ベジータ、「もっと評価されるべき」2つの変遷ポイント 極悪人から最高のライバルに
マグミクス / 2021年8月12日 7時10分
![ベジータ、「もっと評価されるべき」2つの変遷ポイント 極悪人から最高のライバルに](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_59814_0-small.jpg)
■悪役として死を迎えたベジータだったが…
『ドラゴンボール』で孫悟空最大のライバルである「ベジータ」。その性格は物語の進行とともに徐々に変化していきました。
悟空と同じ戦闘民族サイヤ人、その王子でありエリート戦士のベジータは登場当初から強大な敵として描かれます。悟空の兄でピッコロとふたりがかりでも苦戦したラディッツ。そのラディッツを「弱虫」とバカにして地球側の戦士の大半を葬ったナッパ。そのナッパをも簡単に始末したことで、ベジータの力の強大さは戦う前から分かっていました。
修行で強くなった悟空との対戦は二転三転し、相打ちに近い形で何とか勝利することができます。そして、最初の地球での戦いの後、舞台はナメック星へと変わりました。ここでベジータはドラゴンボールで不老不死を得て、フリーザに変わって宇宙を支配するという野望をあらわにします。ここで戦いは悟空たち、フリーザ軍、ベジータという三つ巴の争いになりました。
ベジータは自分の野心のために次々とフリーザ軍の強敵を倒すわけですが、これが結果として悟飯とクリリンを助けることになります。ゲームでいうと、攻略不可能の敵をNPCが倒してくれるようなものでしょうか。その後、ギニュー特戦隊の登場により危機感を感じて悟飯たちと共闘するという流れは、性格的にも味方にならないだろうと思っていたベジータが無理なく味方になる絶妙の展開でした。
その後、フリーザとの戦いで力及ばずベジータは死んでしまいます。そして悔しさのあまり涙を流し、同じサイヤ人である悟空に後を託しました。この場面で、それまで悪人でしかなかったベジータのキャラに厚みができたと筆者は思います。
原作者の鳥山明先生は、ここでベジータを退場させる予定だったと語っていました。ベジータの声を担当した堀川りょうさんもここで最後だと思っていたそうです。ちなみに当時の筆者もこれで最期だと思っていましたし、当時のファンのほとんどもベジータの出番はもうないと思っていました。
しかし、ベジータは偶然にもドラゴンボールで復活します。そして物語は連続して続いていた「サイヤ人襲来編」「ナメック星編」が終了し、新章の「人造人間編」へと移りました。
■ベジータが変わったと思えるふたつのポイント
本作を振り返った時、ベジータが大きく変わったという第1のポイントはここにあると思います。 それまでのベジータと大きく性格が変わったわけではありませんが、その目的が間違いなく変わったからです。以前のベジータはフリーザを倒して、代わりにその位置に座ることでした。それが悟空を倒して自分がNo.1になることに変わります。
おそらく、それまでの自分の目標だったフリーザを倒した悟空に対して急速に興味がわいたのでしょう。そして、これがベジータにある変化をもたらします。それは征服欲や支配欲の欠如。ベジータのモチベーションは自分より強い相手を倒し、その位置につくことだと考えられます。つまり征服者だったフリーザから、単に強さだけを求める悟空にターゲットが変わったことで、倒した後の目的まで変わったのではないでしょうか。
登場当初のベジータなら、悟空がいなくなった状況に喜び、邪魔者のいない地球を荒らしていたかもしれません。それが悟空を助ける方法を悟飯に伝え、超サイヤ人となった悟空と正面から戦って勝とうと考えました。不老不死になってでもフリーザを倒そうと考えていた時とは明らかに違います。
このことがきっかけで、地球に居座ることになったベジータは、やがてブルマとの間にトランクスをもうけるという、それまででは考えられなかった展開を迎えました。しかし、すぐに家族愛に目覚めるわけでもなく、人造人間との戦いのなかで危険な目に遭うブルマと幼いトランクスを気にも留めない行動をとります。
ところが、セルゲームの終盤でトランクスがセルに殺された時、ベジータは怒りで我を忘れてセルに向かっていきました。この間に何があったのでしょう。考えられる可能性はひとつ。精神と時の部屋でトランクスとふたりっきりで修行したことです。
精神と時の部屋で何があったかは語られていませんが、幼い日に父を失っているトランクスと一緒にいることで、ベジータの心に何らかの感情に芽生えたのかもしれません。精神と時の部屋では1年の時間が過ぎているのですから。
かつてベジータを見逃すよう悟空が言った時、クリリンはピッコロと違って絶対に改心しないと言っています。それが偶然の積み重ねとはいえ、目立った改心をすることもなく、もっとも頼もしい味方へとなりました。それも物語の進行上、まったく無理のない展開です。本作の素晴らしい部分は多々ありますが、このベジータの無理のない変節は、もっと評価されていいのではないでしょうか?
もしかしたらプライドが高く融通が利かないように見えるベジータですが、本人も自覚しないだけで意外と周囲に染まりやすいタイプなのかもしれません。そう考えると「魔人ブウ編」以降、作品が進むにつれて徐々にギャグ化していったと言われるベジータの変貌も理解できますね。朱に交わって赤くなったのかもしれません。
(加々美利治)
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