特撮スーツアクター・3レジェンド!仮面の下で闘志を燃やす悲しき影武者
マグミクス / 2021年10月19日 17時10分
■顔は映らないが主役は俺だ! スーツアクターの誇り高き役者魂
2021年9月から放送中の『仮面ライダーリバイス』の主役スーツアクターは、「永徳」さんと分かりファンは沸きました。今でこそ「スーツアクター」というポジションが知れわたり、戦隊シリーズなどでも俳優の名前が公表されるようになりましたが、昭和の第2次変身ヒーローブーム時代(1971~74年ごろ)は、“着ぐるみ役”などと呼ばれ、いわば裏方扱いでした。それが今やスーツアクターを目指してアクションに勤しむ役者もいるほどになっています。
まず、スーツアクターとはどれだけ過酷で、ある意味悲しい俳優業か少し触れたいと思います。変身ヒーローは変身する前の素顔の姿の役者が主役で、変身した姿に役者の声がアテレコされることもあります。かつて、初代仮面ライダー・本郷猛役の藤岡弘、さんは変身後も自らコスチュームを着ていたために、ロケ中に大けがをしました。これをきっかけにスーツの“中の人”を専門俳優にしたエピソードは有名で、スーツアクターの過酷さを物語る出来事です。
仮面のなかは視界が悪く音も聞きにくい。コスチュームは通気性が悪く薄いので夏は極暑、冬は極寒。肘や膝にガードはないのに岩場や水辺で飛び跳ね転がり、高所や火薬に怖がるそぶりも見せずスタント、アクションをカッコ良く決めなくてはいけない…。そんな命がけの仕事なのに、もしケガをしても顔が見えないから代わりは探せます。スーツアクターとはそんな悲しき影武者なのです。
しかし、それほどのハードワークだからこそ、スーツアクターは今やアクション俳優が目指す花形にもなっているとか。今回はそんなスーツアクターからレジェンド3人を紹介します。
■ミスター平成ライダー・高岩成二
高岩成二は平成ライダーの中の多くを演じている。画像は『仮面ライダー電王』主題歌「Climax Jump DEN-LINER form(平成ベスト RE-ARRANGE ver.)」
高岩成二さんは、身長175cm、ジャパンアクションエンタープライズ所属の俳優・スーツアクターです。
30代くらいの若いお父さん世代が見て育った仮面ライダーはだいたい高岩成二さんがスーツアクターとして演じていました。『仮面ライダーアギト』から『仮面ライダージオウ』までの18作品で、『仮面ライダー響鬼』を除く17作品で主役を演じ、またスーパー戦隊シリーズでも『忍者戦隊カクレンジャー』のニンジャレッド役など7作品でレギュラー起用されるなど、平成にテレビ・映画のヒーローアクションを制作する際は「まず高岩を抑えろ!」と言われるほどの人気だったそうです。
高岩さんは、変身前と変身後のキャラクターをいかに同一人物見せるか研究していることを著作「時は今– 歩み続けるその先へ ACTion」で述べています。例えば『仮面ライダー電王』では、モモタロス、ウラタノスなど複数キャラクターの全フォームをひとりで見事に演じ分け、その名声を高めました。「スーツアクター」という呼称は高岩さんが高い演技力を発揮したからこそ使われるようになったと言われています。
■「女性よりも女性らしく」可愛い女形アクター・蜂須賀祐一
蜂須賀祐一が演じた女性ヒーローは、本当に女性が演じていると思っていた人が多かったという。『高速戦隊ターボレンジャー』ピンクターボが描かれる、DVD5巻(東映)
蜂須賀祐一さんは身長168㎝、ジャパンアクションエンタープライズ所属の俳優/スーツアクターで、主に女形を担当しています。
1985年~86年放送の『電撃戦隊チェンジマン』のチェンジフェニックスから『鳥人戦隊ジェットマン』のホワイトスワンまで7作品連続でヒロインを演じるなど、計13人のヒロインのスーツアクターを担当。蜂須賀さんが小柄でスリムだったことから女形に抜擢されたといいます。
横須賀さんは、町で何気ない女性の仕草を観察し、さらに役として魅せる動作を映画から学び、演技に取り入れていました。女性スタッフやキャストからも「女性より女性らしく、そして可愛い」と言われるほど女性らしい動きが板についていたそうです。ただ、2000年くらいから女性のスーツアクター、スーツアクトレスが増えたため、敵の女性幹部のスーツアクターを担当することが多くなりました。
■抜群のスタイルを誇った初代ウルトラマン・古谷敏
古谷敏の代表作『ウルトラマン』。ウルトラマンスーツをら着れるのはスタイル抜群の古谷だけだった。画像は『ウルトラマン』DVD2巻(バンダイビジュアル)
古谷敏さんは、シンビンプロモーション所属の俳優です。
おそらく、日本一手足が細長く抜群のスタイルを誇ったスーツアクターだと思います。演じたのはかの初代『ウルトラマン』。当時古谷さんは身長は185cmほど、体重約70キロ、8頭身のいわゆるモデル体型でした。
ウルトラマン役をオファーされた際、“主役”と言われて喜んでいたら変身した後の着ぐるみのヒーロー役の方だと聞いて、古谷さんは「それでは顔が見えない」と断ったといいます。しかし、ウルトラマンをデザインした成田亨さんからウルトラマンのフォルムに合うのは君しかいないと懇願され、役を引き受けることに。実際、スーツのサイズは古谷さんの体型を型取りして作ったため、古谷さん以外にウルトラマンを演じられる人はいませんでした。
密閉されたスーツでの撮影は連続だと10分程度が限界、水中シーンではマスク部分に水が入り、溺れて死にそうになるなど撮影は毎回地獄だったといいます。それでも最後まで同役を演じきり、次作『ウルトラセブン』ではウルトラセブン役は断ったものの、アマギ隊員役で念願の顔出し出演を叶えています。
ちなみに、庵野秀明氏が独自解釈を加えて作る新たなウルトラマン映画『シン・ウルトラマン』のウルトラマンは、2018年時点の古谷さんをボディスキャンし、その体型データに模様やボディラインの線を入れてデザインしているそうです。あの美しいスタイルのウルトラマンが甦るんですね。
今回紹介した3人の他にも、中屋敷哲也さん、新堀和男さん、岡元次郎さん、益田てつさん、など今日まで続く特撮の歴史に欠かせない伝説のスーツアクターはたくさんいます。みなさんに敬意を表し、これからもスーツアクターの活躍を見守りたいです。
(石原久稔)
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