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アニメ『シャーマンキング』29話 小さな「設定」をギリギリまで追い込んだ製作裏話

マグミクス / 2021年10月28日 18時30分

アニメ『シャーマンキング』29話 小さな「設定」をギリギリまで追い込んだ製作裏話

■今回のアニメ制作で掲げられた「大きな目的」

 2021年10月28日(木)放送のTVアニメ『シャーマンキング』第29話は、ハオ一味の花組と道 潤(タオジュン)らとの戦いが描かれました。前回の記事で、原作とアニメでは花組のカンナが操るエクトプラズムとアシュクロフトの表現が「一部ぼかされている」と述べましたが、気付いたでしょうか?

 原作では、アシュクロフトがオーバーソウルするための媒介は、カンナが吸うタバコの煙でした。煙は「そこにあって触れるけれどつかめない」ものです。そのため誰もアシュクロフトをとらえられません。厄介さでいえば、空気を媒介とするハオの持霊スピリット・オブ・ファイアと同じぐらいではないでしょうか。

 一方アニメのカンナがくわえているのはタバコではなくピンクのスティックです。そのため、煙が媒介であるということは言っているのですが、その”煙”が何を指すかがぼやけており、もしかしたらカンナが吐き出すエクトプラズムのことだと思った人がいたかもしれませんね。

 これはギリギリの判断だったと筆者は考えています。時代的に喫煙も飲酒も好ましい表現とはされていませんが、深夜枠なら不可能ではありません。ただ、それはできない選択でした。このアニメは子供に向けて作ろうとしていたからです。『シャーマンキング』を次の世代に引き渡すためには必要なことでした。

 また、今作は原作マンガを知らない方にも向けています。これも、作品の認知度をさらに上げたいという思いです。このふたつは特に大きな目的でした。

 当時、表現の方法について関係する方々で話し合ったのを覚えていますが、木刀の竜と違い、カンナのタバコは能力に紐づいているため、「原作に忠実にしたい」という気持ちは誰もが持っていました。しかし「目的達成」と天秤にかける必要があったわけです。

 筆者もこの連載では基本的に、原作を読んだことがなく、アニメから入った人にも補足的な情報を伝え、記事を通して原作への興味を持ってもらいたいと考えており、そのために試行錯誤しています。そういったことから考えていくと、カンナの表現はギリギリを攻めていると感じるのです。

 なお、カンナの能力については「月刊なかよし」に連載中のスピンオフ作品『SHAMAN KING &a garden(漫画:鵺澤 京)』でも描かれています。これは花組の過去を描いた物語で、意外な内容も読むことができます。興味のある方はぜひご覧ください!

■ゴーレムとそれを呼び寄せたセイラームの呪文の意味とは?

花組の襲撃に対し、道 潤の持霊・白竜(パイロン)が奮闘する。アニメ『シャーマンキング』29話より

 一方、潤たちが花組と戦っている間、アンナはルドセブとセイラームを連れてその場を離れています。その際、置いて来た(忘れて来た)ゴーレムを呼び出す際にセイラームが使った呪文のような言葉について説明します。

 まずゴーレムですが、これは元々ユダヤ教の伝承にある泥人形です。今回29話のタイトルだった「emeth」は起動キーで、意味は英語の”truth”(真理・真実)です。この文字を書いた羊皮紙をゴーレムの額に貼り付けます。ゴーレムを破壊する時は頭の「e」を消して「meth(英語の”death”で死を意味する)」にします。このギミックはファンタジーの謎解きに登場することもあるので、ご存じの方もいるかもしれません。

 そしてセイラームが口にした「ヘセド、ビナー、イェソド……」ですが、これもユダヤ教に基づく神秘思想に関係する言葉です。「セフィロトの樹」というものをご存じですか? 宇宙の原理、神の力といったものをいくつかの要素に分けて樹形図のように配置したものですが、そのなかで例えばヘセドは「慈悲」「4」「青」「木星」などを意味する要素です。

「カバラ」「タロットカード」とも関わりがあり、宗教、魔術、神秘思想的に重要な存在なのです。ゴーレムという謎の存在、ユダヤとの関連がこの兄妹にどういう意味を持つのかはそのうち明らかになるでしょうが、意味深なふたりであることは確かですね。ちなみに、ミッキー麻倉、ルドセブ、セイラームがシャーマンファイトに参加する際のチーム名は「カバラーズ(KABBALAHERS)」です。

 最後に。アニメでは前回からオープニングとエンディングテーマが変わりました。オープニングは水樹奈々さんの熱いサウンドですが、エンディングは原作でも特に人気のエピソード「恐山ル・ヴォワール」編をイメージしたものになっています。それを見ると、ついに放映される時期が来たのだと実感します。葉とアンナの過去を描いたエピソードがどのように表現されているのか、とても楽しみです。

 なおこの連載では、「恐山ル・ヴォワール」編の舞台となった青森市~恐山を取材したレポートを2020年末に掲載しています(第19回~22回)。こちらもあわせてご覧いただければと思います。

 それでは今回はこの辺で。また次回よろしくお願いします!

(タシロハヤト)

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