金ロー『ルパン三世』アニメ化50周年企画 男の子を目覚めさせた「峰不二子」の遍歴
マグミクス / 2021年10月15日 11時50分
■峰不二子の遍歴が分かる4本のTVシリーズ
モンキー・パンチ氏の人気コミック『ルパン三世』のアニメ化50周年を記念して、2021年10月15日(金)の「金曜ロードショー」では「みんなが選んだルパン三世・TVシリーズセレクション」が放送されます。これまでに放映されたTVシリーズ全276話のなかから、視聴者からの人気投票で選ばれた4本のエピソードがセレクトされています。
選ばれた4本の人気エピソードを放送年順に紹介すると、以下のとおりです。1971年に放送された第1シリーズの第1話「ルパンは燃えているか・・・・?!」。1977年~1980年に放送された第2シリーズからは、第145話「死の翼アルバトロス」と最終話「さらば愛しきルパンよ」。そして、2018年に放送された第5シリーズの最終話「ルパン三世は永遠に」です。
怪盗アルセーヌ・ルパンの孫・ルパン三世とその仲間たちの常識破りな暴れっぷりは、いつ観ても痛快です。頼りになる相棒・次元大介や石川五ェ門、ルパンを追い続ける銭形警部はもちろん魅力的ですが、最も目が離せないのはルパンファミリーの紅一点・峰不二子でしょう。セクシーさに加え、いつルパンを裏切るか分からないハラハラ感があります。
第1シリーズは二階堂有希子さん、第2シリーズからは増山江威子さん、2011年からは沢城みゆきさん、と3人の人気声優が峰不二子を演じてきました。今回の「TVシリーズセレクション」は、シリーズによって、また演出家によって異なる顔を見せる峰不二子のキャラクター遍歴を楽しむことができます。
■男の子を目覚めさせた不二子の初登場
大人向けのTVアニメーションとして始まった第1シリーズの、記念すべき第1話が「ルパンは燃えているか・・・・?!」です。ルパン三世(CV:山田康雄)はF1レースに出場しますが、レースは犯罪組織を率いるスコーピオンの仕組んだ罠でした。峰不二子(CV:二階堂有希子)はルパンに協力し、スコーピオンのアジトであるホテルに潜入します。大人びた雰囲気の峰不二子は、それまでのTVアニメにはいない異色の女性キャラクターでした。
男性視聴者の目が釘付けになったのは、次のシーンです。潜入中の峰不二子はスコーピオンに見つかり、台の上に張り付けにされます。ナイスバディな峰不二子は、スコーピオンによって全身をこちょこちょくすぐられるという拷問を受けるのでした。「や、やめて~」と不二子が悶え喜ぶ姿に、当時の男の子たちは内心ゾワゾワしました。
峰不二子によって、性に目覚めた男性は少なくないのではないでしょうか。物語後半には、峰不二子はルパンの助けを待つだけのか弱い女性キャラクターではないことも描かれています。ルパンが「裏切りは女のアクセサリーのようなものさ」とささやくなど、ルパンと峰不二子との不思議な関係性を明示した傑作エピソードです。
■宮崎駿監督が「変名」で演出した第2期の人気作
第2シリーズ後期に放映された「死の翼アルバトロス」と「さらば愛しきルパンよ」の脚本・演出クレジットは「照樹務」となっていますが、これは宮崎駿監督の変名です。劇場デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)を完成させた宮崎監督が、劇場版の勢いをそのままTVシリーズに持ち込んだ名エピソードです。
峰不二子の魅力がより楽しめるのは、「死の翼アルバトロス」でしょう。巨大飛行艇アルバトロス号をめぐる、宮崎監督ならではの大冒険活劇となっています。今回も峰不二子(CV:増山江威子)は敵に捕まり、スッポンポンにされてしまいます。しかし、籐椅子に座った峰不二子はまったく動じません。その上、アルバトロス号での攻防シーンでは、目が覚めるような格闘術を披露してみせます。
宮崎監督が演出した「死の翼アルバトロス」の峰不二子は、ライト感覚で好評を博した第2シリーズのキャラクターとは大きく異なるものでした。『カリオストロの城』で見せた、女盗賊としてのタフさを強く感じさせます。ロボット兵が登場する異色作「さらば愛しきルパンよ」ともども、TVシリーズの1エピソードと思えないほど見応えのある内容となっています。
■ルパンとの関係に決着をつける第5期の不二子
2018年に放映された第5シリーズは、デジタル化が進んだ現代社会でのルパンたちの闘いを描いています。シリーズ最終回「ルパン三世は永遠に」では、ルパン(CV:栗田貫一)は敵対する巨大IT企業に監禁された峰不二子(CV:沢城みゆき)の救出に向かいます。
これまでずっと付かず離れずだったルパンと峰不二子の関係性ですが、不二子がウェディングドレスを着ているカットがあり、この回ではふたりの関係に一応の決着が待っています。ふたりの再会シーンには、サプライズ演出も用意されています。
50年も続いたアニメ『ルパン三世』は、時代を反映し、またシリーズを担当するクリエイターの好みも加わり、キャラクターは変化してきました。なかでも、最も変貌が激しいのは峰不二子でしょう。さまざまな顔を持つ峰不二子が生み出されてきました。
宮崎監督の『カリオストロの城』での峰不二子は、「ときには味方、ときには敵。恋人だったこともあったかな」とルパンとの関係をクラリスに打ち明けています。峰不二子のこのセリフは、ルパンとの関係性だけでなく、女と男との普遍的な関係性を物語っているようにも感じられます。
自由を愛する女・峰不二子は、とても気まぐれで謎めいた存在です。味方だと思ってすっかり安心していると、いきなり手痛い目にも遭ってしまいます。さまざまな顔を持つ峰不二子はミステリアスで危険な匂いを感じさせるからこそ、いつまでもセクシーであり続けるのではないでしょうか。
(長野辰次)
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