ファミコンの懐かしアイドルゲーム3選 衝撃的すぎなENDも…
マグミクス / 2021年8月29日 13時10分
■ファンに色んな意味で夢を与えたアイドルゲーム
ファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)は「スーパーマリオ」シリーズ等のヒットタイトルを生み出した名ハードとして知られていますが、当時はマンガやアニメの人気キャラクターを取り扱った「キャラクターゲーム」も盛んに作られていました。その延長線にあたるのが、タレントやアーティストをメインに据えたタレントゲーム。『たけしの挑戦状』や『さんまの名探偵』にはじまり、さまざまな著名人が次から次へとゲーム化された時代でもあったのです。
この記事では、1980年代に発売されたファミコン向けアイドルゲームを3つピックアップ。ゲームシステムや注目ポイントにフォーカスしながらご紹介します。
●『アイドルホットライン 中山美穂のトキメキハイスクール』(任天堂)
最初にご紹介するのは、ファミコンディスクシステム向けに開発された『アイドルホットライン 中山美穂のトキメキハイスクール』(以下、中山美穂のトキメキハイスクール)。タイトル名の通り、1980年代後半に”アイドル四天王”として支持を得ていた中山美穂さんが登場するコマンド選択式アドベンチャーゲームです。
元々はスクウェア(現スクウェア・エニックス)から別ゲーム案の企画が任天堂へと持ち込まれ、改変を加えたのちにアイドルゲームへと落ち着いた模様。ちなみに、開発には「ファミコン探偵倶楽部」シリーズの原作を手掛けた坂本賀勇さん、「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親である坂口博信さんも携わっていました。
本作を一言でまとめるなら、「プレイヤーと中山美穂との恋物語」。プレイヤーは「トキメキ学園」の学生となり、とある出来事がきっかけで同学年の女生徒「高山みずほ」(=中山美穂)と交流を深めることになります。
ゲームシステム面は1987年9月にリリースされた『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』をベースとしつつも、ドット絵にアレンジされた中山美穂と会話を繰り広げるイベントシーンを挿入。ただ選択肢を選ぶのではなく、ゲーム内の中山美穂の表情や語調に気を配り、加えてテキストウィンドウに表示されている”主人公(プレイヤー)の表情”を変える必要がありました。中山美穂との会話シーンは選択ミスが即ゲームオーバーにつながってしまうため、万が一誤った表情を浮かべてしまうと、恋が実らずにそのままバッドエンドへ直行するパターンも珍しくなかったのです。
とは言え、アドベンチャーゲームとしては水準以上のクオリティ。恋愛を題材としているためゴールも分かりやすく、現役アイドルが登場する恋愛ゲームということで話題性も抜群でした。「作中のエンディングと連動したプレゼントサービス」(ビデオテープ or テレホンカード)、「中山美穂の肉声が聞ける電話サービス」……などなど、中山美穂のファンに向けたタイアップ企画も豊富に行われ、本作はアイドルゲームの中なかでも高い知名度を誇っています。
●『ラサール石井のチャイルズクエスト』(ナムコ)
1986年に結成したお笑い女性アイドルグループ「チャイルズ」(メンバー:磯野貴理子さん・久留龍子さん・茂原裕子さん)も、1989年にファミコン向けタイトルとしてゲーム化を果たしています。その名も『ラサール石井のチャイルズクエスト』。大まかなあらすじは「芸能プロのマネージャーとなり、チャイルズを日本一のアイドルグループにするべく営業活動に励む」というもので、1980年代の日本を舞台に全国行脚へと出発します。
”アイドルマネージメント”という一点は「アイドルマスター」シリーズを彷彿……もとい先取りしている気もしますが、どちらかと言えば本編はRPGに近く、ザコ敵との戦闘を繰り返してお金と人気を集めることが第一に求められました。と言っても、本作では武器を振るってモンスターを攻撃するわけではありません。
では何をするかと言うと、売出し中のアイドルらしく、道中で出くわした一般人に向かってひたすら”営業”をかけるのです。この営業を「よいしょ画面」と呼び、プレイ中は「おべっかを使う」、「無差別に吐き捨てられる罵詈雑言を聞き流す」といった涙ぐましい(?)努力が攻略のカギを握っていました。
とりわけて本作は不満度(作中ではフマンドと表記)のコントロールが重要。「一般人にイタズラされる」、「宿泊施設やレストランのランクがチャイルズのレベルに見合っていない」などの原因でどんどん上昇していき、100%まで溜まってしまうと芸能プロへ強制的に送り返されてしまうのです。ゆえにプレイヤーは彼女たちのケアに最優先で取り組まなければならず、フィールド上で”お手洗いのタイミング”も問われるシチュエーションも存在しました。
同じアイドルゲームという分類でありながらも、上述の『中山美穂のトキメキハイスクール』と比べると、独特な雰囲気のシナリオや自虐気味のテキストも相まってか、本作はどこかバカゲー的な雰囲気が目立ちます。その作風が顕著に現れたエンディングはまさかの夢オチであっけなく終了。”チャイルズの売れ行きを嘆いた運営陣のメタ発言”とも取れる内容となっており、クリアまでたどり着いたプレイヤーにそれなりの衝撃を与えました。
●『リサの妖精伝説』(コナミ)
最後にご紹介するのはコナミが手掛けたコマンド選択式アドベンチャー『リサの妖精伝説』です。TVドラマ『毎度おさわがせしますIII』の主演や「ロッテ」のイメージガールを務めた立花理佐さんが主役。なお、本作のリリースに際して制作されたイメージソング(リサの妖精伝説-Fairy Tale-)は、歌詞の一部(リボンをほどいた妖精・エメラルド色の剣をもってるなど)がゲーム本編の内容と連動しています。
昨今のエンタメ業界では、ごく普通の一般人が突然ファンタジーの世界へ飛ばされる”異世界転生”なるジャンルが流行していますが、本作はそのパターンをひと足早く実現。転生こそしないものの、主人公(プレイヤー)と立花理佐が一緒におとぎ話の世界へ飛ばされ、ファンとアイドルという関係性から一転、”窮地を脱出するためのパートナー”として描かれます。
基本的にはプレイヤーと立花理佐が協力し、各ステージ(全4章)を巡りつつ、災いの元凶を正すことでストーリーが進行します。最初は真冬の街の始まり、天空にそびえ立つ森林を通り抜け、危険なメデューサが待ち受ける海中神殿へ突入。ラストは暗黒を司る暗闇の魔女を倒し、世界に光を取り戻してエンディング……という壮大な流れが特徴的。「旅の過程で恋仲になる」といったお約束の流れを盛り込みながらも、ファンタジー路線のアドベンチャーゲームとして仕上がっていました。
今回取り上げた3つのファミコンソフトは、1980年代後半のアイドル人気を振り返る上でも貴重な資料となる作品ばかり。プレイ経験のある方はゲーム内容と一緒に当時の思い入れ具合を振り返ってみてはいかがでしょうか。
(龍田優貴)
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