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“人を選ぶ”名作『女神異聞録ペルソナ』 25年経っても色褪せないジュブナイルRPGの原点

マグミクス / 2021年9月20日 9時10分

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■25周年を迎えた「ペルソナ」シリーズの原点

 突然で恐縮ですが、読者の皆さまは「ペルソナ」という概念をご存知でしょうか? カール・グスタフ・ユング(心理学/精神学者)が提唱した学説で、ユング自身は組織や集団内での個々人の役割についてフォーカスしていました。

 また、ペルソナとは古代ギリシアの演劇で用いられた仮面に由来するとも言われています。そのほか意味は少し異なるものの、企業等のマーケティング部門で理想の顧客像を割り出すため、ペルソナの考え方を引用する場合もあるようです。

 しかし、心理学や西洋史の専門家、はたまたマーケティングのプロフェッショナルでなくとも、ペルソナというフレーズ自体は「それなりに知られているのでは?」と筆者は考えています。その要因を正確に捉えるのは難しいものの、今回ご紹介するPlayStation用ソフト『女神異聞録ペルソナ』が、多くのゲームファンの間で”ペルソナの認知度向上”に一役買ったのは紛れもない事実でしょう。

 25年前の9月20日、『女神異聞録ペルソナ』はアトラスが誇る人気ゲーム「女神転生」シリーズの派生作品としてデビューを果たしました。それまでの女神転生(真・女神転生を含む)と言えば、人類の存亡をかけた終末的な世界、Law・Chaos・Neutralといった思想の違いなど描いていましたが、本作では全編にわたって「自己との対面」(詳細は後述)に焦点が当てられたのです。

 主人公(プレイヤー)は私立高校・聖エルミン学園に通うごく普通の少年。ある日のこと、校内で流行していた占い遊び「ペルソナ様」を主人公を含む数人のクラスメイトが実践し、内面に宿る神秘的な力(=ペルソナ)を発現させます。彼らは街全体を覆う異常現象に見舞われるなか、突如として身につけた能力を駆使して窮地を脱出。元凶と思われるハイテク企業「S・E・B・E・C」(セベク)の暗躍を食い止めるべく、”ペルソナ使い”として真相に迫っていきます。

 物語や舞台だけでなく、作品を支えるゲームシステムも変更が施された本作。代表的なものは、「女神転生」シリーズの仲魔に相当する”ペルソナシステム”です。従来作では敵対する悪魔と交渉し、仲魔としてパーティーに迎え入れていましたが、本作は悪魔から入手したスペルカードを利用する方式へ変更。規定のスペルカードを組み合わせてペルソナを作り出し、キャラクターに降魔させて能力を行使します。

 各キャラクターは3体(最大)までペルソナを降魔できるほか、使用ペルソナに応じてステータス面も変動。ゆえにプレイ中はスペルカード集めに奔走しつつ、ペルソナを降魔させるキャラクター選びやペルソナチェンジのタイミングなど、攻略をスムーズに進めるための判断力が常に問われました。

■若者の苦悩や葛藤を丁寧に描いたジュブナイルRPG

PlayStation4用ソフト『ペルソナ5』(アトラス)

 今でこそアトラスを代表する人気IPまで成長した「ペルソナ」シリーズですが、初代の『女神異聞録ペルソナ』に限って言えば、いたるところで遊びづらさを感じたのも事実です。

 印象的な部分を挙げるなら、マップ内のエンカウント率が高く、わずかな距離を歩いただけでひんぱんに戦闘へ巻き込まれる。さらに戦闘シーンも作り込みが丁寧な反面、お世辞にもテンポ感が良いとは言えません。あえて誤解を恐れずに述べるなら、本作は誰にでもオススメできるカジュアルなゲームタイトルと言うより、”人を選ぶ”と表現するべきかもしれません。

 それでもなお、『女神異聞録ペルソナ』が多くのユーザーに語り継がれるゆえんは、冒頭で述べた通り、シリーズ原点で深く練り込まれていた自己対面にあると筆者は考えます。

 現実世界に完全無欠な超人が存在し得ないように、本作の登場キャラクターもそれぞれ何かしらの欠点やトラウマを抱えています。病弱さにともなう孤独感に苛まれ、母親に反発してしまう「マキ」(園村麻希)。裕福な出自ながらも徹底した合理主義で他人を見下しがちな「なんじょうくん」(南城圭)。周囲を気にするあまり、本音を押し殺して振る舞っていた「エリー」(桐島英理子)……などなど、理由は何であれ、行動を共にするクラスメイトのほとんどが彼らなりの悩みを抱えているのです。

 そんな彼らは本作のストーリーにて、御影街を襲った異変を解決に導き、同時におのおのが自らの心と見つめ合い、葛藤しながら人間的に成長していきます。そして黒幕を倒した後のエンディングでは、成長した彼らの進路がテキスト形式で味わい深く映し出されます。

 悩みを解決する・トラウマを払拭するためには、必ずどこかで自分と向き合う必要がある。現実世界を生き抜く我々にとって、この原則を強く実感させられる機会は少なからずあるはずです。だからこそ、彼らの境遇に自然と興味を惹かれ、攻略中に挫けそうになっても物語の結末を見届けたくなる。最新作(ペルソナ5)にも流れる”ジュブナイルRPG”としての魅力は、本作の時点で色濃く現れていたように思います。

(龍田優貴)

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