「ジャンプ」が取り逃がした大ヒット漫画家4人…「つまらない」と切られて今がある?
マグミクス / 2021年10月29日 17時10分
■のちの国民的作家も取り逃していた…?
数あるマンガ雑誌のなかでも、長年発行部数トップに輝く「週刊少年ジャンプ」。多くの漫画家にとって、「ジャンプ」での連載は憧れの対象です。
しかし、実際に連載を勝ち取る漫画家はほんのひと握り。編集部への持ち込みを経て、話の面白さ、画力、そして「ジャンプ」らしさ……あらゆる面で評価された作家のみが「ジャンプ」での連載を実現できます。1本の新連載の裏には、膨大なボツ作品が存在しているのです。
なかには、「ジャンプ」に持ち込みをしていたものの連載できず、他誌に流れたところ大ヒットを実現させた漫画家もいます。もちろん、面白いマンガでも作風が「ジャンプ」には適さなかった……という考え方もできますが、もしその作家たちを取り逃がしていなかったら、どれだけ歴史が変わっていたんだろうか? と考えてしまいます。今回は、そんなジャンプで連載できなかった経歴を持つ4人の著名漫画家を紹介します。
●諫山創(代表作:『進撃の巨人』)
まず最初は、超ヒット作『進撃の巨人』の作者・諫山創先生です。『進撃の巨人』の持ち込みが「ジャンプ」に落とされたことは、諫山先生自身が明言しており、メディアでもたびたび取り上げられています。当時の担当編集に言われたとされるセリフ「マンガじゃなくて『ジャンプ』を持って来い」も有名です。
ジャンプに落とされた後に「週刊少年マガジン」編集部に持ち込まれた『進撃の巨人』は新人賞を獲得。その後、「別冊少年マガジン」で連載が開始されると、アニメ化とともに人気が爆発し、現在では累計発行部数1億部を突破する超人気作となりました。
結果だけみると、「ジャンプ」編集部は失敗したのかもしれませんが、もし通ったとしても、アンケート制の週刊連載であの重厚な物語を描ききれたのかどうか……? 月刊の「別冊少年マガジン」に移行したことも成功の一因かもしれません。
●高橋留美子(代表作:『うる星やつら』など)
数々のヒット作を生み出してきた高橋留美子先生は、インタビューなどで、大学時代に「ジャンプ」に持ち込みをしていたというエピソードを話しています。そのときの担当編集は、のちに鳥山明先生を発掘する名編集者・鳥嶋和彦さん。しかし、「ジャンプ」での連載は叶わず、「週刊少年サンデー」に流れてしまったのでした。
その「サンデー」で掲載されたのが、デビュー作の読み切り『勝手なやつら』。SF要素の入ったドタバタラブコメは当時斬新で、高い評価を受けることになります。この評価がかの『うる星やつら』の連載につながり、同作は大ヒットを飛ばしました。
その後、『らんま1/2』『犬夜叉』『境界のRINNE』『MAO』と、長年「サンデー」を支え続ける作家となりました。もしも高橋先生が「ジャンプ」で連載をスタートさせていたら、大きく歴史が変わっていたことでしょう。
■いま振り返れば「努力不足だった」と、大人なコメントも
10代で集英社の賞を獲得するもデビューできず、遅咲きとなった渡辺航先生の代表作『弱虫ペダル』第1巻(講談社)
●オダトモヒト(代表作:『古見さんは、コミュ症です。』)
「週刊少年サンデー」で連載中のコメディマンガ『古見さんは、コミュ症です。』は、累計発行部数は550万部を突破し、2021年にはアニメ化・ドラマ化されるなど、注目を集めている作品です。
作者のオダトモヒト先生は、「週刊少年サンデー」の巻末マンガ『サンデー非科学研究所』で、自身のルーツが紹介されていました。それによると、過去に「ジャンプ」に持ち込みをしたものの「つまらない」とバッサリ切られてしまったとのこと。他に持って行ったネームも「多分意味ないと思うけど見るわー」と言われるなど、かなりひどい編集に当たってしまったようです。
オダ先生のネームは『ジャンプスクエア』の編集には好評だったものの、結局「サンデー」で「これすごくいいです!」とかなりの評価を得たため、そのまま読み切りを「小学館新人コミック大賞」に応募して、見事大賞を受賞。その後、2014年に『デジコン』でデビューすることとなります。
そしてオダ先生は、2016年から連載の『古見さんは、コミュ症です。』で大ヒットマンガ家の仲間入りを果たしたのです。
●渡辺航(代表作:『弱虫ペダル』)
「少年チャンピオン」にて2008年から連載中の『弱虫ペダル』は、ロードレースを題材とした熱いスポーツマンガ。累計発行部数は2500万部を突破している大ヒット作です。
作者の渡辺航先生が本作でブレイクしたのは、30代後半のことでした。実は渡辺先生はその20年以上前の1986年、15歳にしてすでに集英社の第22回ホップ☆ステップ賞で佳作を獲得しており、そこから数えるとかなりの遅咲きです。
もともとは「週刊少年ジャンプ」の大ファンで、賞をとってからすぐにデビューできると考えていたという渡辺先生。しかし、その後も赤塚賞で佳作や準入選は果たすものの、結局「ジャンプ」での連載は叶わず、戦力外通告を受けてしまうのです。
渡辺先生は当時のことを「ただの努力不足ですよ」と語っています。「ジャンプ」から切られたという経験があってこそ、いまの『弱虫ペダル』があるのかもしれません。
(古永家啓輔)
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