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『帰ってきたウルトラマン』の「11月の傑作群」…実は作品を褒めていなかった?

マグミクス / 2021年11月5日 17時10分

『帰ってきたウルトラマン』の「11月の傑作群」…実は作品を褒めていなかった?

■「11月の傑作群」と呼ばれるエピソードたち

 今年2021年で放送から50周年を迎えた『帰ってきたウルトラマン』。その11月に放映された作品を、一部のファンが「11月の傑作群」と呼ぶことをみなさんご存じでしょうか?

「11月の傑作群」というのは、『帰ってきたウルトラマン』で11月に放送されたエピソード……

 第31話「悪魔と天使の間に…」1971年11月5日放送
 第32話「落日の決闘」1971年11月12日放送
 第33話「怪獣使いと少年」1971年11月19日放送
 第34話「許されざるいのち」1971年11月26日放送

……の4作品の通称です。

 これは公式に定められたものではありません。第2期と第3期ウルトラシリーズの間にファンから言われるようになったもので、『帰ってきたウルトラマン』のなかで傑作と言われるエピソードが11月に集中して放送されたことを指しています。

 それでは各エピソードと見どころを簡単に説明しましょう。

 第31話「悪魔と天使の間に…」は、本作で初めてとなる侵略宇宙人のゼラン星人が登場、障害のある男の子を装って卑怯な手段で罠を仕掛け、郷秀樹を孤立させてウルトラマンを窮地に追いやるというストーリーです。男の子がテレパシーを使う場面では印象的な効果で宇宙人らしさを演出していました。

 第32話「落日の決闘」は、珍しいコメディタッチのストーリーです。脚本は先日お亡くなりになられた飯島敏宏さんが千束北男名義で書かれたもので、進化する怪獣キングマイマイ、迷彩仕様で登場するマットビハイクル、等身大のウルトラマンなど、この回でしか見られないものが多くありました。

 第33話「怪獣使いと少年」は差別問題を取り入れた意欲作で、『帰ってきたウルトラマン』を語る時、引用されることが多いエピソードです。「宇宙人はすべて侵略者、人間は被害者」という概念に警鐘を鳴らす、すべてのウルトラシリーズのなかでも特異な問題作といえるでしょう。

 第34話「許されざるいのち」は、動物でも植物でもない生物を生み出そうとして、それが怪獣となってしまったことを苦悩する科学者の話でした。怪獣のデザインと物語の原案は一般から寄せられたもので、後に映画『ゴジラvsビオランテ』の原案公募でも採用された小林晋一郎さんによるものです。

 本来ならばもっと詳しく解説したいところですが、簡単な説明で失礼しました。とにかく、『帰ってきたウルトラマン』を見ていくと、「ちょっと違うな」と感じさせる異色作が11月に集中していたということでしょうか。それを「11月の傑作群」とファンが呼ぶようになり、そのクオリティは第1期ウルトラシリーズにも匹敵すると言われることになりました。

 それが第3期ウルトラシリーズの始まる前から言われるようになったわけですから、45年くらい前の話です。以降、書籍などでもよく取り上げられ、ウルトラファンなら誰もが知っている逸話。しかし、このフレーズに異論をはさむ人も多くいます。かくいう筆者も長年、疑問に思っていました。

■「11月の傑作群」と呼ばれるようになった理由とは?

『帰ってきたウルトラマン』DVD9巻(円谷プロダクション)。第33話「怪獣使いと少年」のエピソードを収録している

 この「11月の傑作群」というキャッチコピーは、もともとは「第1期の『ウルトラQ』、『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』より第2期シリーズは劣っているが、『11月の傑作群』だけは例外的に傑作」……といった意味がありました。つまり、どちらかというとマイナスのイメージから生まれた言葉だったのです。

 確かに第1期ウルトラシリーズは傑作が多く、「11月の傑作群」もまた傑作でしょう。しかし、第2期は第1期と比較してそれほど面白くないのか? というと疑問を感じます。第2期は子供向けの要素が多く、海外でのセールスを考えていた第1期と比べて、日本の風土、家庭といった部分が多く描かれていました。そういう経緯からSF要素を前面に出した第1期とは作品のカラーが大きく違います。スタッフも入れ替わっているのですから当然のことでしょう。

 これは筆者の私論ですが、シリーズが続くと、どうしても最初の作品が究極にして至高という風潮が出るものです。特にシリーズの間が数年以上あると顕著でしょう。他にも『ゴジラ』や『仮面ライダー』、アニメでは『ガンダム』なども、ここまでは名作でこの後は駄作……などと簡単に言う人が少なくありません。逆に初代を超えた名作……と大勢の人が支持するシリーズ作品はあまり聞かれないのではないでしょうか?

 つまり、シリーズが長くなればなるほど、世代間ギャップから来る対立構造は生まれやすいものです。

 話を元に戻しますと、「11月の傑作群」というフレーズに違和感を覚えるのはそこの部分です。一見、称賛しているようで全体的には平凡な作品というニュアンスを感じるからです。第2期をリアルタイム子供で見ていた筆者としては、『帰ってきたウルトラマン』すべてが傑作群。むしろ面白くない話はないとさえ思っています。つまり「11月の傑作群」というフレーズが、他の『帰ってきたウルトラマン』の傑作を見逃してしまう。……そう思うと残念で仕方ありません。

 確かに言葉が生まれた時代には年長者を説得するのに必要なフレーズだったかもしれませんが、第3期、海外シリーズ、TDGなどその後にもシリーズは続いていますので、呪縛にも似たキャッチコピーはそろそろ下ろしてもいいのではないでしょうか?

 ちなみに前述した「ここまで名作」という言葉は、『戦隊シリーズ』と『プリキュア』ではあまり聞きません。どちらも、ほぼ続けて作品が作られているからでしょうか。「最近の〇〇は……」という上から目線は世代間ギャップを生むだけなので、筆者はできるだけ言わないよう控えております。

(加々美利治)

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