『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』“アニメのゲーム化”としてのでき栄えは「最高峰」

■アニメとゲームの高度な融合

　過去、人気アニメがゲーム化される機会はしばしばありました。昔からゲームを楽しんでいる方であれば、「あのアニメがゲームになるんだ！」と喜び勇んで手に入れてみれば、元のアニメとは似ても似つかない内容に肩を落とした記憶があるはずです。

　しかし近年はハードウェアの進歩や作り手の意識の変化、SNSによりユーザーの声が直接市場に影響を及ぼすようになるなどさまざまな理由から、アニメ原作のゲームのクオリティは飛躍的に進化しています。

　なかでも2021年10月14日に発売された『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』は、おそらく現時点において、アニメのゲーム化としては最高峰のでき栄えと言っても過言ではないでしょう。長年多くのユーザーが望んでいたアニメとゲームの高度な融合が行われており、ファン垂涎の内容となっています。ここから本作の魅力について、実際にプレイした感想とともに解説します。

『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』は「週刊少年ジャンプ」に連載され2019年にTVアニメ化、2020年に劇場アニメ化され大ヒットを記録した『鬼滅の刃』（原作：吾峠呼世晴）初のゲームタイトルです。

　ゲームシステムはふたつに分かれており、ひとつは『鬼滅の刃』の物語を追体験する形で展開する「ヒノカミ血風譚」、もうひとつは炭治郎や禰豆子といった登場キャラクターを使って戦う「対戦」モードとなります。

「ヒノカミ血風譚」は炭治郎が鱗滝の元で修行に励んでいる際に出会った、謎の少年「錆兎」とのチュートリアルバトルで幕を開けます。まず攻撃や防御、移動方法など基本的な操作方法を身に付け、次に「水の呼吸」の型を学びます。現状で使用できるのは体を立て回転させて攻撃する「弐ノ型 水車」、上から刀を振り落とす「捌ノ型 滝壺」、出かかりに無敵判定がある「陸ノ型 ねじれ渦」、そして奥義として「拾ノ型 生々流転」を使用可能です。

　操作感は非常に良く、アクションゲームや対戦格闘ゲームの経験がなくとも走り回り、切りまくればそれなりに遊べるようになっています。まだあまりゲームになじんでいない低年齢層への配慮として良いバランスになっていると言えるでしょう。（ただしCERO　C、15歳以上が対象）

■探索と戦闘が軸

ソロプレイモードで『鬼滅の刃』のストーリーを追体験　(C)吾峠呼世晴／集英社・アニプレックス・ufotable

　チュートリアルバトル終了後は原作の物語が章仕立てとなっており、8章までが実装済みです。各章は3Dマップの探索と戦闘を行い、攻略を進める形となっています。

　探索時はマップ上に配置されたマーキングに向かって移動し、人との会話や手がかりの発見などを行います。また、「対戦」のプレイアブルキャラクター開放などに使用できる「キメツポイント」や、キャラクターの過去や物語の裏で起こっていた出来事などを垣間見ることができる「想いの欠片」も点在しており、これらを集めることによってさらに「ヒノカミ血風譚」を奥深く楽しむことができるようになっています。

　鬼の潜むマップや夜間などは探索中に鬼に出会うこともありますが、さほど強くはないのでさっさと倒して進んでしまえばよいでしょう。

　ある程度の探索をこなすと、強力な鬼との戦闘に入ります。どの鬼も原作に登場したものばかりで、それぞれ独自の血鬼術を使用して炭治郎を苦しめます。先に進めば進むほど強力な鬼が登場しますが、基本的な対策については「距離を取って走り回る」→「鬼が大技を打ったら近づき斬りまくる」→「鬼が体勢を立て直したら再び距離を取る」というパターンが有効です。第8章で待つ煉獄さんのところまで、一気に突っ走りましょう。

「対戦」モードはオフラインでの対人と対COM戦、オンラインでの対人戦が可能です。最初は炭治郎と鱗滝、錆兎に真菰の4人しか使うことはできませんが、章のクリアなどさまざまな条件をクリアすれば、使用可能キャラクターを増やすことができます。ダウンロードコンテンツとして今後は上弦の参・猗窩座や下弦の伍・累が追加される予定となっており、その後もさらなるキャラクターの増加が見込まれています。

　対戦のシステムはキャラクターふたりを選択し、状況に合わせて入れ替えて戦う形となります。慣れるまで少し練習は必要ですが操作感は非常に良く、奥義をはじめとする大技も簡単なコマンドで出すことができるので、アクションや対戦格闘になじんでいない方でも、容易に呼吸を使いこなすことができるでしょう。むしろ、「ヒノカミ血風譚」を機に、対戦格闘の世界に入ってみるのも面白いかもしれません。

※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記
※煉獄の「煉」は「火＋東」が正しい表記

（早川清一朗）