売上が残念すぎたゲーム機3選 任天堂やAppleも「黒歴史」を残す
マグミクス / 2021年10月1日 6時10分
■“ゲーム機戦争”の圧倒的敗者たち
近年では、「Nintendo Switch」や「PlayStation5」が長期にわたって品薄となるなど、任天堂・SONYが出したゲーム機はとりあえず売れる、というのが当たり前になってきました。現在も大規模にゲーム機を販売している会社と言えば、あとは「Xbox」シリーズを作っているMicrosoftくらいのものです。
しかし、かつてはハドソンの「PCエンジン」やセガの「ドリームキャスト」など、もっと多くのメーカーがゲーム機開発に乗り出しており、その特色もさまざまでした。しかし、数が多いだけに、なかには尖りすぎて商業的に失敗したゲーム機も多数存在しています。この記事では、なかでも特徴的な「売れなかったゲーム機」を3つピックアップしてご紹介します。
●「バーチャルボーイ」
任天堂が1995年に発売した据置型ゲーム機「バーチャルボーイ」。こちらは26年前の販売にもかかわらず、VR技術を用いたゲーム機でした。当時としては、驚くほど画期的だったことでしょう。
本体は設置型のゴーグルのような形で、そこを覗き込みながらコントローラーでゲームをプレイします。色は赤と黒のみでしたが、左右の目で違う映像を流すことで、立体的にゲームをすることが可能です。
発売当時は「PlayStation」「セガサターン」などのハイスペックを目指したゲーム機が勢いを強めていた時代。そこへバーチャルボーイを投入したのは、アイデアで勝負する任天堂らしいといえるかもしれません。
しかし、時代を先取りしすぎたのか、全世界累計の売り上げ台数はおよそ77万台と言われています。初代「PlayStation」の累計販売台数が1億台以上ということを考えると、これはかなり寂しい結果。バーチャルボーイ用の国内向けソフトもわずか19作しか発売されておらず、すべて1995年のうちに出たもののみでした。
そうはいっても、当時任天堂の社長を務めていた山内溥氏は、「TVゲームとは異なる娯楽を求める傾向に応えるもの」とバーチャルボーイを説明しています。黒歴史のように扱われることもあるバーチャルボーイですが、新しい体験を提供しようとする偉大な精神は、ユーザーからすれば感謝しかありません。
●「ネオジオポケット」
続いては、SNKが1998年に発売した携帯ゲーム機「ネオジオポケット」。SNKは『餓狼伝説』『サムライスピリッツ』などの格闘ゲームでヒットを飛ばしていたメーカーです。「ネオジオ」シリーズは、そんな自社製のアーケードゲームを家庭でもプレイできる、夢のようなゲーム機として展開されていました。
「ネオジオポケット」も、携帯ゲームながら次世代機としてハイスペックを実現。当時の「ゲームボーイ」が8ビットCPUだったのに対し、16ビットCPUを搭載していました。
しかしながら、「ネオジオポケット」はモノクロなのに対し、その1週間前に「ゲームボーイカラー」が発売。対抗して、発売と同時期に「ネオジオポケットカラー」を発売すると告知しますが……これが、ますますモノクロの「ネオジオポケット」には手を出しにくい状況を作り出していました。
そうこうして、わずか5か月後に「ネオジオポケットカラー」が発売。そのキャッチフレーズは「I’m not BOY. 誰だってBOYを捨てるときがくる」という挑発的なものでした。しかし売り上げ台数はシリーズ合計で200万台ほどと言われており、結果は惨敗。
そもそも冷静に考えると、「ネオジオ」は人気の格闘ゲームを遊べることからファンがついたシリーズ。ところが「ネオジオポケット」は携帯ゲーム機のため、格闘ゲームにあまり向いていなかったのです。ジョイスティックを搭載するなどこだわりは見せていましたが、それでも限界はありました。
ちなみに販売元のSNKは、2001年に倒産してしまっています。「ネオジオポケット」での失敗が、多少なりとも響いていたことでしょう。
■バンダイとAppleのタッグが産んだ「世界一売れなかったゲーム機」
●「ピピンアットマーク」
最後は、1996年に発売され“世界で最も売れなかったゲーム機”として知られる「ピピンアットマーク」。
このゲーム機は、バンダイ・デジタル・エンタテイメントと、あのAppleがタッグを組んで開発されました。CD-ROMのゲームがプレイ可能なだけでなく、なんとインターネットにも接続が可能。テレビにつないでパソコンのように使用することができる、当時としては未来を感じさせるマシンだったのです。
しかし、その価格は6万4800円と高額。しかも当初は家電量販店で売られておらず、電話注文を中心としていたため、手を出す人が現れません。
そして肝心の機能ですが、パソコンのようにして使おうとしても、当時のテレビはブラウン管が主流。漢字が読めないほど解像度は低く、インターネットを普通に利用できる人はかなり限られていました。
当初予定していた販売台数は50万台でしたが、フタを開けてみればわずか4万2000台。およそ270億円もの損失を出す黒歴史となってしまいました。
しかし、「リビングで日常的に使えるネットが使えて、ゲームもできるマシン」というのは現代におけるスマートフォンであり、そのアイデアが優れていたのは間違いありません。時代を先取りしすぎたために起きてしまった悲劇だと言えるでしょう。
(古永家啓輔)
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