンダム主題歌の作曲も…リバイバルヒットの松原みきさんが残した「アニソン」の足跡
マグミクス / 2021年7月10日 18時10分
![ガンダム主題歌の作曲も…リバイバルヒットの松原みきさんが残した「アニソン」の足跡](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_57837_0-small.jpg)
■「真夜中のドア」が世界的な大ヒットに
歌手・松原みきさんが1979年にリリースしたデビュー曲「真夜中のドア Stay With Me」が、2020年の暮れから世界各国で大変な人気となっています。松原さんはデビュー当初19歳という若さでしたが、ジャズシンガーだった母親譲りの大人びた歌唱力は話題を呼び、「真夜中のドア」は国内で10万枚をセールスするヒット曲となりました。
日本のシティポップスを再評価する近年の世界的なブームや、音楽のネット配信などが松原さんの再ブレイクを後押ししたという背景がありますが、40年以上経ってから「真夜中のドア」が欧米やアジア各国で大ヒットしていることには驚きを覚えます。YouTubeなどで「真夜中のドア」のPVを視聴し、改めて「やっぱり、いい曲だな」と感慨に耽っている往年のファンも多いのではないでしょうか。
国内外のさまざまなアーティストによってカバーされている「真夜中のドア」や、化粧品メーカーのキャンペーンソングだった「ニートな午後3時」などのヒット曲で知られる松原さんですが、アニソン界にも足跡を残しています。時代を駆け抜けた松原さんの活躍を振り返ります。
■アニソンのイメージを広げた、アダルトな歌声
SF作家・高千穂遙氏の同名小説をアニメ化した『ダーティペア』は、セクシーなトラブルコンサルタントのケイとユリが大暴れするスペースオペラです。松原さんは劇場版『ダーティペア』(1987年)のオープニング曲「サファリアイズ」、エンディング曲「パ・ド・ドゥ」のボーカルを務めています。
人気スパイ映画「007」シリーズを思わせる、おしゃれで洗練されたアニメーション映像に松原さんのアダルトな歌声がとてもマッチしていました。
より多くの人の耳に残っているのは、1984年~85年に放映された細野不二彦氏の人気マンガのTVアニメ化『GU-GU ガンモ』(フジテレビ系)の主題歌「ガンモ・ドキッ!」でしょう。松原さんは「スージー松原」名義で初のアニメ主題歌を歌唱しています。ガンモやハンペンといった登場キャラクターたちの名前に合わせて、オデン系の変名にしているところに大阪生まれの松原さんの茶目っ気を感じさせます。
TVアニメの主題歌らしからぬジャズ調のナンバー「ガンモ・ドキッ!」を、松原さんは実にファンキーに歌い上げています。
かつてアニメソングは子供向けの音楽として、レコード業界では低く扱われていた時代がありました。しかし、1980年代になると杏里さんが「CAT’S EYE」、岩崎良美さんが「タッチ」などのTVアニメの主題歌をヒットさせるようになります。実力派シンガーだった松原さんも、アニソンのイメージを広げるのに貢献したひとりだったと言えるでしょう。
■もうひとつの才能「作曲」が90年代に開花
松原みきさんが前期OP曲を歌い、後期OP曲の作曲も手掛けた、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』オリジナルサウンドトラック
ガンダムファンには、オリジナルビデオアニメ『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(1991年~92年)の前期オープニング曲「THE WINNER」の歌手として、松原さんは記憶されています。また、松原さんは後期オープニング曲「MEN OF DESTINY」を作曲。劇場版『機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光』(1992年)のテーマ曲「True Shining」も、松原さんの作曲です。
自身のアルバム収録曲ではすでに作詞・作曲を手掛けていた松原さんですが、1990年代に入ってからは作曲家としてアニソン界で才能を発揮するようになります。
1995年~96年に放映されたTVアニメ『ご近所物語』(テレビ朝日系)では、デザイナーを目指す女子高生・実果子を演じた宍戸留美さんが歌う主題歌「ヒ・ロ・イ・ン」とエンディング曲「DON’T YOU KNOW?」を、松原さんは作曲家として提供しています。
1998年に放映された特撮ドラマ『ウルトラマンガイア』(TBS系)のオープニング曲「ウルトラマンガイア!」も、松原さんの作曲です。NHK『みんなのうた』では、人気声優の國府田マリ子さんが歌った「雨のちスペシャル」を作曲しており、こちらも忘れがたい佳曲になっています。
他にも「おジャ魔女どれみ」シリーズ(テレビ朝日系)や『ママレード・ボーイ』(テレビ朝日系)などのTVアニメの挿入歌やキャラクターソングも手掛けており、アニソン界に残した楽曲はかなりの曲数となっています。
■他人と競争するのは苦手
松原さんの新人時代のインタビュー記事を読み返すと、「他人と競争するのって、わたしは苦手なんです。楽しく音楽をやりたいなァ」と語っています。他の歌手たちとヒットチャートを競うことを、あまり好まなかったようです。自分の好きな曲を歌い、曲づくりに勤しむ日々を松原さんは愛したようです。
松原さんは2004年、子宮頸がんのために44歳の若さで亡くなっています。より人生経験を積んだ松原さんの歌声が聴けないことはとても残念ですが、19歳のときに歌ったデビュー曲が孤独さを抱えている世界じゅうの人たちの心を今も慰め続けていることを、松原さんは天国で喜んでいるのではないでしょうか。
リバイバルブームを受けて、松原さんのデビューアルバム『POCKET PARK』は2021年3月に再販され、シングル曲をセレクトした『プラチナムベスト 松原みき』などのベスト盤も人気を集めています。松原さんが歌ったアニソンや提供した曲まで収録したコンプリート盤も、いつかリリースされる日が訪れることを心待ちにしたい思います。
(長野辰次)
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