アニメ『シャーマンキング』23話 「思い」がシャーマンの強さを決めるという残酷さ
マグミクス / 2021年9月16日 18時30分
![アニメ『シャーマンキング』23話 「思い」がシャーマンの強さを決めるという残酷さ](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_62456_0-small.jpg)
■「シャーマンは思いひとつ」を痛感させられた、葉の初戦
2021年9月16日(木)放送のTVアニメ『シャーマンキング』第23話は、先週の22話と連続で1回戦第3試合、「ふんばり温泉」チームと「アイスメン」の戦いでした。その前に行われた「X-I」の試合は血なまぐさい終わり方でしたが、この試合も残酷という意味では辛い戦いが描かれていたと思います。
アイスメンは、自分たちの育った環境や生い立ちの過酷さを乗り越えたことで生まれた高いプライドを持ち、負けることはこれまでの人生を全否定されるにも等しい、決死の思いを抱いていました。特にゾリャーは幼少期、恐らくロシア(当時はソ連)の施設でシャーマン能力を研究……という名の人体実験の犠牲になっていたようです。
こうしたチームは、苦戦はしつつも最後は試合に勝つ……というのが割と目にする展開だったりするのですが、今回はそうではありませんでした。葉たち「ふんばり温泉」チームには手も足も出ず完敗を喫します。しかも葉たちはアイスメンにひとつも苦戦しないのです。それどころか、試合前の食堂で言い放った「たぶん一発で勝つ」がそのままでした。
これは、「主人公は負けないもの」というご都合の結果ではなく、どんなに苦労しようが、重いものを背負っていようが、シャーマン能力が弱ければ負けるという、シャーマンファイトのシンプルさと厳しさが表面化しただけのことです。
作中では常々「シャーマンは思いひとつ」だと言われていますが、その思いが「こうでなければならない」という制約はありません。ユルく生きたいとか、女の子にモテたいとか、愛する妻と再会したい……など、命懸けで苦労をしてきた人から見れば大したことがないような思いであっても、それが強ければ負けないのです。
22話でエリザに会いたくて大会に参加したファウストVIII世の動機を「くだらねー理由」と言ったピノに、葉は「何が大事かは人の勝手だ。そいつが本気でやってりゃ上も下もねぇだろ」と返しますが、それはまさに射た言葉だったといえるでしょう。
これは「苦労が報われるわけではない」という言葉に集約されます。その現実を突きつけるという意味で、この試合は残酷だったと思いませんか? そしてそれは私たちにも言える話で、ある意味ではシャマシュの裁きで人が死ぬという、創作物でしかあり得ない展開よりも辛い話だったかもしれませんね。
■ファウストVIII世はいかにして「メフィスト・E」に到達したか?
妻・エリザに会いたいという思いを新たな力に結実させた、ファウストVIII世
ところで今回、「思いひとつ」を強烈に体現していたのがファウストVIII世でした。彼はエリザに会いたいという「純愛」を貫き続けており、その結果として狂気と猟奇の世界に足を踏み入れてしまった人物ですが、現時点での思いの集大成が「メフィスト・E」と言えるでしょう。
彼の先祖、ヨハン・ファウストが契約した大悪魔メフィストフェレスについては、本連載の第33回でも触れていますが、ここで補足をするなら、ファウストはメフィストフェレスの実在を確信していたわけではないようです。ただヨハンは強い思いによって、大悪魔と呼ぶにふさわしいもの凄い存在、もしくは強い力を手に入れたと考えています。
つまりファウストVIII世は、先祖の研究を引き継ぐことで単純にメフィストフェレスが手に入るわけでないことに気づき、「強い思いがあれば(エリザと会うために役立つ)凄い力が手に入る」という、シャーマンとしてのヨハンの生きざま、シャーマンの強さの原理を学んだのではないかと思います。
強い思いを抱くことは、もともと一途な彼にとっては簡単なことで、これにより独学とはいえ、彼は自分の能力をますます高めていけたのではないでしょうか。そしてアンナから「超・占事略決」を学んだことで、「メフィスト・E」という究極の愛の形に到達した……と筆者は考えます。今後、彼がさらにシャーマン能力を高めることでエリザへの愛の表現がどうなっていくのか、見守りたいと思います。
さて、もちろん竜も葉も、それぞれの思いの強さを形に表していたのですが、やはり葉のそれはレベルが違いましたね。また彼の「ユルい」性格が巫力の使い方にまで現れるというのは、あまり意識していませんでしたが、言われればその通りです。「柔よく剛を制す」という、柔道でよく使われる言葉がありますが、ああいったことが巫力の世界にもあるというわけですね。
しかし葉がユルいのは、別に巫力を上手く使うためではなく、元はその方が楽だからという単純な理由だったことを皆さんならご存じだと思います。しかしそういう生きざまが結果としてシャーマン能力の高さ、そして強さに直結しているという状態を見るに、葉はさすがハオの双子、運命に導かれた存在だと言えるのかもしれません。
一方、ハオは蓮を誘惑していましたが、そういう駆け引きが今後どうなっていくのかも注目ですね!
それでは今回はこの辺で。また次回よろしくお願いします!
(タシロハヤト)
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