アニメ史に残る「主人公機」の交代劇?『Gガンダム』ゴッドガンダムの登場回
マグミクス / 2021年9月30日 6時10分
■「決勝大会用の新しいガンダムだ!」
27年前の1994年9月30日、『機動武闘伝Gガンダム』24話「新たなる輝き! ゴッドガンダム誕生!」が放送されました。数あるロボットアニメのなかでも、屈指の出来栄えとなる「主人公機」の交代劇が描かれたエピソードです。
主人公ドモン・カッシュの愛機シャイニングガンダムは、チボデー・クロケット、サイ・サイシー、ジョルジュ・ド・サンド、アルゴ・ガルスキーをはじめとするライバルや、師匠にして最大の敵である東方不敗マスターアジア、最強最悪のデビルガンダムなど、多くの強敵との戦いをくぐり抜け、必殺のシャイニングフィンガーで勝利をつかみ取ってきました。
そして23話「宿命の闘い! ドモン対デビルガンダム」で、明鏡止水の境地に至ったドモン・カッシュはギアナ高地で執念の鬼と化した東方不敗操るマスターガンダムを撃破、デビルガンダムにとどめを刺します。デビルガンダムの生体ユニットとして取り込まれた兄キョウジ・カッシュは爆発の閃光とともに消滅し、当面の危機は去ったと思われました。
一方そのころ、第13回ガンダムファイト本戦の開催が間近に迫っていました。本戦会場であるネオホンコンには、予選を生き抜いた各国のガンダムファイターたちが集結し始めていました。ネオオランダ代表ネーデルガンダム、ネオノルウェー代表バイキングガンダム、ネオスペイン代表マタドールガンダム、ネオギリシア代表ゼウスガンダムらが観客に出迎えられながら続々と姿を現すなか、チボデー、サイ・サイシー、ジョルジュ、アルゴも無事にネオホンコン入りし、ドモンを待っていたのです。
大会の開催まであと3時間。タイムリミットが迫るなか、ギアナ高地のドモンの前に、空からネオ・ジャパンのカプセルが姿を現します。そのときドモンは、中からちらりと見えた機体を「決勝大会用の新しいガンダムだ」と瞬時に察しました。
崖崩れに巻き込まれかけている新たなガンダムのもとに向かおうとしたドモンでしたが、不意に姿を現した東方不敗が執念で立ちふさがります。傷ついた2機のガンダムによる『Gガンダム』前半の最後を飾る戦いが、ここに幕を開けたのです。
■執念の東方不敗と激闘を展開
登場したゴッドガンダムの前で、シャイニングガンダムは最後の死闘を繰り広げた。画像はシャイニングガンダムがジャケットに描かれた「機動武闘伝 Gガンダム DVD BOX 1」(バンダイビジュアル)
ドモンと東方不敗は最後の力を振り絞り、すでに意味のない戦いを繰り広げます。コクピット前の装甲を破壊され、生身をむき出しにしたままの状態で、東方不敗はデビルガンダムを失った怒りをぶつけるのです。ドモンを狙って放たれた拳は地面をたたき、マスターガンダムの手からは血のようなオイルが漏れ、マスターアジアの口からは本物の血があふれ出します。
ガンダムも肉体も限界に達したそのとき、マスターアジアが漏らした本音は、愛弟子と戦わねばならなかった苦しみでした。
「馬鹿者! 馬鹿者! 馬鹿者! 馬鹿者!」
そう叫びながら拳を振るう東方不敗の姿は哀しげでしかありません。ドモンを一方的に殴り続けながら慟哭する東方不敗。しかしドモンはその叫びを一蹴します。
「俺はいつまでもあんたの弟子でもなければおもちゃでもない!」
そしてシャイニングフィンガーとダークネスフィンガーが交錯し、両者ノックダウン。しかしここでシャイニングガンダムのエネルギーが尽きてしまいます。なお立ち上がろうとするマスターガンダムを見たドモンは、イチかバチか、新たなガンダムへ乗り移ろうと決意します。
シャイニングガンダムを降りたドモンを見た東方不敗は必殺の抜き手を繰り出しますが、次の瞬間シャイニングガンダムは立ち上がり、攻撃をその身で受け止めるのです。
東方不敗は、ドモンがプログラムしたと判断していましたが、シャイニングガンダムが立ちはだかる姿はまるで自らの意志でドモンをかばうかのようでした。
マスターアジアの猛攻が続くなか、かろうじてゴッドガンダムに乗り込んだドモンでしたが、新たなガンダムは起動せず、絶対絶命の危機に陥ります。しかし危機を察知したレインたちによりシャイニングガンダムが再起動し、地面を這いずってゴッドガンダムに近づき、手を握りしめてデータを移植し、起動に成功したのです。この一連のシーンは、ロボットアニメに数多く存在する「主人公機」の交代劇としても屈指の出来栄えといえるでしょう。
マスターガンダムを撃退し、Gガンダムを体現する移動方法で仲間たちが待つネオホンコンへとギリギリで到着したドモン。しかしそれは、真の戦いの幕開けでしかなかったのです。
東方不敗との一旦の結着、ゴッドガンダムの登場、シャイニングガンダムとの別れ、仲間たちとの絆、そしてレインとの関係が描かれた24話は、『Gガンダム』の前半を締めくくるにふさわしい、大きな存在感を発揮した回といえるでしょう。
(ライター 早川清一朗)
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