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「ガンダム」シリーズ・2つの悲劇 フォウとステラの物語が語り継がれる理由は

マグミクス / 2021年8月26日 7時10分

「ガンダム」シリーズ・2つの悲劇 フォウとステラの物語が語り継がれる理由は

■劇場版ではカットされたフォウのさらなる悲劇

『機動戦士ガンダム』の物語では、いくつかの悲劇が描かれています。なかでも、アムロ・レイとララァ・スンの敵同士でありながら分かり合えた男女の物語は、その後の「ガンダム」シリーズでも何度か繰り返された定番の展開になりました。そこでアムロとララァと同様に起こった、ふたつの悲しい物語を振り返ってみます。

 まず、『機動戦士ガンダム』の続編である『機動戦士Zガンダム』では、カミーユ・ビダンとフォウ・ムラサメの物語がそれにあたります。ふたりの最初の出会いはガンダムMk-IIとサイコガンダムのコクピットの中。つまり顔を合わせてはいません。

 その後、偶然から知り合ったふたりはお互いの境遇を語り、いつしかひかれあうようになります。しかし、過去の記憶のないフォウはそれを取り戻すために研究所から離れることができず、カミーユもティターンズの横暴を見過ごせないという事情から、現在の自分の立場を捨ててまで片方のもとへと飛び込むことができずにいました。

 お互いにひかれあいながらも戦いを続けるカミーユとフォウ。しかし、カミーユのひたむきな言葉がフォウの心を動かします。そして、カミーユを宇宙に帰還させるため、フォウは犠牲となりました。この時、フォウの名前が4番目という意味だと知ったカミーユは、自分の名前にいだいていたコンプレックスを捨て去り、人間的に大きく成長します。

 実は富野由悠季監督の当初の構想では、フォウはここで退場させる予定でした。そのため、その後に製作された劇場版ではここでフォウが退場します。ある意味、ここで退場した方が良かったのかもしれません。なぜならTV版で描かれた、この後のフォウの身の上はさらに悲惨なものだったからです。

 ティターンズの拠点キリマンジャロ攻略に急きょ参加することになったカミーユは、戦闘マシンのようになったフォウと出会いました。その後、カミーユは単身基地内に潜り込みフォウと再会します。そこでカミーユは、フォウがサイコガンダムから強制的にコントロールされていることを知りました。

 ふたたびサイコガンダムで戦場に飛び出すフォウ。カミーユは必死で説得を試み、フォウの心は支配から解き放たれます。しかし、その次の瞬間、カミーユを狙ったジェリド・メサの一撃から盾になってかばう形でフォウはその短い生涯に幕を閉じました。

 この第36話「永遠のフォウ」を見ると分かるのですが、コントロールされていないフォウの表情が切れ長の目で描かれている設定書と違い、つぶらな瞳をしています。これは作画監督の北爪宏幸さんの判断でした。

 また、声優の島津冴子さんの演技も、普段と戦う時では別人のようにトーンを変えています。このふたりの熱意が、画面をより魅力的なものにしていました。そして、それはカミーユとフォウの悲劇を、より深く刻み込むことに成功していると思います。

■生き残ることでより悲劇の道を歩んだシン

シン・アスカとステラ・ルーシェが描かれる 小説『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』第2巻(原作、矢立肇・富野由悠季、著:後藤リウ/KADOKAWA)

 もうひとつの悲劇的な物語は、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のシン・アスカとステラ・ルーシェの出会いです。ふたりは本編開始時に初めて出会いますが、その時のことはお互いに覚えていないことになっていました。

 この後、シンとステラは戦場で何度となく戦いますが、お互いに顔を合わせるわけではないので認識のないまま時間が過ぎていきます。そのふたりがお互いを明確に意識したのは、溺れているステラをシンが助けたことでした。この偶然の出会いが、ふたりの運命を加速させます。

 ステラには行動を抑制するためにブロックワードという暗示が施されていました。「死」に関連する言葉を聞くと恐慌状態になってしまうのです。それを知らずに「死」を口にしたシンの目の前でパニックを起こすステラ。しかし、シンの「守る」という言葉に落ち着きを取り戻します。

 しばらくした後、「死」という言葉を聞いたステラは、シンの「守る」という言葉を思い出し、自分の育った研究所を救おうと単独で出撃して捕らえられてしまいました。パイロットだったステラの姿にがく然となるシン。しかし、ステラは記憶操作で過去の不必要な情報はリセットされていてシンのことを忘れていました。

 その後、消された過去を奇跡的に思い出すステラ。しかし、定期的な薬剤投与が必要だったステラは徐々に衰弱していきます。死体でもサンプルとして本国に送るという話を聞いたシンは、軍機違反で重罪になることを承知でステラを脱出させ、戦争とは関係のない世界で過ごすことを条件に敵軍に引き渡しました。

 しかし、このシンの思いは叶えられなかったのです。ふたたびステラは戦場に繰り出され、シンと出会ってしまいました。そして、シンの目の前でその命を散らします。もう二度と誰かに弄ばれたくないと、シンは雪の降る湖にステラを水葬しました。

 ところが、この悲劇がさらなる悲劇へと続きます。家族に続いてまたしても目の前で大切な人を失ったシンは、ステラの死の原因を戦闘に介入してきたフリーダムが原因だと思い込みました。そこにつけ込む他者の思惑もあって、シンは自分の行動に絶対の自信を持ちます。それが他者の敷いたレールの上とも気付かずに、シンはフリーダムを撃墜し、良き指導役だったアスラン・ザラも裏切者だと思い込んで撃墜しました。

 そのまま最終決戦まで自分の意志で戦っていると思い込んだシンは、敵となったアスランとの戦いを迎えることになります。しかし、アスランの言葉に迷いを見せるシンは撃墜され、ステラの幻影と邂逅しました。その時、シンは自分のしたことを振り返る余裕がようやくできたのかもしれません。目を覚まして号泣するシンを見て、筆者はそう感じました。

 他にも同様の展開は「ガンダム」シリーズでいくつか見受けられますが、このふたつを印象的だと感じる人は多いことと思います。その理由は自分の意志とは関係なく戦いを強要される点でしょう。実際にゲームなどで、この場面を再現する場合、ほとんど悲劇を回避するシナリオが用意されています。それほどまでに、このふたつの悲劇はファンの心に響いていたのかもしれません。

(加々美利治)

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