「ライダーカード」も50年で進化した! スナックのおまけから最新ゲームまで…
マグミクス / 2021年8月1日 7時30分
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■子供たちを熱狂させた、オマケ付きお菓子の元祖
『仮面ライダー』シリーズの商品といえば「変身ベルト」が一般的ですが、それと並ぶほど商品展開されているものとして「カード」があります。実はライダーとカードの関係は意外と古くて長いものでした。
シリーズ最初の作品である『仮面ライダー』のブームを支えた商品に、「仮面ライダースナック」というお菓子があります。この商品はお菓子メーカーとして有名なカルビーが販売したもので、おまけとしてもらえるライダーや怪人の写真を使ったカードが子供たちの目当てでした。
さらに、ごくまれに封入されていたラッキーカードをカルビーに送ると、カードを収納するアルバムと交換できるという特典もあり、子供たちはこぞって買い集めます。
1971年末ごろから関東限定で販売したこの商品は、またたく間に子供たちの心をとらえ、翌年3月には全国展開しました。
カードの魅力はいくつかあります。まずは使用されている写真。撮りおろしでカードにしか使われていない写真もありました。時には書籍よりも早い情報や写真も使われたことも魅力のひとつです。
さらに、カード裏の説明文が書籍にも載っていない貴重な情報だったことも大きな魅力でした。それまでのカードの主流だったブロマイドになかった仕様で、トレーディングカードにつながるこのフォーマットは本商品が先駆けになります。
ちなみにこの説明文を書いたのが、番組プロデューサーの阿部征司さん。つまり公式の設定です。後にお聞きしましたが、とにかく本数が多かったので良い小遣い稼ぎになったそうです。
数の多い商品でしたから、自然と余ったカードを交換する子供が増えました。いわゆるトレードです。この年代の人はライダーカードでトレードを知り、ものによってレートが違うということを覚えました。もっとも当時、「トレード」という言葉はプロ野球くらいでしか使われていなかったと思います。
このような魅力にあふれた商品でしたから未曽有の大ブームになったわけですが、実は筆者はあまり商品を買ったことがありません。それはメインであるはずのスナックがどうにも美味しくなかったからです。甘い焼き菓子のような商品だったのですが、一袋食べるのも苦痛な味わいでした。これは筆者だけでなく、周りの子供たち、後に知り合った人も同じことを言っています。
そういう理由から、食べ物を粗末にしてはいけないと教えられた子供時代の筆者は、ひとつ食べてから次を買っていたのですが、カードが切り替わるサイクルがあまりにも早く、そのスピードについていけず買うことをあきらめました。
しかし、大多数の子供たちはライダーカードの魅力に取りつかれ、カードのために大量に商品を買って、お菓子は捨てる……という行為に出ます。これが当時の社会問題になった「ライダースナック投棄事件」でした。
事件といっても注意喚起が行われるだけで、本商品は後番組『仮面ライダーV3』に入っても販売を続けます。販売が中止になった要因は諸説ありますが、商品は「プロ野球スナック」と「マジンガーZ スナック」に切り替わったことで、自然とライダーカードはブームに自ら幕を閉じました。
■作品に取り入れられて進化するカード
カードが作品内の設定に取り入れられ、大ヒットした『仮面ライダー龍騎』。画像は「仮面ライダー龍騎 Blu‐ray BOX 1」(東映)
それから20年以上経って、『新世紀エヴァンゲリオン』の人気に引っ張られる形で「トレーディングカードブーム」が起こりました。この時、『仮面ライダー』も商品化し、直筆サインカードが人気を呼んで、かなりの売り上げを記録します。その好評ぶりに第二弾、『仮面ライダーV3』以降の作品も商品化されました。この時、「仮面ライダースナック」の復刻版カードをオマケにした「仮面ライダーチップス」も販売されます。
この90年代後期に起こったブームをきっかけに、『遊戯王』のヒットで日本に「TCG(トレーディングカードゲーム)」という文化が根付き、「カードショップ」という新しいジャンルの産業が定着しました。これをして日本人はカードが基本的に好きだと論じる専門家もいます。
『仮面ライダー』も「RIDERS’ LEGEND」というTCGをブームの際に販売しましたが、残念ながら好評とはいえず、1年ほどでシリーズ展開を終了しました。イラストでなく写真を使った斬新なTCGだっただけに、残念に思うファンも少なくなかったです。
その後、TCGに使われるカードを『仮面ライダー』の世界に組み込んだ作品が、2002年から始まった『仮面ライダー龍騎』でした。作品の面白さと相まってメインの商品となったカードは飛ぶように売れ、平成シリーズのキャラクター商品売り上げ1位を記録します。
変身ベルトや関連アイテムという高額商品に、比較的安価なカードを使ってプレイバリューを広げたことがヒットの要因だったと分析する人もいました。そして、この形は徐々に整えられ、平成ライダー2期といわれる作品では定番化していきます。
しかしこの時、カードは商品としてヒットするという思い込みが送り手側にはあったようで、わずか2年後の2004年に『仮面ライダー剣(ブレイド)』で今度はトランプをモチーフにしますが、商品売り上げを一気に下降させてしまいました。
その後、『仮面ライダー』とカードが関係したのは、2008年に稼働したアーケードゲーム「仮面ライダーバトル ガンバライド」です。そして、このカードを使った仮面ライダーが翌年2009年から平成仮面ライダー10周年プロジェクトの一環で放送開始した『仮面ライダーディケイド』でした。
10周年というお祭り要素もありましたが、この作品で『仮面ライダー龍騎』の売り上げ記録を更新、2011年まで1位記録を伸ばし続けます。
その後、「ガンバライド」は2013年から「ガンバライジング」へと筐体を変えますが、今なお玩具屋やゲームセンターなどで稼働中。安定した根強さを見せています。逆にこの筐体が現存することで、『仮面ライダー』という作品でカードがメインになるシリーズは『仮面ライダーディケイド』以降現れていません。
しかし前述した通り、カードの役割はメダルやスイッチ、今は本という形でライダーシリーズに受け継がれています。最初はただの関連ヒット商品だったカードが、やがてシリーズの根幹となるアイテムの始祖となるとは誰も思わなかったことでしょう。このように仮面ライダーとカードには、切っても切れない縁があったわけです。
(加々美利治)
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