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『無限列車編』煉獄杏寿郎が見る哀しい夢 「承認欲求」がキャラクターを動かす?

マグミクス / 2021年10月24日 6時10分

『無限列車編』煉獄杏寿郎が見る哀しい夢 「承認欲求」がキャラクターを動かす?

■オープニング&エンディング曲が加わったTVシリーズ

「ねんねんころり ねんころり 息も忘れて ねんころり」
 2021年10月17日、TVアニメ『鬼滅の刃 無限列車編』(フジテレビ系)の第2話「深い眠り」が放映されました。LiSAさんが歌うTVアニメ版のオープニング曲「明け星」、エンディング曲「白銀」が流れ、新しい大正コソコソ噂話も加わり、すでに『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年)を観ていた人も、改めて楽しめる新バージョンとなっています。

 ちなみに視聴率は、9月25日にノーカット初放映された劇場版『無限列車編』が21.4%(ビデオリサーチ、関東地区調べ/以下同)、10月10日に放映されたTVアニメ版『無限列車編』の第1話「炎柱・煉獄杏寿郎」が10.0%、そして第2話が8.0%でした。

 TVアニメ版は23時15分からの放送スタートですが、多くの人が『無限列車』の世界を繰り返し、視聴しているようです。下弦の鬼・魘夢(えんむ)が唱える「ねんねんころり」を子守唄代わりに、眠りについた人もいたのではないでしょうか。

■炭治郎たちの深層心理が投影された夢の世界

 10月24日(日)放送の第3話「本当なら」は、魘夢の血鬼術による夢の世界がさらに繰り広げられます。炭治郎は鬼に殺された家族と再会します。鬼と戦う日々に明け暮れる炭治郎は、夢の世界で久しぶりに家族の笑顔に触れ、現実世界に戻れなくなってしまいます。それほど、家族と過ごした日々は、炭治郎にとって大切な思い出でした。

 他の「鬼殺隊」のメンバーが見る夢も、それぞれのキャラクターの深層心理を反映した興味深いものとなっています。善逸は夢の世界で、竹製の口かせをしていない禰豆子とデートします。本当に楽しそうです。

 伊之助の夢は、炭治郎、善逸、禰豆子を率いて洞窟探検するというものです。「かまぼこ隊」の親分になるという、とても小さな夢です。でも、無限列車がすでにモンスター化していることを察知するあたりは、さすが鋭い勘の持ち主です。列車に節足動物を思わせる脚が生えているのは、那田蜘蛛山で蜘蛛鬼に苦渋をなめたことが伊之助の心のなかでトラウマとして残っているからかもしれません。

 煉獄の兄貴こと、炎柱・煉獄杏寿郎が見る夢は、シビアな現実そのままの記憶でした。「炎柱」になったことを父親に報告する杏寿郎ですが、父親はちっとも喜んではくれません。杏寿郎がこの夢を見るのは、何度目なのでしょうか。炭治郎たちの前では明るく、毅然とした態度を見せる杏寿郎ですが、心の奥には父親と不仲であることがシコリとなっていることが分かります。

■各キャラクターを動かしている「承認欲求」

 いつも炭治郎が背負っている木箱のなかで眠っている禰豆子は、みんなが寝ているところに箱から出てきます。誰ひとり起きないので、禰豆子は不満顔です。禰豆子は兄・炭治郎の手を自分の頭に乗せて、なでてもらおうとしますが、炭治郎はぐっすり眠っているので、うまくできません。ムッとした禰豆子の表情も、なかなかチャーミングです。

 禰豆子に限らず、『鬼滅の刃』では頭をなでなでするシーンがたびたび描かれています。亡くなった父親の代わりに働く長男・炭治郎に頭をなでてもらう行為は、竈門家の子供たちにとってはうれしいことのようです。

 禰豆子が頭をなでてもらいたがる場面を観ていると、『鬼滅の刃』には「承認欲求」という人間の側面が描かれていることに気付きます。人間には誰かに褒めてもらいたい、自分の存在を認めてほしいという願望があります。「鬼殺隊」の隊士たちはリーダーである「柱」に認めてもらいたがり、「柱」たちはお館様こと産屋敷に褒めてもらうことを名誉としています。魘夢をはじめとする鬼たちも、鬼舞辻無惨に認めてもらうことを欲しています。

 そして、最強の剣士である杏寿郎も、父親に自分のことを認めてもらいたがっています。父親に振り向いて欲しくて、つらい修練に励んだことでしょう。今から100年以上前の、大正時代を生きる『鬼滅の刃』の個性的なキャラクターたちですが、現代社会で暮らす私たちと同じような悩みや喜びと共に生きていたようです。

■承認欲求よりも上を目指す炭治郎

 頑張っている自分のことを評価してほしいという欲求は、誰もが欲する自然なものです。でも、この物語の主人公・炭治郎はちょっと違います。竈門家の長男として生まれ育った炭治郎は、父親を病気で失ったこともあり、大人になるのが早かったようです。承認欲求よりも、さらに上の段階を目指しているように感じられます。

 承認欲求の上の段階は、「自己実現欲求」と呼ばれ、難易度の高い最上級のものとして位置づけられています。早くに大人になった炭治郎は、鬼になった妹・禰豆子を人間に戻すこと、そして鬼舞辻無惨を倒すことを目標に掲げています。他の人が聞けば実現不可能としか思えない、途方もない夢を炭治郎は抱えています。でも、だからこそ、炭治郎は目先の心地よい夢に惑わされずに覚醒することができたのかもしれません。

 杏寿郎の最期や原作コミックの結末を知っていても、作画のディテールや演出の細かい部分に改めて触れることで、『鬼滅の刃』は新しい発見がいろいろとできる物語となっています。炭治郎たちの深層心理が投影された夢の世界を、じっくりと楽しんでください。

※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記
※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記

(長野辰次)

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