1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. 面白ネタ

悲運の「かませ犬」ヤムチャ 今だから分かる、「楽」の文字に込められた思い

マグミクス / 2021年8月30日 7時10分

悲運の「かませ犬」ヤムチャ 今だから分かる、「楽」の文字に込められた思い

■強かったからこそ「かませ犬」だったヤムチャ

 ヤムチャが『ドラゴンボール』に初登場したのは原作マンガでは7話、アニメでは5話の初期話数で、最初はドラゴンボールを狙う盗賊としての登場です。とはいえ、悪人というほど非道なイメージは薄く、どちらかというと孫悟空のライバル的な存在でした。当初のモチーフは『西遊記』の沙悟浄でしたから、猪八戒役のウーロンのように後から仲間になることが前提のキャラだったのではないでしょうか。

 この時のヤムチャは、征服欲のようなものはなく、金品に関しても奪えばいいと言ってました。しかし、盗賊稼業も街に行くなど、もっと効率のいい方法があるわけで、指名手配もされていないことから、大きな悪事は働いていない感じがします。あくまでも「ちょい悪」程度だったのかもしれません。

 この頃のヤムチャは空腹時の悟空を圧倒できるくらいの実力もあったので、初期の本作では紛れもなくNo.2の実力者でした。たびたびファンから最強キャラの一角に挙げられる兎人参化との戦いでは、ニンジンになったブルマを救出して、悟空を助けるという功績も果たしています。もしも、最初のドラゴンボール探しで物語が終わっていれば、その後にあったヤムチャへのマイナス評価はなかったことでしょう。そう考えると本作の長期化でもっとも被害を被った人物はヤムチャということになります。

 ヤムチャの願いは「女性に対して緊張しなくなる」こと、それがブルマと行動を共にするようになったことから自動的に克服され、悪事から完全に足を洗いました。そこからブルマとの恋人生活が始まり、亀仙流の修行では、かめはめ波もクリリンより先に習得しています。こう見ると、この時点ではヤムチャの方がクリリンより実力は上だったかもしれません。アニメではクリリンを殺したタンバリンと負傷癒えぬ状態で互角だったことから、少なくともそう考えていた人は少なくなかったでしょう。

 しかし、この時点でもヤムチャは「かませ犬」という扱いでした。天下一武道会では、すべて一回戦で敗退しているからです。もっとも、そのなかのジャッキー・チュンと天津飯は優勝、シェンは地球の神様だったので仕方ありません。かませ犬という引き立て役も、一定の実力がなければ成立しないもの。後にライバルとなった天津飯、ピッコロ、ベジータも悟空と戦うラスボスの前座という役割を果たしています。

 つまりかませ犬は仲間のなかでも強い証だったわけですが、ヤムチャの悲運はその後に見せ場が用意されなかったことでしょう。つまり、負けたまま活躍もなく終わったことにあります。

■ノーサイド精神とポジティブ思考がヤムチャの強み

 それと、ヤムチャのマイナス点として「ドヤ顔」を挙げる人が多くいます。天津飯や栽培マン戦であれだけ言葉でディスっておきながら、あっさり敗北したことが要因でした。しかし、これから戦う相手に強気で挑むのは当たり前で、ダメ出しするほどのこともないかと思います。あえて言うなら、油断につながってると思える部分でしょうか。

 こうやってヤムチャのダメな面ばかり挙げていますが、彼にはもちろん良い部分もたくさんあります。そのなかでも、戦いの後に恨みを残さない「ノーサイド精神」は、悟空に優るとも劣らないのではないでしょうか。

 例えば前述の天津飯との戦い後、改心して謝ってきた天津飯に一切の恨み言を言っていません。また、その天津飯から気持ちが分からないと言われながらも、間接的に自分を殺した一因であるベジータと暮らすことを問題視していない。他にもジャッキー・チュンやシェンと戦った後は実力を素直に認め、年上であることから丁寧な言葉で接していました。

 とにかくいつまでも悪い気持ちを引きずらず、過去のことは過去のこととする未来志向の持ち主だと言えます。それゆえ、フラれた相手であるブルマと気兼ねなく友人として付き合えるのかもしれません。思えば、最初に着ていた服の中央にある「楽」の一文字が、ヤムチャの変わらぬ生き方の指針なのでしょう。

 他にも嫌な予感がすると、一度死んだことのあるクリリンに代わって栽培マンと戦い、戦力にならないからと心臓病で倒れた悟空を連れて戦線を離脱するなど、仲間思いで優しい面が多々見られます。そういう意味では戦いに特化していく仲間たちに比べて、人間的に甘い部分があったことがヤムチャの美徳であり、戦士としてはマイナスだったのかもしれません。

 逆にそんな人間臭さが、ネタキャラとしてファンから愛され、ディスられる存在になったのではないでしょうか?

 アニメ『ドラゴンボール超』第70話「シャンパからの挑戦状!今度は野球で勝負だ!!」では、久々に物語の主役を演じ、シリーズ初の副音声放送で担当声優の古谷徹さん自ら色々と語るという試みがありました。また、まさかのスピンオフマンガ『ドラゴンボール外伝 転生したらヤムチャだった件』は、ヤムチャというキャラがいかにファンから認知され、愛されているかの証明でしょう。

 今や「かませ犬」も、「相手に暴言を吐く役」も、「ブルマ」もベジータに奪われたヤムチャですが、そんな過去は気にせずに生きているからこそ、今を「楽」に過ごしてポジティブな人間味あふれるキャラに落ち着いたのだと思います。

(加々美利治)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください