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『鬼滅の刃』特別編第4夜「那田蜘蛛山編」 走馬灯は「死亡フラグ」ではない?

マグミクス / 2021年9月19日 6時10分

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■第1期の壮絶クライマックス

 毎週日曜の23時15分という放送枠が発表され、期待が高まる『鬼滅の刃』のテレビシリーズ第2期「遊郭編」。その放送スタートを間近に控え、2021年9月11日から『鬼滅の刃』の第1期「竈門炭治郎 立志編」の特別編集版が、フジテレビ系にて5夜にわたって放映されています。新規アイキャッチや、新しい「大正コソコソ噂話」も話題を集めています。

 第4夜となる「那田蜘蛛山編」は、第1期のクライマックスといえる人気エピソード集です。鬼舞辻無惨に仕える強者の鬼たち「十二鬼月」のひとり、累をはじめとする蜘蛛鬼ファミリーと、炭治郎ら「鬼殺隊」が壮絶な集団戦を繰り広げる、長い長い一夜が描かれます。

 今回のキーパーソンは、「鬼殺隊」の最強剣士のひとりである「蟲柱」胡蝶しのぶです。見た目はキュートな胡蝶しのぶですが、毒薬を扱うだけでなく、毒舌も吐く要注意人物です。キーワードは、そんな胡蝶しのぶが口にする「あぁ、それは走馬灯ですね」です。

■「サイコロステーキ先輩」を瞬殺する累

 炭治郎、伊之助、善逸の3人は、鬼が潜む夜の那田蜘蛛山へと向かいます。すでに他の隊士たちが鬼と戦っていましたが、並の隊士では鬼にはまるで刃が立ちません。逆に鬼が操るクモの糸によって、同士討ち状態となっています。統率のとれていない集団戦は犠牲者を増やすだけでした。

 炭治郎と伊之助は連携プレーを発揮しますが、ひときわ大きな父鬼が現れ、大苦戦を強いられます。炭治郎は蜘蛛鬼たちを束ねる累をようやく見つけ出しますが、子供の姿をしていても、累は「十二鬼月」のひとりだけあって、尋常ではない強さです。

 累にうかつに近づいた名もない隊士は、「とりあえず、俺はそこそこの鬼を1匹倒して下山するぜ」というセリフと同時に瞬殺されることになります。ファンから「サイコロステーキ先輩」と命名される彼ですが、きっと出世して、錦を飾りたい故郷が彼にもあったのではないでしょうか。サイコロステーキ先輩の外伝が発表されれば、ぜひ読んでみたいと思います。

 恐怖によって仲間の鬼たちを縛り付け、「家族」と呼んでいる累のことが、炭治郎は許せません。しかし、唯一の武器である日輪刀が折れてしまい、絶体絶命のピンチに陥ります。死を意識した瞬間、炭治郎の脳裏に幼い頃に父親がヒノカミ神楽を舞っていた記憶が蘇ります。自分の剣が通じない累に対し、炭治郎は竈門家に代々伝わるヒノカミ神楽をベースにした必殺技を繰り出すことになるのです。このとき、妹の禰豆子も亡くなった母の声によって覚醒します。

 挿入歌「竈門炭治郎のうた」が流れるこのシーンは「神回」と呼ばれるほどの盛り上がりを見せました。炭治郎と禰豆子は亡き父と母に励まされ、起死回生を遂げます。親子のつながりは、あの世とこの世に別れても決して消えることがないことを描いた感動的なエピソードとなっています。

■死亡フラグではない「走馬灯現象」

『鬼滅の刃』Blu-ray/DVD Vol.10 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

「あぁ、それは走馬灯ですね」

 水柱・冨岡義勇とともに那田蜘蛛山に駆けつけた蟲柱・胡蝶しのぶが、善逸に向かって語るセリフです。善逸も記憶のなかのじいちゃんに励まされ、なんとかサバイバルしたのでした。

 医学に詳しいしのぶは、「一説によると死の直前に人が走馬灯を見る理由は、今までの経験や記憶の中から、迫りくる死を回避する術を探しているんだそうですよ」と「走馬灯現象」を説明します。

 しのぶの解説が正しいかどうかは現代の医学でも判断しかねますが、これまで「死亡フラグ」として描かれることの多かった「パノラマ記憶」とも呼ばれる「走馬灯現象」のことを、ギリギリの状況下でも生き抜くために備わっている未知の身体機能として捉えているところが、『鬼滅の刃』の面白さではないでしょうか。

 本当の家族とは何か。呼吸を整えることの大切さ。追い詰められた人間が発揮する潜在能力のすごさ。とても身近なものだけど、現代人が忘れがちな大切なテーマの数々が、那田蜘蛛山の深い森には隠されています。

■善逸を支えたじいちゃんの助言

 それまで怖いもの知らずだった伊之助も重傷を負い、死の恐怖を初めて味わうことになります。暗い森のなかで正体不明の敵と集団戦を繰り広げる様子は、若き日のアーノルド・シュワルツェネッガーが主演したSF映画『プレデター』(1987年)を思わせるものがあります。胡蝶しのぶの仕込み靴は、『007/ロシアより愛をこめて』(1963年)のアレンジでしょうか。

 鬼に投げ飛ばされた炭治郎は「水の呼吸」を使って、うまく着地に成功します。このシーンは、先日亡くなられた千葉真一さん主演のアクション映画『激突!殺人拳』(1974年)を彷彿させます。千葉さん演じる主人公・剣琢磨は、独自の呼吸法をすることで高所から落とされた衝撃を緩和させます。原作者の吾峠呼世晴氏は、洋画邦画を問わず、かなりの映画に精通していることを感じさせます。

 最後に、善逸を支えたじいちゃんの言葉「ひとつのことを極め抜け」も触れたいと思います。自分に自信が持てず、そんな自分自身が嫌いな善逸でしたが、じいちゃんの「ひとつのことを極め抜け」「お前は必ず報われる」という教えに従い、「雷の呼吸」の壱ノ型「霹靂一閃」だけを徹底的に練習し、体に覚え込ませています。無意識のうちに体が動くほどになっています。

 武術に限らず、人間は何かひとつだけでも自信が持てるものがあれば、世界は異なって見えてくるのではないでしょうか。他の人から笑われても、ひとつのことを極めることで、道は開けていくようです。

 どんなに厳しい状況下でも、生きることを決して諦めなければ、希望は必ず見えてくる。明けない夜はありません。それは『鬼滅の刃』全体を通した、原作者から現代社会を生きる若者たちに向けた熱いメッセージではないでしょうか。

※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記

(長野辰次)

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