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TVアニメ『真の仲間』原作者ざっぽん先生に聞く、一大ジャンル「追放系」誕生の瞬間

マグミクス / 2021年10月5日 19時10分

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■優しさが「追放系」という新ジャンルを生み出した

 TVアニメ『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』(通称『真の仲間』)が、2021年10月6日(水)から放送開始します。原作は、小説投稿サイトの最大手「小説家になろう」から誕生した作品で、Webノベル界を席巻する「追放系」というジャンルの原点にして頂点といわれています。

 アニメ化の発表前に、小説とマンガ版の合計売上が100万部を超えるなど、ライトノベルファンを中心に高い人気を集めています。原作『真の仲間』を生み出した小説家・ざっぽん先生に、作品の魅力やアニメ化への期待について聞きました。

* * *

──『真の仲間』がどのような物語なのか、先生からご紹介をお願いできますか?

ざっぽん先生(以下、ざっぽん) 『真の仲間』の舞台は、中世ヨーロッパをイメージしたファンタジー世界です。主人公のレッドは、RPG(ロールプレイングゲーム)ファンにはおなじみだと思いますが、勇者の旅立ちと成長をサポートする役割を担う、序盤だけ強いお助けキャラです。

 そのレッドが、勇者が成長すると用済みとされ、魔王を倒すためのパーティーから追い出されてしまいます。失意のうちに辺境の地にたどり着き、薬屋を始めた彼のもとに、かつての戦友でもあるお姫様のリットが押しかけてきます。そうして同居生活を送ることになったふたりが、平和なスローライフを始めるという物語です。

──RPGのお助けキャラを主人公にするという着眼点に惹かれました。発想のきっかけとなるものはあったのでしょうか?

ざっぽん 不遇な主人公がさまざまな過程を経て報われていく物語を、当初から想定していました。だったら主人公はどんなキャラクターにすべきだろうと考え続けていた時、あるRPGのRTA実況動画(※リアルタイムアタック=いかに短時間でクリアするか実況しながらゲームを紹介する動画)を目にしたんです。その実況者さんが、お助けキャラに対して、それはもう辛辣で(笑)。だったら、真の仲間ではないと嘲(あざけ)られながら勇者パーティーから追い出されてしまうキャラクターを、自分の物語で主人公にしてあげようと思ったのです。

──不遇なキャラクターが報われて欲しいという先生の優しさが、Webノベル界で一大ジャンルになっている「追放系」の始まりだったのですね。

ざっぽん 『無職転生』や『盾の勇者』のような作品も、物語の始まりで主人公が不遇な立場にいることは共通しています。ですので、『真の仲間』が新しいジャンルを作ったというのは、大変ありがたいですが過分な評価だとは思っています。ただ、読者の皆さまに楽しんでいただける物語の構造のようなものは、幸運にも共通していたのかもしれませんね。

■「好き」という気持ちこそ創作意欲の源泉

不遇の人生から第2の人生へと踏み出していく、主人公のレッド

──「小説家になろう」に投稿を始めた当初から、読者からの反響はあったのでしょうか?

ざっぽん 当初はPV数は悪くないかな……と思う程度で、リアクションはそれほどありませんでした。それが一気に増えたのは、サイト内のランキングに入ってからですね。

──ひとつの作品を書き続けていくというのは、本当に大変なことだと思います。反響が少ないうちから今に至るまで書き続けてきた創作意欲は、どこから湧いてくるものなのでしょうか?

ざっぽん 「小説を書くのが好きだ」という、そのことに尽きると思います。リアクションが全くなければどこかでモチベーションが切れてしまうかもしれませんが、楽しいという気持ちがある限りは続けられます。子供の頃から書くことは好きでしたし、思春期には、いわゆる中二病ノートのような物も作っていました(笑)。大人になって思い返すと気恥ずかしくはありますが、他人に迷惑をかけない限り、中二病は決して悪いものではないと思うんです。思春期の創作意欲って、本当に純粋なものですから。

──『真の仲間』は、メインターゲットの男性だけでなく女性にもおすすめしたい、胸ときめくラブロマンスです。恋愛ものを書きたいという気持ちは、当初からあったのでしょうか?

ざっぽん それはありましたね。一読者としても、恋愛物は好きなんです。自分もこんなふうに愛情を培ってみたいという、憧れの気持ちもあります。残念ながらレッドとリットのような恋愛は出来そうにありませんが、ファンタジー作家は存在しないものでも存在するように表現するものですから、経験したことのないことを経験したように一生懸命書いているわけです(笑)。

──先生は俳優のような雰囲気のイケメンですから、本当はレッドとリットのような素敵な恋も経験されていそうです。

ざっぽん いえいえ、そんな(笑)。お褒めに預かり光栄です。

──ヒロインのリットは、主人公のレッドを心から愛してはいても決して依存することなく、自分自身の意思をはっきり口にしながら行動に移していく女性です。この辺りにも、先生の好みが反映されているのでしょうか?

ざっぽん それはその通りです。手を取り合って人生を築いていくパートナーにはそうあって欲しいというのは、男性としての理想ですね。

■『ドラゴンクエスト』の影響と作品のテーマ

TVアニメ『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』キービジュアル

──『真の仲間』でとても印象に残るのは、ライトノベルに特有とも言える中世ヨーロッパ風のファンタジー世界が単なる舞台装置にとどまらず、登場人物それぞれの運命にまで密接にからみ合っている点です。こういった設定の作り込みに関して、影響を受けた作品などはあるのでしょうか?

ざっぽん もちろん、読んできた本や見てきた映像作品の影響はあると思います。とりわけ大きいのは、「ドラクエ」シリーズでしょうか。「ドラクエ」のような世界が本当に存在するのだとしたら、その歴史的な成り立ちはどうなっているのか。そこに暮らしている人びとは何を思い、どんな人生を歩んでいるのか。折に触れて考えていたことが、『真の仲間』の創作につながっている気はします。

──『ドラクエ』の物語では、世界を救う「勇者」という存在の意味や位置づけ自体が、テーマとして取り上げられることが多くあります。

ざっぽん その点はまさしく、『真の仲間』でもテーマとして掘り下げてみたかったことです。勇者という存在を、魔王以上に力を持って異世界で思うままに振る舞う悪として描く作品も、ライトノベルには多くあります。それはそれで優れたエンターテイメントではありますが、私にとって勇者というのは、今ここにいる自分自身を仮託した分身です。だったら、自分自身の運命や世界について、勇者はどんな意図を持ち、どのように葛藤し、どう行動するものなのか。それを考えた結果が、アニメでも形になっていると思います。

──『真の仲間』では、「スローライフ」の部分にも、単なるイチャイチャ恋愛生活を描くのではない、それぞれの登場人物にとっての深い意味があります。

ざっぽん 理想の生活を描写するだけにとどまらない、作品全体のテーマにつながる想いを意識しました。幸せな暮らしを送ること以上に、自分自身の意思によってそれを求める気持ちや行動こそが、より大切なのではないでしょうか。そういった登場人物の想いを、今という大変な時代を生きている読者の皆さんに、少しでも感じ取ってもらえると嬉しいですね。

(C)ざっぽん・やすも/KADOKAWA/真の仲間製作委員会

※TVアニメ『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』は、2021年10月6日(水)より、AT-X(22:30~)、TOKYO MX(23:30~)ほか、BS日テレ、KBS京都、サンテレビで放送予定。dアニメストアでも独占配信されます。

(取材/構成:香椎 葉平)

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