1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. アニメ・コミック

金ローで『アナ雪』が2週放送 元ネタは「怖すぎ」なのに、ディズニーアニメでは人気の理由

マグミクス / 2021年11月12日 17時10分

金ローで『アナ雪』が2週放送 元ネタは「怖すぎ」なのに、ディズニーアニメでは人気の理由

■ディズニーアニメ史上、最大のヒット作

「ありのままの姿 見せるのよ~」

 松たか子さんが歌う挿入歌「レット・イット・ゴー」が大きな話題を呼んだディズニーアニメ『アナと雪の女王』(2014年)は、日本での国内興収が255億円を記録した大ヒット作です。続編『アナと雪の女王2』(2019年)も、国内興収133.7億円を記録しています。

 心を閉ざしてしまったアレンデール王国の王女エルサ(CV:松たか子)と、その妹・アナ(CV:神田沙也加)との姉妹愛が、キャッチーなミュージカルナンバーを交えてドラマチックに描かれています。2021年11月12日(金)の「金曜ロードショー」(日本テレビ系)では『アナと雪の女王』が、翌週11月19日(金)にはテレビ初登場となる『アナと雪の女王2』がオンエアされます。どちらもノーカット放映です。

 ディズニーアニメ史上、最大のヒット作となった『アナと雪の女王』ですが、原典となったアンデルセン童話『雪の女王』とはまったく異なる物語となっています。アンデルセンが描いた「雪の女王」は、エルサよりもずっとずっと恐ろしい女性です。

■ホラータッチだったアンデルセン童話

 ディズニーアニメ『アナと雪の女王』の原題は『Frozen』となっています。王位継承者として生まれたエルサですが、手に触れたものを凍らせてしまうという不思議な力を持っていました。自分の能力が他の人を傷つけてしまうことを恐れ、エルサは心を閉ざし、氷の宮殿に引きこもってしまいます。そんなエルサの凍りついた心を、屈託なく育った妹のアナが冒険の数々を経て、やがて溶かしていくことになります。

 一方、デンマーク生まれのアンデルセンが19世紀に執筆した『雪の女王』は、仲のよい少年カイと少女ゲルダが主人公です。ある雪の日、美しくも恐ろしい「雪の女王」がソリに乗って現れ、カイを連れ去ってしまうという背筋も凍るホラータッチの作品です。カイを連れ戻そうと、ゲルダは懸命に探し続けます。

 雪の女王に愛された者は、体だけでなく心臓まで凍りつくことになります。雪の女王=死の象徴です。死は誰もが恐れるものですが、同時に生きている人間をすべての悩みからも解放してくれます。雪の女王から甘いキスを受けたカイを、ゲルダは取り戻すことができるかのか。児童向けの作品ながら、深淵さを感じさせる内容です。

 雪の女王に対する畏敬の念を詩情豊かに描いたことで有名なのが、ソビエト連邦で制作された長編アニメ『雪の女王』(1957年)です。宮崎駿監督は新人アニメーター時代にこの『雪の女王』を観て、アニメーター業を続けることを決意したそうです。『雪の女王』のヒロインであるゲルダの一途な性格やキャラクターデザインなどは、その後の宮崎アニメに大きな影響を与えています。

 脚本の初期段階では『アナと雪の女王』のエルサも悪役だったのですが、最初にできた曲「レット・イット・ゴー」がとても素晴らしかったので、エルサのキャラクター設定が変わることになったという経緯があります。機会があれば、ソ連版『雪の女王』もご覧になってください。名曲「レット・イット・ゴー」がなければ、エルサも冷たく恐ろしい女王になっていたかもしれません。

■ディズニーアニメの『ピノキオ』と原作『ピノッキオの冒険』も大きく違う

全国公開中の映画『ほんとうのピノッキオ』 配給/ハピネットファントム・スタジオcopyright 2019(c)ARCHIMEDE SRL-LE PACTE SASLE PACTE SAS

 イタリアで2019年に大ヒットした映画『ほんとうのピノッキオ』が、現在は日本でも劇場公開中です。イタリアで親しまれている児童文学『ピノッキオの冒険』を、リアルに実写化した作品です。木の肌をした人形のピノッキオはCGではなく、特殊メイクをした少年が演じています。かなり不気味なダークファンタジーです。

 スタンダードナンバー「星に願いを」で有名なディズニーアニメ『ピノキオ』(1940年)と、実写映画『ほんとうのピノッキオ』を見比べると、その違いに驚きます。ピノッキオの育ての親であるジェペットじいさんは貧しく、結婚できずにいます。寂しさを紛らわせるために作った操り人形がピノッキオでした。原作が執筆された19世紀イタリアの庶民の生活の厳しさが伝わってきます。

 ディズニー版『ピノキオ』では、ピノキオが飲み込まれるのは鯨ですが、これも原作とは異なります。鯨ではなく、大ザメに原作のピノッキオは飲み込まれるのです。

『ピノッキオの冒険』の原作者カルロ・コッローディが暮らした街では、「高利貸し」のことを大ザメと呼んでいたそうです。大ザメに飲み込まれるということは、借金で身動きが取れなくなることの暗喩でもあったのです。お金で苦労し、ずっと独身のままだった原作者コッローディの実体験が投影されています。

■ディズニーが大人にも人気の理由

 原作から大きく変わったディズニーアニメとして、『リトル・マーメイド』(1989年)も挙げることができます。原作はアンデルセン童話の『人魚姫』です。人間の王子さまに恋をした人魚姫は、声を失っても王子さまの愛を得ることを願いますが、その想いは叶うことなく、最後には海の泡となって消えてしまう悲しい物語です。王子さまと晴れて結ばれるハッピーエンドの『リトル・マーメイド』とは、まるで味わいが異なります。

 ディズニーアニメでは、主人公たちはさまざまな試練を体験しますが、最後にはハッピーエンドが訪れることがお約束となっています。ハッピーエンドと決まっていれば、観る側は安心して楽しむことができます。でも、現実世界はディズニーアニメと違って、ハッピーエンドが待っているとは限りません。

 現実世界はままならないもの。仮に王子さま(みたいな人)と結ばれても、結婚後がさらに大変……。大人になれば、そのことを身に染みて覚えることになります。それゆえに、せめて映画の世界だけはハッピーエンドで終わることを、多くの人は望んでいるのではないでしょうか。大人たちも含め、ディズニー映画がますます人気を集めているのには、そんな理由があるのかもしれません。

(長野辰次)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください