「アニソン界の帝王」水木一郎の熱すぎる伝説5つ アニキキャラを作った意外な人物とは?
マグミクス / 2021年10月25日 17時10分
■ヒーローの魂を宿して歌うレジェンド
『鬼滅の刃』の「紅蓮華」(TVアニメオープニングテーマ)、「炎」(劇場版主題歌)は驚異的大ヒットとなり、今、アニソンがこれまで以上に注目されています。そんなアニソン界を長きにわたってけん引してきた人物といえば、「アニソン界の帝王」の異名を持ち、ファンからは「アニキ」として親しまれている熱~い男、水木一郎さんです。1971年に『原始少年リュウ』の主題歌を歌ってから2021年で50年。半世紀ものアニソン人生では、語り継がれるべき数々の熱~い伝説が生まれていました。
●アニソン転向に1ミリの迷いなしだ、ゼェーット!
もともとは20歳で歌謡曲デビューした水木さんがアニソン歌手に転向したのは、あるディレクターからの誘いだったそうです。当時はアニソン(という呼び方もまだありませんでしたが)といえば児童合唱団などが歌っていることが多く、「マンガの歌」として一段低く見られていた時代でした。子供の頃から洋楽やスタンダードジャズを聴いて育った本格志向の水木さんにとっては不本意なオファーかと思いきや、意外にもなんのためらいもなく「ぜひやらせてください!」と引き受けたのだそうです。いつかは映画主題歌を歌ってみたかったので、マンガの歌でも同じことだと思ったのだとか。小さなことにはとらわれない歌への熱い思いが、あの熱~いアニキを生み出したのですね。
●俺はマジンガーZなんだ、ゼーット!
持ち歌は1200曲以上と言われる水木さんですが、常に大切にしてきたのは、ヒーローになりきって歌うことだといいます。実は初めて歌ったアニソン『原始少年リュウ』の主題歌のレコーディングでは、当初、なんどもダメ出しが続きワケが分からなかったのだそうです。けれども改めて主人公であるリュウについて説明を受けると、リュウ本人になりきって歌うことができ、すぐにOKとなったのだそうです。子供に向けた曲だからこそ、ヒーローになりきって魂を宿すことが大事だったのでしょうね。以来、すべての曲でヒーローになりきっているという水木さん。代名詞とも呼ばれる『マジンガーZ』ではもちろん、マジンガーZ本人(本体?)として歌っているからこそ、雄叫びの「ゼェーーーット!」もあんなに熱いのでしょう。水木さんが10曲歌えば、そこには本物の10人のヒーローの魂があるのです。
■アニキキャラを作った人物
水木一郎のアニソン人生が始まったアニメ『原始少年リュウ』 画像はDVD第5巻(原作:石ノ森章太郎 発売元:日本コロムビア)
●赤いマフラーはアニソン普及への決意の証だ、ゼェーット!
水木さんといえば、赤いマフラーがトレードマーク。風もないのになびいているマフラーは、まさにザ・ヒーローという感じですが、これ、単なるヒーロー感の演出ではないんです。今でこそ広く市民権を得たアニソンですが、50年前から歌い続けている水木さんは「アニソンが正当に評価されていない」と悔しい思いもしてきたのだとか。そして、お茶の間の認知度をあげたいとの思いから「目立てば知ってもらえる」精神で、赤いマフラーをなびかせてきたのです。ハイテンションで飛ばす決めゼリフの「ゼェーット」も同様に、アニソン普及のためなのだそうです。ただし、この裏には人知れず後押ししていた人がいました。「アニソン界の女王」こと堀江美都子さんです。堀江さんによると、水木さんはかつてアニキキャラではなくおとなしい人だったそうです。けれども堀江さんが産休で2年間休むことになり「その間アニソン業界をお願いします」と頼んだことで使命感に火が点いて、熱いアニキキャラになったのだそうです。いわば、堀江さんが「アニキの母」なのです。
●24時間ライブで1000曲歌いきったんだ、ゼェーット!
1999年8月、水木さんは無謀ともいえるチャレンジを行いました。音楽番組で企画された「24時間1000曲ライブ」です。当時配布されたセットリストは、曲を目で追うだけでもクラクラするほどですが、それを全力で歌いきったとは、まさに超人! 万が一、水木さんが途中で倒れた場合は仲間が歌い継ぐというバックアップ作戦も準備されていましたが、見事、ひとりで完唱したのです。テレビでは点滴を打ちながら歌う様子が放送されましたが、水木さんが言うには、それは番組上の演出で自分ではそんなに疲れていなかったのだとか。
ちなみにセットリストには「アニソンのアニは アニキのアニ!」のメッセージも書かれていました。きっと、アニソンの神とヒーローたちの魂が支えてくれたのでしょう。
●「ゼェーット!」はアニソンファンの世界共通語だ、ゼェーット!
ウィキペディアには日本人最多の90言語で掲載され「世界一有名な日本人」とも言われている水木さん。日本のみならず世界中のアニメファン憧れの存在で、どの国でも「アニキ(ANIKI)」コールで迎えられるのだそうです。2010年の上海万博ではアンコールの習慣がないと聞いていた中国でさえ、アニキコールが鳴り止まずアンコールが行われたのだとか。そして、フランス、コスタリカ、シンガポール、タイなどなど、どの国でも「マジンガーZ」を歌えば、会場全体が「ゼェーット!」と大合唱。言語は違えどヒーローの魂で歌っているからこそ、世界中がひとつになれるのではないでしょうか。
日本のお茶の間だけでなく、世界中にアニソンを普及させた水木一郎さん。これからもますます熱~いアニソンを歌い続けてくれるでしょう。
(古屋啓子)
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