生誕20周年『逆転裁判』 成歩堂「異議あり!」他作品へのゲスト出演でも光るキャラ
マグミクス / 2021年10月12日 6時10分
■法廷バトルをテーマに据えた異色のアドベンチャーゲーム
筆者は生まれてこの方、司法とはほぼ無縁の生活を送ってきましたが、弁護士や検事が裁判中に発する「異議あり!」というフレーズだけは異様に耳なじみがあります。
そのキッカケとなった作品は、2021年で生誕20周年を迎えた『逆転裁判』。アドベンチャーゲーム界隈に”法廷バトル”という新たなジャンルを生み出したカプコンの人気シリーズです。本作はゲームボーイアドバンス用ソフトとして、2001年10月12日に市場へ送り出されました。
物語の舞台は現代の日本。プレイヤーは24歳の正義感にあふれた新米弁護士「成歩堂龍一」(なるほどう・りゅういち)となり、無実の罪を着せられた依頼人を弁護するべく、助手の「綾里真宵」(あやさと・まよい)と一緒にさまざまな事件(主に殺人事件)の調査へ乗り出します。
冒頭で述べたジャンル名の通り、各章は事件現場を調べ上げて証拠品や事実関係を整理する「調査パート」と、そろえた証拠品をもとに被告人にかけられた嫌疑を取り払う「法廷パート」の2種類で構成されています。特に法廷パートは本作を代表する象徴的な内容。プレイヤーは「ゆさぶる」・「つきつける」といったコマンドを駆使して審理を有利に進める必要がありました。
証言台に立った証人をゆさぶり、新たな証言を引き出す。引き出した証言と証拠品を精査して隠された矛盾を見抜く……。法廷パートでは基本的に弁護側(プレイヤー)が最初から不利な状況下にあるため、上述のゆさぶる・つきつけるは反撃の機会を生み出す上で必要不可欠なのです。
取り留めもないような証拠品が契機となり、証言内容の虚偽をあぶり出すことで、初めてプレイヤー側に”逆転の機会”が訪れます。「そこだ!」、「待った!」、そして「異議あり」といった成歩堂の力強い掛け声もまた、ギリギリの瀬戸際で戦う法廷バトルの臨場感により拍車をかけました。
「逆転裁判」シリーズはその後、ゲームボーイアドバンスやニンテンドーDSなどの携帯型ゲーム機を中心にソフトを展開。成歩堂の学友でありライバルの敏腕検事「御剣怜侍」を主人公とした『逆転検事』に加え、19世紀末の日本およびイギリスが舞台の『大逆転裁判』などのスピンオフタイトルも生まれました。いずれの作品も人間ドラマと法廷バトルにおける逆転劇にフォーカスしており、国内外のシリーズソフト累計売上は820万本(2021年6月時点)に上ります。
■ゲスト出演でなお魅力を放つ成歩堂龍一
ニンテンドー3DS用ソフト『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』(バンダイナムコエンターテインメント)
「逆転裁判」シリーズの主人公である成歩堂は、ほかの作品へゲスト出演する機会に恵まれていたのも印象的です。例えば複数のメーカーが夢のコラボレーションを果たした『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』(2015年)では、「ロックマン」や「ストリートファイター」といったカプコン製キャラクターと並んで成歩堂もしっかりと参戦しています。
エックス(ロックマンX)に「弁護士バッジからビームは出ないのか?」と尋ねられて「そんな人はいない」と困惑しながら笑みを浮かべる。デミトリ(ヴァンパイア)に「吸血鬼は日光に弱いはず」と異議を申し立てるも、逆にデミトリやモリガンから「もう一度よく考えなさい」と諭される……などなど、『逆転裁判』のナンバリングタイトルではなかなかお目にかかれない、ユニークな成歩堂の姿が描かれていました。
特に筆者のお気に入りは、MARVEL社とカプコンがタッグを組んだ対戦格闘ゲーム『ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3』(2011年)に参戦を果たした成歩堂です。「スパイダーマン」や「キャプテン・アメリカ」などのMARVELコミックヒーローをはじめ、カプコンキャラクターも格ゲーおよびアクションゲーム出身者が多いのに対し、成歩堂は「あくまでも事件の調査」というスタンスのもと、他のファイターたちと激闘を繰り広げます。
屈強な戦士たちの前でも成歩堂は弁護士の責務を忘れておらず、戦闘中は「床に落ちた資料を拾い上げる」・「証言内容をメモする」・「ファイルの束をぶちまける」など、「逆転裁判」シリーズでおなじみのアクションを駆使(?)しつつ、対戦相手へ”無意識に”攻撃を仕掛けていきます。さらに試合中に”証拠品”をそろえることで、本編の法廷パートと同様に逆転モードへ移行。揺るがぬ証拠と卓越した弁舌により、対戦相手を有罪に追い込んで大ダメージを与えることもできました。
優秀なファイターたち(バージルやマグニートーなど)と比べればお世辞にも強キャラとは言えなかった成歩堂。しかし、法廷バトルを文字通り格ゲーで体現するその姿は、MARVELやカプコン製のキャラクターたちに負けず劣らずのインパクトを放っていました。
(龍田優貴)
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