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『モルカー』監督の師匠が「気絶しそう」になった理由 ストップモーション・アニメの進化

マグミクス / 2021年10月17日 15時10分

『モルカー』監督の師匠が「気絶しそう」になった理由 ストップモーション・アニメの進化

■『モルカー』を恩師はどのように評価? コマ撮りアニメは今成熟期

 またしても『PUI PUI モルカー』が話題を集めています。2021年12月16日(木)に Nintendo Switch用ゲームソフト『PUI PUI モルカー Let’s!モルカーパーティー!』の発売が決定。あのモルカーたちを自分の手で操作できるとあってSNSは期待の声でいっぱいです。

 さて『PUI PUI モルカー』といえば2021年1月5日よりテレビ東京系「きんだーてれび」にて放送されたストップモーション・アニメ(コマ撮りアニメ)。モルモットが車になった世界を舞台に、クリクリの目をしたとぼけ顔の「モルカー」たちがタイヤを必死に動かしてプイプイ頑張る姿に日本中が悶絶。映画館での応援上映が開催されるなどコロナ禍で疲弊した日本社会を大いに癒やしてくれました。

 本作を手がけたのは見里朝希監督。ストップモーション・アニメ作家として世界中から注目を集めている若き才能です。本稿では改めて見里監督の映像作家としてのルーツと恩師・伊藤有壱監督から受け継がれる日本のストップモーション・アニメの遺伝子を読み解きます。

 見里監督は2016年に武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科を卒業。元々は2Dアニメを制作していましたが、大学3年生のときからストップモーション・アニメ制作を開始。卒業制作の『あたしだけをみて』は数々の賞を受賞します。本作は『モルカー』と同じく羊毛フェルトを用いており、また2018年東京藝術大学大学院アニメーション専攻時代の作品『マイリトルゴート』もまた同様に羊毛フェルトによるもの。後述の「質感」へのこだわりをもつ里見監督のクリエイターとしての地盤は着実に固まりつつありました。(実際、すでに『モルカー』の構想は温めていたとか)。

 そもそもストップモーション・アニメというものは制作に恐ろしく時間がかかるもの。人形を少しずつずらしては撮影、ずらしては撮影。この工程を延々と繰り返し……わずか数分の映像に1か月前後かかることはざら。当然、他ジャンルと比べても作品数自体が少なく、Eテレの『ニャッキ!』以外は知らないという人も多いでしょう。そしてその『ニャッキ!』の監督である伊藤有壱さんこそが藝大時代の見里監督の指導教官だったというのはなんとも運命的なものを感じます。

●恩師が「気絶しそうになった」 『モルカー』がもたらした進化とは?

 1995年に放送が開始された『ニャッキ!』と2021年発表の『モルカー』。この約四半世紀の間で日本のストップモーション・アニメはどのような進化を遂げたのでしょうか。SNSの発達で作品発表の場が増え、裾野が広がり、若き才能が次々に現れ市場規模も拡大。満を辞して登場したのが『モルカー』といえるでしょう。こうした外的な環境の変化もさることながら技術的な進化も見られました。恩師・伊藤有壱さんがとりわけ感動したのは「カメラワーク」。『モルカー』を観た方ならお分かりの通り本作ではモルカーたちの動きに合わせてカメラも動きます。動画であればそのままカメラを手で動かせば画面も動きますが、ストップモーションではそうはいきません。カメラが動くたびカメラ自体を固定して撮影します。画面がせりあがっていくシーンでは薄い板を少しずつカメラの下に挟んでいき撮影していったとのこと。このメイキング映像を見た伊藤さんはあまりの労作ぶりに「気絶しそうになった」そうです。

 なお見里監督自身はストップモーションの魅力として「手作り感」を挙げています。なるべくCGは使用せず、爆発も棉で再現。柔らかく形を自由に変えられる羊毛フェルトの素材はそのまま『モルカー』全体の雰囲気を表現しているようです。

 表現技法が進化したからといって、そこにかかる労力は変わらないのが「ストップモーション・アニメ」の世界。そうした意味では「次世代へのバトン」をいかにしてつなぐかは伊藤さんも憂慮していたとか。『ニャッキ!』から『モルカー』へ。そして『モルカー』に刺激を受けた今の子供たちが一体どんなストップモーション・アニメを生み出すのか……そこも含めてコマ撮りで観たくなります。

(片野)

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