「つくば万博」開催から36年。コスモ星丸たちが見せてくれた「未来」の姿とは
マグミクス / 2021年8月29日 17時10分
■人の数に圧倒されたつくば万博
36年前、両親に連れられつくば万博を訪れた筆者の目に映ったのは、見渡す限りの人の波でした。万博開催のため常磐線に開設された「万博中央駅」のなかをものすごい勢いで動き続ける人の列を見て、「もしはぐれたら絶対に出会えない」と不安に駆られたことを今でも覚えています。
駅を出てシャトルバスに乗るためにまた行列、会場入りしてからも人気パビリオンはものすごい人だかりで、どこを見に行けばいいのか困惑したことも、今となればいい思い出です。
あの日、広大な会場に立ち並ぶ数多くのパビリオンを回りましたが、なかでも印象深かったのが、Bブロックにあった「でんでんINS館」の展示です。
日本電信電話公社(現:NTT)が研究していた高度情報通信網であるINSを生活の中に取り入れた暮らしを体験する内容だったのですが、当時としては『ドラえもん』をはじめとするマンガや映画のなかにしか存在しなかったTV電話が実用化されたという設定になっていました。
このとき筆者が見たもののなかに、「キャプテンシステム」と呼ばれる衛星放送やデジタル通信ネットワークを使用した、文字や画像情報の伝送やゲームの試遊など、さまざまなサービスを受けられる近未来が表現されていました。現代ではインターネット網の普及により当たり前の話となっていますが、当時としてはこれからやってくる時代をイメージさせてくれる、画期的な内容だったのです。
他にも、三菱グループのパビリオン「三菱未来館」で見た、海から生まれる命の神秘が示す人類の過去と、これから向かう未来を示す宇宙ステーションのイメージに、強烈に心を揺さぶられたことを覚えています。
しかし、この日何よりも乗ってみたかったリニアモーターカーは、あまりの混雑で泣く泣くあきらめる結果となりました。いつか乗る機会もあるだろうと思っていましたが、36年経った今でも乗ったことはありません。近いうちにその機会が巡ってくるといいのですが。
■つくばエキスポセンターで「コスモ星丸」と再会できる
つくば万博開催時に発売されたグッズや記念品なども展示されている
さて、つくば万博といえば多くの方が思い出すのが「コスモ星丸」でしょう。日本全国の小中学生から公募され、当時愛知県に住んでいた女子中学生のデザインをもとに、デザイナーの和田誠氏が仕上げを行ったキャラクターです。万博の象徴として人気を博しました。
万博会場にもさまざまな形でコスモ星丸が姿を見せており、その一部は万博の閉会後に再オープンした「つくばエキスポセンター」で、当時のまま来場者を出迎えています。
コスモ星丸は現在も人気の高いキャラクターで、カプセルトイとしてフュギュアマスコットも2021年9月に販売が予定されています。エキスポセンターの売店でもさまざまなグッズが販売されており、特にTシャツの人気が高いそうです。
筆者もコスモ星丸が大好きで、お土産におもちゃを買ってもらった記憶があります。今はもう無くしてしまいましたが、エキスポセンターにはかつて万博で販売されたさまざまなグッズが来場者から寄贈され、展示されています。
つくばエキスポセンターには、開会式で早稲田大学が開発し、開会式でNHK交響楽団と共演したオルガン演奏ロボット“ワスボット”も展示されています。最先端の科学が目指していた音楽を奏でる機械は、形こそ違えど「初音ミク」をはじめとするボーカロイドとして昇華され、文化の一翼を担う存在ともなっています。
つくば万博の開催から36年の間に発展したものは数多く存在しており、その基礎部分として万博が見せてくれたものが大きく関わっています。現代ではロボットが掃除や接客を行うのは当たり前となり、インターネットで遠く離れた人と一緒に遊べるようにもなりました。誰もが持っているスマホは生活のありとあらゆる部分に入り込み、なくてはならない道具となっています。
果たして今の子供たちに、あのころ皆が夢見ていた輝かしい未来を見せることができるのかはわかりませんが、そうであってほしいと願っています。
(ライター 早川清一朗)
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