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ゲーム史に残る『ワンダと巨像』 「万人ウケ」はしないが「唯一無二」

マグミクス / 2021年10月27日 6時10分

ゲーム史に残る『ワンダと巨像』 「万人ウケ」はしないが「唯一無二」

■巨像 vs 人間の臨場感を描いたアクションアドベンチャー

 読者の皆さまは「巨像恐怖症」(メガロフォビア)という言葉をご存じでしょうか。その名の通り自分よりも巨大なモノ(建築物・石像・ダムなど)に恐怖心を抱く一種のトラウマのようなもので、都市部に林立するビルや観光地の大仏を見た際、「押しつぶされそうな圧迫感に悩まされる」・「自分が見下されているようで怖い」といった心理状態に陥ってしまうと言われています。この巨像恐怖症に心当たりのある方にとっては、観光スポットなどに設置されているランドマーク(太陽の塔や牛久大仏など)も、一転して恐怖の対象に変わってしまう……というワケです。

 この記事でご紹介するのは、そんな「巨像」をダイレクトに冠したゲーム史の名作『ワンダと巨像』。本作の生誕16周年を記念すべく、話題を集めたゲームシステムや魅力を改めて振り返ります。

 本作は2005年10月27日にPlayStation2(以下、PS2)用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャーゲームです。開発を担当したのは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)。タイトル名やゲームシステムこそ異なるものの、同じくPS2用に生み出された『ICO』と開発陣が同じということもあり、世界観の一部を共有する続編として誕生しました。

 大まかに述べるならば、本作は「ワンダ(主人公)による巨像の討伐劇」に焦点を当てて描かれています。ただしその構図は、「ワンダが正義で巨像が悪」といった勧善懲悪モノではありません。魂を失って抜け殻となった少女「モノ」を救うため、16体の巨像を仕留めるべく各地を奔走するワンダ。その一方、ワンダの行いを危険視し、「世界に災いをもたらす」として異議を唱える部族の術士「エモン」。相反する思惑が交差するなか、プレイヤーはワンダを操って禁忌(巨像の命を奪う)に手を染めることになります。

 ではどうやって巨像を倒すのか? 答えはシンプルで、「ワンダが巨像の体にしがみついて弱点を攻撃する」という流れです。とは言いうものの、巨像はワンダと比べ物にならないほどの体格差を誇るため、むやみに剣で斬りかかっても返り討ちにあうのが関の山。不利な状況下で優位に立つには巨像の行動パターンを観察し、スキを突いて体に登らなければいけません。その上で弱点(頭頂部や背中など)を見つけ出し、剣を突き立てることでやっと致命傷を与えることができます。

 とりわけて重要視すべきは、ワンダが決死の覚悟で巨像に取り付く過程です。ボタンを押しっぱなしにしている間は半永久的につかまり続ける……のではなく、むしろその逆で、本作は「腕力ゲージがなくなると問答無用で落下する」システムを採用。ゆえにプレイ中は腕力ゲージを調節しながら巨像に登るテクニックが常に求められたのです。巨像も当然のように激しく抵抗するため、慣れないうち(特にファーストコンタクト時)は巨像に取り付く暇もなく、無残に踏み潰されてしまう光景も少なくありませんでした。

■歴史に残る唯一無二のゲームデザイン

PlayStation4用にリメイクされた『ワンダと巨像』(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)

 2005年の発売当時から各方面で話題を集め続けた『ワンダと巨像』。具体的には2006年度の「日本ゲーム大賞」にて優秀賞を受賞したほか、アメリカのタイム誌が選ぶ「All-TIME 100 Video Games」では、『スーパーマリオブラザーズ』や『ファイナルファンタジーVII』と並び、数ある名品の一本としてラインナップ選出されています。本作の影響力は16年経った今も健在で、根強いファンを多く抱える名作と言っても過言ではないでしょう。

 しかし誤解を恐れずに表現するなら、幅広いユーザー層に受け入れられる、俗に言う「万人ウケ」するゲームではなかったのも事実です。

 肝心の巨像を発見するため、プレイ中は広々としたフィールドをとにかく走り回らなければならない。加えて道中の寄り道要素に乏しく、巨人の討伐以外の戦闘は皆無。巨人と相対した際のカメラワークは自由が利かず、ワンダの挙動にいたってはリアル路線のため取り回しが難しい……。ある程度プレイを続ければ適応できるものの、人を選ぶゲームなのはほぼ間違いありません。このあたりは実際に本作をプレイして初めて実感できる煩わしさかもしれません。

 それでもなお本作が後世に語り継がれている理由。それは上記の「わずらわしさを含めて計算し尽くされた唯一無二のゲームデザイン」にあると筆者は考えます。

 一本道であることを逆手に取った美しい景色作り。「モノを何がなんでも救いたい」と願うワンダの心情とシンクロさせるように、巨人討伐を除いてほぼ一切の戦闘要素を廃した進行ルート。圧倒的なスケールで押し迫る巨像を最大限に引き立てるべく、開発陣によって意図的に決められたカメラワーク……などなど、全体の因子が紙一重の配分で丁寧にデザインされているのです。

 だからこそ、導かれるままに巨像を倒し続け、ワンダの旅路に最期まで寄り添ったプレイヤーが後を絶たなかった。肌に合う or 合わないを前提としながらも、ゲーム史に名を残す傑作として扱われている現状につながるのではないでしょうか。

(龍田優貴)

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