僕らは「京アニ」作品を待ち続ける。『小林さん家のメイドラゴン S』でTVアニメに復帰
マグミクス / 2021年7月20日 17時10分
![僕らは「京アニ」作品を待ち続ける。『小林さん家のメイドラゴン S』でTVアニメに復帰](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_58389_0-small.jpg)
■絵コンテのクレジットに受けた衝撃
2021年7月7日からスタートしたTVアニメ『小林さん家のメイドラゴンS』の1話を見ていたとき、エンディングテロップの絵コンテにクレジットされていた「武本 康弘」の名前を見て目を疑いました。
故・武本康弘氏は、2年前の理不尽極まりない事件の犠牲となった、京都アニメーションのメンバーのひとりです。1992年に入社した武本氏は順調に経歴を積み重ねると、2003年の『フルメタル・パニック?ふもっふ』で監督デビューを果たし、2007年の『らき☆すた』、2009年の『涼宮ハルヒの憂鬱』、2012年の『氷菓』、2014年の『甘城ブリリアントパーク』など数々の名作を世に送り出しています。絵コンテや演出としても膨大な数の作品に参加していた、京都アニメーションの中核を担う方でした。
2017年に放送された『小林さんちのメイドラゴン』でも監督・脚本・絵コンテを務めており、まだまだこれからも多くの作品で多くの人を楽しませてくれるはずでした。
『小林さんちのメイドラゴン S』の放送前、武本氏の名前がシリーズ監督としてクレジットされることは公表されていました。武本氏の残した財産はこの作品にまだ生きている、というような意味合いでクレジットされることになったのだろう……筆者は浅はかにもそう思い込んでいたのです。
絵コンテとは、アニメ作品の制作前に用意される、映像のイメージを具現化するためのイラストによる設計図で、スタッフ内でのイメージ共有に使われているものです。
今回、絵コンテとしてクレジットされていたのは武本氏と本作で監督を務める石原立也氏のおふたりです。作品のどの部分に武本氏が残した絵コンテが使われたのかはわかりません。もしかするとごくわずかな割合なのかも知れませんが、それでもあの日に失われたはずの足跡にまだ続きがあったことに、強く感情を揺さぶられることとなりました。
■今後は劇場版『Free!』二部作と『ツルネ』劇場版を予定
2021年9月に公開が予定されている、『劇場版 Free!-the Final Stroke- 前編』ティザービジュアル (C) おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶町後援会2021
また、作画監督は岡村公平氏ただひとり。原画のスタッフは7名となっていました。作画監督とは異なるスタッフが描く原画の絵柄を統制するポジションで、近年ではアニメ1話につき、多い場合は10人ほどが務めることもあります。原画のスタッフも30人を超えることはざらにあるのですが、今回京都アニメーションはたったこれだけの人数でやってのけたのです。
亡くなられたあまりにも大事な方々、もっともっとアニメを作りたかった方々に存在していたはずの未来が突然断ち切られたことを決して忘れてはなりませんが、それでも生きている方は描き続けなければなりません。アニメを作り続けることが、亡くなられた方への何よりの供養になるのですから。
京都アニメーションの今後のスケジュールとしては、2021年9月17日(金)公開予定の『劇場版 Free!-the Final Stroke- 前編』に続き、2022年4月22日公開予定の『劇場版 Free!-the Final Stroke- 後編』、そして第7回京都アニメーション大賞小説部門審査員特別賞を受賞した『夜多の森弓道場』をアニメ化した『ツルネ -風舞高校弓道部- 劇場版』が予定されています。まだ情報が公開されていない新たなTVシリーズ作品も、おそらく水面下では動き出しているでしょう。
失った仲間を悼む気持ちと、事件が残した痛みや傷は、いつまでも癒えることはないでしょう。それでも、アニメという夢に向かって生きる方々が手を取り合い動き続けている京都アニメーション。かつてのように毎年素晴らしいTVアニメを送り出してくれるようになるにはまだ時間がかかるとは思いますが、それでもファンはいつも、京都アニメーションの作品を楽しみにしているのです。
(ライター 早川清一朗)
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