40周年迎えた粋なアニメ『銀河旋風ブライガー』 「イェーイ!」で済ませる軽快な物語
マグミクス / 2021年10月6日 11時50分
■ロボットアニメらしからぬ作風を目指した意欲作
本日2021年10月6日(水)は、40年前の1981年にTVアニメ『銀河旋風ブライガー』が放送開始した日。つまり今日は40周年のメモリアルデーになります。
この頃のTVアニメ作品はロボットアニメと、マンガがヒットした原作付きアニメ作品がほとんどを占めていました。逆を言えば、アニメでオリジナル作品を制作する場合、ロボットアニメにすると企画として通りやすかったと言われています。これにはTVアニメのメインスポンサーのほとんどが玩具会社だったからという事情もありました。
そんな事情からロボットアニメというジャンルでありながら、その内容はロボットをカッコよく見せる戦闘シーンよりも、キャラクターの魅力でドラマを盛り上げる作品が少しずつ増えていきます。本作も海外ドラマのようなシャレた会話に、当時の人気時代劇シリーズだった『必殺』のドラマをミックスした作風が、本来のターゲットであるオモチャを買う男子児童よりも、中高生以上の若者に受ける要因になりました。
そうはいってもオモチャの売れ行きは好調で、スポンサーの「タカトクトイス」のこの年の売り上げは前年を超えるほどで、もっとも売れた商品がブライガーだったそうです。このことが後に本作がシリーズ化した一因になったことは言うまでもありません。
また、よく話題になるオープニングは時代を代表する映像と言っても過言ではないもので、歌詞はもちろん、冒頭のナレーションをおぼえた人も多くいました。筆者もそのひとりです。作詞・作曲は『タイムボカン』などで知られた山本正之さん。山本さんは他にも本作のBGMや挿入歌の数々も提供しています。その魅力的な音楽はファンの心をとらえ、80年代のアニメと音楽が密接にかかわりあうようになったきっかけのひとつとなりました。
そして、オープニングで忘れてはいけないのが金田伊功さんによる作画です。緩急をつけながら舞うようなアクロバティックな動き、「金田パース」と呼ばれた独特のスタイルを本作で知った人も多くいました。その個性的なポージングと、大胆に誇張された遠近感など、日本のアニメーションに大きな影響を与えます。
こういった部分が背景としてありますが、やはりファンが注目したのは魅力的なキャラクターたちにありました。
■長セリフをカットした「イェーイ!」の粋な使い方
『銀河旋風ブライガー』のメインキャラのデザインは『ルパン三世』を参考にしたといわれる。画像は「銀河旋風ブライガ― Blu-ray Vol.2」(TCエンタテインメント)
本作の主人公は便宜上、「ブラスター・キッド」こと木戸丈太郎になっていますが、前述したように海外ドラマや時代劇の良さを取り入れたことで、メインキャラ4人全員が主役の群像劇となっています。
銃の名手であるキッド、敏腕レーサーの「飛ばし屋ボウィー」ことスティーブン・ボウィー、情報収集能力にたけた「エンジェルお町」ことマチコ・ヴァレンシア、チームリーダーである「かみそりアイザック」ことアイザック・ゴドノフの4人が、宇宙の始末屋「コズモレンジャーJ9」として報酬と引き換えに、さばけぬ悪を闇に葬り去る……というのが本作のストーリーでした。
実はこの4人のモチーフは、当時、放送が終了していた『ルパン三世』から発想を得たとキャラクターデザインをした小松原一男さんが語っています。キッドはルパン三世、ボゥイーは次元大介、アイザックは石川五ェ門、お町は峰不二子。しかし、あくまでもデザインの部分だけで、実際の本編を見ればわかりますが、まったく違ったキャラとして成立しています。
この4人のシャレたセリフ回しが本作の魅力で、特に了解の意味で親指を立てる「イェーイ!」は、当時のファンなら誰もがマネをしたしぐさでした。四辻たかお監督が後年、語っていましたが、長いセリフはできるだけカットして音楽と「イェーイ!」だけでテンポを重視した作りにしたそうです。それが本作独特の魅力となったのでしょう。
本作は女性ファンが多かったことでもよく知られています。2,3話のアフレコの時に女子高生が3人ほど訪ねてきたのでスタジオ見学させたら、翌週は30人、その翌週には60人くらいになって困ったという逸話がありました。
『機動戦士ガンダム』のヒット以来、こういったアニメ作品の人気が高まったことで、アニメ雑誌戦国時代と言われた当時の出版業界、前述したレコード業界など、各方面でアニメ特需ともいえる成長時代を迎えることになります。今では当たり前のようにある同人誌が広く知れ渡るようになったのもこの時期で、本作を扱った同人誌がそのなかでも中心的な位置にあったことは間違いありません。
こうして大人気のまま最終回を迎えた本作は『J9シリーズ』の第一弾となり、続編となる第二弾『銀河烈風バクシンガー』へと続くことになりました。その頃の熱気をいまだに持ち続けている人は少なくなく、今でも『J9シリーズ』について熱く語る女性ファンが筆者の身近にもいたりします。
ちなみに、本作の時代設定は西暦2111年。あと90年で追いつきますね(笑)。
(加々美利治)
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