早すぎた平成の大傑作『ダイレンジャー』 子供にはトラウマ級のグロ描写?
マグミクス / 2021年11月7日 9時30分
■「転身だァァッ」からの「グロすぎだァァッ」…怒涛の終盤に注目
まだ「ニチアサ」(テレビ朝日の日曜日の朝に放映されるアニメ、特撮番組の総称)という言葉もなかった1990年代は、特撮番組の冬の時代でした。『宇宙刑事ギャバン』に始まるメタルヒーローシリーズこそ健在でしたが、平成ウルトラマンは1996年に『ウルトラマンティガ』が始まるまで、平成仮面ライダーは2000年の『仮面ライダークウガ』までずっと放送されていなかったのです。そのため、毎週金曜日の17時30分から放送されていたスーパー戦隊シリーズは80年代後半~90年代初頭に生まれた世代にとっては特別な存在でした。
そんな時代の真っただなか、1993年に放送されていたのが『五星戦隊ダイレンジャー』です。本作は前作『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のファンタジー路線から一転、8000年の歴史を持つ中国の「ダイ族」の戦士たちがそれぞれ中国拳法を駆使して、妖力を持つ「ゴーマ族」と戦う……という熱血バトル系の色が強い設定でした。
また、各メンバーを主役に据えたストーリーを本筋と並行してしっかり描くことで、これまでにない重層的な物語になっていました。例えばテンマレンジャー(ブルー)と、敵でありライバルでもある3バカゴーマ怪人との戦いは物語全体を通して繰り広げられた大茶番劇でしたし、シシレンジャー(グリーン)と同じダイ族で孔雀明王の化身・クジャクの悲劇の恋模様など、群像劇らしいドラマがあったことも本作の完成度を高めた一因でしょう。
今となっては前作の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』や次回作の『忍者戦隊カクレンジャー』が何かと注目されがちですが、『ダイレンジャー』の人気も相当なものです。93年生まれでリアルタイム世代ではないはずの女優・有村架純さんも、「スーパー戦隊シリーズのなかでも一番好きな作品」として本作を挙げ、アツく語っています。
またマイケル原腸氏がデザインしたゴーマ怪人のインパクトも凄まじいものでした。なかにはファンの間でトラウマ級といわれているほど強烈な怪人もいます。特に「指輪官女」「ネックレス官女」「イヤリング官女」からなる三人官女は、高熱の時に見る悪夢を具現化したかのような根源的な恐怖を与える存在でした。
しかし本当に視聴者の間で「トラウマ続出」だったのは、物語終盤の第49話の展開でしょう。今さらながら以下、相当なネタバレが含まれますのでご注意ください。
■真のトラウマ展開はクライマックスで描かれた
『五星戦隊ダイレンジャー』の5体合体ロボ、大連王。画像は「五星合体 DX大連王」(BANDAI)
ゴーマ族幹部たちとの対決が本格的に始まったところで、ラスボスだったゴーマ15世が、敵の幹部・シャダム中佐によって命を吹き込まれた「泥人形」であったことが発覚します。ゴーマ15世本人もこのことは知らず、シャダム中佐からこの事実を知らされて呪術が解けるやいなや、ゴーマ15世の手足がボロボロと崩れ落ちていき、やがて生首だけとなってしまいます。
さらに、眼窩(がんか)からこぼれた眼球がカメラ目線でギョロリと睨むのです。おまけに、ゴーマ15世はもともと甲高い裏声で話すため、断末魔もまた裏声。描写も音声も、あまりにも怖すぎました。その後も「幹部が泥人形だった」という種明かしが続き、同じくらい強烈な恐怖映像が連続します。
きわめつけは彼らを操っていたシャダム中佐本人の死に様。なんと、彼もまた泥人形だったことが判明し、「俺も泥人形だったのか……」と泥を吐きながら崩れ去るのです。今まで見ていた視聴者の想像をくつがえす展開と、刺激が強すぎる映像に背筋が凍りっぱなしでした。ちなみに、シャダムが吐いた泥は撮影時にチョコフレークを使用して表現したようです。
ここまで説明してきた通り、『五星戦隊ダイレンジャー』の後半はほとんど「トラウマ製造機」ともいうべき凄まじい内容でした。1993年はまだ特撮でCGが使われ始める前であり、アナログな特殊効果を使っているがゆえの怖さが詰まっていた映像でもあります。しかも、『ダイレンジャー』が植え付けたトラウマはここで終わりません。さらに衝撃的なのは最終回の第50話の内容です。ここから先はぜひ、ご自身の目で確かめてみてください。
それにしても、同時期の戦隊シリーズと比較して『ダイレンジャー』について語る人が少ないのは、上記のトラウマ映像が影響しているのかもしれません……。
(片野)
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