9月2日は「グフの日」 姫のために戦った、青いMSに乗る2人の武人
マグミクス / 2021年9月2日 7時10分
![9月2日は「グフの日」 姫のために戦った、青いMSに乗る2人の武人](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_61302_0-small.jpg)
■部下からの信頼厚き「青い巨星」ランバ・ラル
9月2日は、語呂合わせから「グフの日」と言われています。 グフと言えば、『機動戦士ガンダム』で一年戦争中にガンダムを苦しめたMS(モビルスーツ)として知られています。今回はそのパイロットにスポットを当ててみましょう。
今までザクとしか戦っていなかったアムロ・レイの操縦するガンダムの前に、初めて現れたジオン公国軍の新型MSが「YMS-07B グフ」でした。右腕に伸縮式の電磁鞭「ヒート・ロッド」、左腕には牽制用の「5連装75ミリマシンガン」、そして「グフ・シールド」、それに搭載された「ヒート・サーベル」と、地球連邦軍のMS量産を見越して格闘戦用に特化した地上用MSです。
それまでのジオン公国軍主力量産型MSザクを上回るパワーと、巧みなテクニックでアムロを驚愕させたグフのパイロットこそが、「青い巨星」の名前で知られたランバ・ラル大尉でした。軍のなかで出世コースから外されたランバ・ラルは、上官であるドズル・ザビ中将から弟ガルマ・ザビの仇討ちを命じられ、内縁の妻クラウレ・ハモンや部下たちの生活のため、自分の主義に反しながらもガンダムと母艦であるホワイトベースの打倒を果たそうとします。
実直な性格のため、器用に立ち回れずに損をすることもありますが、部下からの信頼も厚く、その生き方を含めて心酔するものも多くいました。
例えば、ホワイトベースにゲリラ戦を仕掛けた時、ランバ・ラルはフラウ・ボゥを見逃すだけでなく、隠れるように言います。部下であるクランプもまた、キッカ・キタモトをかばうミライ・ヤシマに下がるよううながしていました。自身をゲリラ屋と言いながらも、女子供に対する人間らしい優しい気持ちを忘れない。しかも、それを部下にまで浸透させているランバ・ラルは、まさに軍人の鑑と言えるかもしれません。
このランバ・ラルと出会ったことでアムロ・レイは人間的に大きく成長します。実父であるテム・レイが父親の役目を果たさなかったことで、父性に触れていなかったアムロにとってランバ・ラルは父親と言える存在だったのかもしれません。「僕はあの人に勝ちたい」……とアムロは言いましたが、それは力ではなく人間的な意味だったのでしょう。
そんなランバ・ラルの最期は皮肉なことに「姫様」と守るべき存在だったセイラ・マス、アルテイシア・ソム・ダイクンと戦場で敵味方として出会ったことでした。それが直接の原因ではありませんが、このことで「戦いのなかで戦いを忘れる」という失策を犯し、結果的に自決という道を選ぶこととなってしまいます。
後に『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で幼い日のアルテイシアとの関係が描かれました。もしもランバ・ラルが忠誠を誓う人物がいるとすれば、それはアルテイシアに対してだったろうと筆者は思います。それゆえ、本来なら守るべき者と戦場で対峙してしまったランバ・ラルの胸中は、いかほどのものだったのでしょう。
■鬼神のような活躍を見せて散っていったノリス
『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』DVD Vol.4(バンダイビジュアル)
もう1機の印象的なグフ、それが『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場した「MS-07B-3 グフカスタム」です。
固定武装だったグフの内蔵火器を外付けに変更することで汎用性を持たせたMSで、材質も変更されてワイヤー状になった「ヒート・ロッド」、給弾がマガジン式になった「3連装35ミリガトリング砲」、着脱式のガトリング砲を装備して攻防に使えるようになった「ガトリング・シールド」、それに装備された「ヒート・サーベル」は発熱しなくても使えるタイプに改良されていました。
パイロットのノリス・パッカード大佐の技量と相まって、航空機との空中戦をこなし、さらに味方の脱出路を確保するため、陸戦型ガンダム2機とガンダムEz8と量産型ガンタンク3機を、単機で相手にするという不利な戦いを一方的優位に進めるという活躍を見せます。その八面六臂の動きを見た敵からは「エース」と言われて恐れられていました。
このノリスにも守るべき姫と言える存在がいます。それがジオン公国の名門サハリン家の令嬢であるアイナ・サハリンでした。しかし、アイナは敵である地球連邦軍の士官シロー・アマダと偶然の出会いから、お互いに心を惹かれる存在となってしまいます。
敵味方という本来ならありえないこの関係をノリスは責めるどころか理解を示しました。そのことを意外に思ったアイナに、ノリスは「自分とて木の股から生まれたわけでない」と冗談めいて返します。サハリン家に忠誠を誓う軍人でありながら、ノリスは人の心をもってアイナの気持ちに寄り添ったのでしょう。
そして、味方を安全に脱出させるというアイナの願いを叶えるため、前述の不利な戦場へと1機だけで身を投じたわけです。そこで皮肉にもアイナの思い人であるシローと交戦することになりました。一進一退の攻防、激しい読みあいのなか、死に場所を見つけたと漏らすノリスは、自分の命をかえりみず長距離射撃が可能なタンクを全滅させて脱出路の確保に成功します。
この最期を見ると、より目的達成を優先してか、それともアイナの思い人であるシローを生かすためか、ノリスはあえてEz8に反撃を行っていません。しかしながら爆発する機体のなかでノリスは「勝ったぞ」……そう叫びながら満足して散っていきます。
格闘用MSであるグフのパイロットのふたり、ランバ・ラルもノリスも武人であり、姫のように慕う女性のため戦い、その命を散らしました。あまりにも奇妙な共通点ですが、これもグフというMSが持った宿命なのでしょうか?
デザイン的にザクとの共通点が多いのに特別感のあるグフですが、このふたりの武人の乗機だったことが、さらなる人気の要因になったのだと筆者は思います。
(加々美利治)
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