超人・鳥山明のすごすぎる伝説4つ 勝手にやめられなくなった超ヒット作
マグミクス / 2021年11月23日 13時10分
■漫画家・鳥山明が生まれた意外な事情
漫画家の鳥山明先生といえば、いわずと知れた大ヒットメーカー。1984年に「週刊少年ジャンプ」で連載スタートした『ドラゴンボール』(以下、DB)は、単行本発行部数が世界累計2億6000万部以上という驚異的な数字を記録し、連載終了から26年経つ今も世界中に熱狂的なファンを持っています。
デザイナーとしては、「ドラクエ」シリーズのキャラクターデザインを手がけた鳥山先生。「鳥山キャラ」がなければ「ドラクエ」シリーズはここまでのビッグゲームにはならなかったのではと思えるほどに、世界観を決定づけました。この記事ではそんな超人・鳥山明先生のすごすぎる伝説をご紹介します。
●神様も絶賛の圧倒的画力
鳥山作品の魅力といえば、まずはなんといっても絵のうまさがあげられるでしょう。その画力は、プロたちの目からもズバ抜けていると評価されています。「マンガの神様」と呼ばれる手塚治虫先生も「鳥山明にはかなわんです」と語り、「ぼくの後継者」とまで呼んだとも言われています。
そんな鳥山先生ですから、さぞかし子供の頃からコツコツとマンガを描いてきたのかと思いきや、なんと初めてマンガを描いたのは23歳の時だったというから驚きです。しかもマンガ自体、子供の頃読んではいたものの、中学生くらいから大人になるまではずっと遠ざかっていたのだとか。漫画家ではなくイラストレーター志望で、高校卒業後はデザイン会社に勤めたという鳥山先生。では、その圧倒的な画力はどこで培われたのでしょう。
「週刊少年ジャンプ」で伝説のマンガ編集者と称された鳥嶋和彦氏は「基本的な絵の勉強をマンガではなくデザイン画などから学んでいるため、バランス感覚が優れている」と分析しています。マンガひと筋ではなかった体験こそが、画力に一役買っているようです。
●金欠が生んだ「漫画家・鳥山明」
鳥山先生が漫画家になったきっかけは、なんと金欠。デザイン会社を辞めて収入がなかった時、たまたま「週刊少年マガジン」の新人漫画家募集を知り、賞金50万ほしさに人生初のストーリーマンガを描きはじめたのだそうです。小さい頃の記憶をたよりに「マンガってこんなかんじかなぁ」と描いたという作品は残念ながら締切りに間に合わなかったものの、せっかく描いたのだからと賞金10万円で毎週マンガを募集していた「週刊少年ジャンプ」に応募。結局その時は落選しましたが、賞をとるまで描いてみようと意地になったのが、漫画家・鳥山明の始まりなのだそうです。
それから約3年で『Dr.スランプ』の連載がスタート。アニメ化もされ、「んちゃ!」「ばいちゃ!」などの「アラレ語」が流行するなど社会現象にまでなりました。スロースターターながら人気作家までのスピードはマッハの勢いだったのです。
ちなみに初期の『Dr.スランプ』カラー絵などに見られる独特の色使いも鳥山作品の人気を後押ししましたが、実はあれも金欠ゆえの発明。何色ものカラーインクを買う余裕がなかったため、24色セットの安いサインペンを買い、水で溶いた液を塗っていたのだそうです。
■ビッグになりすぎた『ドラゴンボール』で思わぬ事態勃発
●勝手にやめられないほどビッグになった『ドラゴンボール』
1995年に連載終了するも、いまだに世界中で人気の『DB』は、実は鳥山先生が『Dr.スランプ』の連載終了を申し入れた時に、「3か月後に新連載を始めるならやめてもいい」といわれて超特急で生みだした作品なのです。今となっては信じがたいことですが、連載開始当初はあまり人気が出ず、読者アンケートでも下位をウロウロしていました。
けれども物語がバトル重視になってくるとがぜん人気が急上昇。「天下一武道会編」で読者アンケート1位を獲得すると、そのまま連載終了まで首位を守り続けるという記録を打ち立てました。マンガからアニメ、ゲーム、グッズへと展開を広げ、さらに世界進出してワールドワイドな人気を獲得し、モンスター級の作品となった『DB』。それだけに、鳥山先生が連載を終了したくても勝手にはやめられなくなっていたそうです。いきなり連載終了すれば関連ビジネスを行っている各社の株価にも影響がでる、つまりは日本経済の問題となる……というわけで、関係各社の上層部による会議が重ねられ、ようやく連載終了にこぎつけたのだそうです。
ちなみに鳥山先生は、週に一度アシスタントにきてもらうだけで、ほぼひとりで描いていたそうです。たったひとりが手を止めることが日本経済を揺るがしかねないとは、『DB』がいかにすごいかが分かりますよね。
●「ドラクエ」キャラは「少年・鳥山明」が生んだ!?
鳥山先生がデザイナーとして手がけた「ドラクエ」キャラたちは、たとえ敵であってもかわいらしく、他ゲームとは一線を画す「ドラクエ」ワールドを造り上げました。数々のモンスターは、ゲームデザイナーの堀井雄二氏から渡されたラフ画をもとに完成させるのだそうですが、できあがったキャラクターがまったく別物になっていることもしばしばでした。
たとえば「ドラクエ」を象徴するモンスターのスライム。ラフにはいわゆるスライム状の絵に「ゼリー状のドロドロしたモンスター」とのコメントが添えられているのですが、完成形はおなじみの、しずくのような形のかわいいスライムでした。この世には存在しないモンスターたちを、どうしたらこんなに生き生きとした姿に作り出せるのでしょう?
実は鳥山先生は子供の頃、動物や鳥、魚の図鑑が大好きでボロボロになるまで読んでいたのだそうです。そして「貧乏でペットも飼えなかったから、欲しい動物は描いてました」「正しいデッサンが描けないから、マンガチックにしてごまかすんですよ」と話しています。幼い鳥山少年が図鑑からインプットしたさまざまな生き物が想像と結びついて、宝箱を開けたように、「ドラクエ」キャラとして飛び出してきたのかもしれませんね。
2023年にはデビューから45周年を迎える鳥山明先生。これからどんな鳥山ワールドとであえるのか、楽しみで仕方がありません。
(古屋啓子)
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