マンガの巨匠・永井豪の凄さ。社会の価値観そのものに挑み、反響を巻き起こす!
マグミクス / 2021年10月21日 20時10分
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■常にパイオニアたるマンガ界の巨人
ロボットマンガの金字塔とも称される『ゲッターロボ』シリーズの最新作『ゲッターロボ アーク』が2021年7月から9月まで放送されたのも記憶に新しい、漫画家・永井豪先生は、1967年にデビューして以来50年以上にわたりさまざまなジャンルの名作マンガを描いてきたパイオニア。まさに「マンガ界の巨人」といえる存在です。今回はそんな永井先生の凄さの一端をご紹介します。
●「お色気」で猛バッシングを受けるも、子供たちの人気を獲得
永井豪先生の存在を世に知らしめた初期の代表作といえば、1968年から「週刊少年ジャンプ」で連載された『ハレンチ学園』です。トンデモ教師と悪ガキたちの攻防を描いた学園マンガですが、回を重ねるごとにお色気描写が増え、ついには“スカートめくりを流行らせたマンガ”として教師やPTAから目の敵にされてしまいました。
永井先生によると、スカートめくりはCMのパロディとして作品に1回登場させただけとのことですが、まるでスカートめくりを発明して広めたくらいの勢いでバッシングされてしまったようです。少年誌でエロティックな表現はまだまだタブー視されていた時代に、すぐに裸が出てくるおきて破りな表現だらけのこのマンガは、連載中止を求める声まで上がったそうですが、大人の意に反して子供たちからの人気は絶大でした。
このお色気路線を引き継ぎ、さらに描写が過激な『けっこう仮面』や女性人気の高い『キューティーハニー』などが描かれました。永井先生は女性を主人公にした少年マンガのパイオニアでもあるのです。
もう1つギャグマンガで挙げておきたいのは、汚ギャグとも呼ぶべき『オモライくん』。路上生活者の少年オモライくんの汚すぎる毎日を描いており、今では設定自体がかなりアウトな作品です。描写が汚すぎて素手でページに触れたくないとまで思わされ、永井先生自身も「この作品を描いていると食欲がなくなる」と言ったほどでした。けれどもSF作家の重鎮・筒井康隆氏はコミック史に残る傑作と大絶賛しました。世間がやりすぎと思うところまで振りきるのも、永井マンガの魅力といえるでしょう。
■ダークヒーローや合体ロボなどを次々と生み出す
●異形のダークヒーロー作品の先駆者
画業50周年愛蔵版『デビルマン』第1巻(小学館)
普通なら敵になるような設定のダークヒーローを主役に据えた先駆者も永井豪先生です。その代表作が悪魔の身体に人間の心を持つ主人公の戦いを描いた『デビルマン』です。同一設定ながらテイストの違うマンガ版とアニメ版が1972年から同時進行で発表された作品ですが、当時、主役のデビルマンや敵の悪魔たちの画を見たテレビ局の担当者が「主人公はどこですか?」と聞いたほど、「主役=正義のヒーロー」と決まりきっていた時代では異端の作品でした。
アニメ版は視聴者の子供たちを意識して勧善懲悪ものでしたが、マンガ版はテイストが異なり、正視できないような凄惨な描写も多々あります。そして最終的には半分悪魔であるデビルマンよりも人間の心の方がずっと醜いと、人間の本質をえぐり出すのです。
そのほかにも永井先生は、鬼から預けられた子供を描いた『手天童子』や日本神話をモチーフとした『凄ノ王』などでも、異形のダークヒーローを主役に据えて人間の心の奥底を描き出してきました。
ちなみに永井先生は『デビルマン』以降、アニメ企画者としても頭角を現し、自身のプロダクション「ダイナミックプロ」から『マジンガーZ』『ゲッターロボ』『キューティーハニー』など数々の名作を世に出しています。
●スーパーロボット界にも革命を起こす
『マジンガーZ 大解剖版』(三栄書房) マジンガーZの魅力が詰まったムック本も発売された
スーパーロボットのジャンルでも、永井豪先生はふたつの大きな革命を起こしました。ひとつ目は搭乗型ロボット『マジンガーZ』(1972年)です。それまで巨大ロボットモノの名作としてはリモコンで操縦する『鉄人28号』がありましたが、人間のパイロットが搭乗して戦うスタイルは当時としては画期的でした。
永井先生によると、渋滞した道路を見ていた時「こういう時に車が立ち上がって、前の車をまたいでいけたらいいだろうなぁ」と、“運転するロボット”をイメージしたことがきっかけでこのアイデアが生まれたそうです。
もうひとつの革命は合体変形ロボットの元祖と言われる『ゲッターロボ』(1974年より週刊少年サンデーで連載開始、故・石川賢先生と共同原作)。3機のマシンが合体することで陸・海・空それぞれの戦いに適した3種類のロボットに合体変形するというアイデアは、世のロボットファンを驚嘆させました。その後現在に至るまでの数々の合体変形ロボット作品は『ゲッターロボ』の影響下にある……といっても過言ではないでしょう。
まだまだご紹介しきれませんが、皆さんもぜひ、作品を読んで永井豪先生の凄さを感じてみてください。
(古屋啓子)
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