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1stガンダムの異色作『ククルス・ドアンの島』映画化の理由 マンガ版の映像化は「勘違い」

マグミクス / 2021年9月24日 18時10分

1stガンダムの異色作『ククルス・ドアンの島』映画化の理由 マンガ版の映像化は「勘違い」

■ファンに衝撃を与えた映画化の第一報

 先日、今後の「ガンダム」シリーズに関する発表がサンライズからありました。TVアニメの最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』特別編(全9回)のTV放送、そして2022年劇場公開予定の映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』です。

 このなかで筆者、また多くのガンダムファンが驚いたのが劇場版『ククルス・ドアンの島』でした。その反響は大きく、他の発表がかすむほど。なぜなら『ククルス・ドアンの島』はいろいろな意味で印象深いエピソードだからです。

 シリーズ第1作『機動戦士ガンダム』の第15話が「ククルス・ドアンの島」でした。みなさんご存じの通り、『機動戦士ガンダム』はそれまで1話完結が当たり前だったロボットアニメと異なり、連続したストーリー展開で物語が進行しています。しかし、第13話「再会、母よ…」、第14話「時間よ、とまれ」と、この第15話だけは1話完結の形をとっていました。そのため、後のTV版を再編集した劇場版ではアムロと母の別れという重要な要素になる13話だけ使用され、14話と15話は完全にカットされています。

 そういった経緯から番外編的な扱いをされていた15話ですが、一部にはカルト的な人気のあるエピソードでもありました。ククルス・ドアンというキャラクターの魅力。メインとなる戦場でないがゆえにわかる戦争の起こす悲惨さ。……そういった比較的好意的な意見のほかに、「メカの作画崩壊」というネタ的な取り上げ方までさまざまです。

 こういう硬軟両面で注目されている15話ですから、この令和の時代になってからの映画化は作品を知るファンにとってはまさに「青天の霹靂」でした。筆者もあまりの驚きに頭がグルグルして、他の情報が頭に入らなかったほどです。

 しかも監督は『機動戦士ガンダム』でキャラクターデザインを担当していた安彦良和さん。期待値は無限大です。ちなみに安彦さんといえば、多くの人がマンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を思い出すことでしょう。アニメにもなった『ORIGIN』版にならった『ククルス・ドアンの島』になるのではないか? と想像したことと思います。

 少し解説すると、実はマンガ『ORIGIN』では『ククルス・ドアンの島』は描かれていません。このことに関して安彦さん自身は「捨て回に過ぎないが、いい話だと思う」というコメントを残しています。

■『ククルス・ドアンの島』がリメイクされる事情とは?

マンガ:安彦良和『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』第1巻(KADOKAWA)

 それでは、「ククルス・ドアンの島」のマンガはなかったのか? というとそうではありません。実は『ORIGIN』の時間線に沿ったマンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島』という作品を、おおのじゅんじ先生が月刊誌「ガンダムエース」2016年8月号から2019年7月号まで連載しています。この時のマンガ用キャラクターデザインはアニメ『ORIGIN』でもキャラクターデザインと作画監督を担当したことぶきつかささんでした。

 マンガの内容はテレビ版15話とは直接的な関係はなく、ククルス・ドアンの過去、かつて所属していた隊のメンバーのエピソードが中心になっています。今回の報道では、多くの人がこのマンガのアニメ化だと早合点していました。筆者もそのひとりです。しかし、これについては関係者がTwitterなどで訂正していましたが、あくまでも劇場版はテレビ版15話のリメイク作品になるとのこと。

 そこで、この15話の背景について改めて考えてみると、いくつかの仮説が導き出されました。それは『機動戦士ガンダム』における15話の扱いです。実は15話は北米向けテレビシリーズビデオソフトでは未収録。これは富野由悠季監督からの指示だったそうです。詳細は不明ですが、海外の一部では15話は通常見られません。

 そこを邪推すると15話のリメイク映画は、新たにストーリーを作って『ガンダム』の歴史をゆがめることなく新作を製作、さらに海外向けとして幻の新作としてセールスを期待できる一石二鳥の劇場版になるということです。そう考えてみると、脱走兵であるククルス・ドアンが戦災孤児を守って戦うというストーリーは、海外で人気のあるドラマパターンと言えるかもしれません。つまり今回の劇場版は海外でのセールスも期待してのことだといえるでしょう。

 もちろん、これはあくまでも筆者の想像なので的外れかもしれません。あらかじめご容赦ください。

 今後、正式な発表がいくつも段階的にあるでしょうが、筆者としては気になるのは声優陣です。誕生から42年経ち、『ORIGIN』でも何人かの声優が交代になりました。それゆえに『ORIGIN』で続投された声優陣は安泰だと思っています。何しろアムロ・レイは古谷徹さん以外に考えられません。他は、ホワイトベースのクルーはともかく、シャア・アズナブルの出番は原典を考えればないでしょう。

 しかし、ククルス・ドアン役だった徳丸完さんは2011年に既に鬼籍に入られております。後任は誰になるのでしょうか? 今回の劇場版の主役と言うべきドアン役が誰になるのか? ……それを想像しながら次の発表を待ちたいと思います。

(加々美利治)

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