12月4日は「ティターンズ」結成の日。作中で露呈し続けた「組織崩壊の原因」とは?
マグミクス / 2021年12月4日 6時10分
■地球圏の動乱が生んだエリート組織
『機動戦士Zガンダム』の敵組織として登場した「ティターンズ」。地球出身のアースノイドで構成された「地球至上主義者」の集団で、宇宙に住むスペースノイドを弾圧します。しかし、その真の目的は別にあったのでした。
ティターンズの結成は宇宙世紀0083年12月4日のことです。その直前、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』で語られた「デラーズ・フリート」による「デラーズ紛争」があり、ジオン公国軍残党がいまだに脅威であることがわかったことが結成のきっかけでした。もちろん、この作品自体が後年に作られたつじつま合わせではあります。
こうしてジオン公国軍残党を掃討することを目的に作られたティターンズでしたが、その真の目的は違うところにありました。創設者であるジャミトフ・ハイマンはジオン残党のせん滅を口実に、自分の野望を叶えるためにティターンズを結成していたのです。その野望とは、地球の環境を再生することでした。皮肉にもそれは敵対することになる反地球連邦組織「A.E.U.G.通称エゥーゴ」と最終的な目的の面では一緒だったのです。
大きく違っていた点は、その目的のためにジャミトフは手段を選ばなかったこと。それゆえにティターンズは地球連邦政府のなかでの勢力拡大のため、実戦部隊のトップに強硬派のバスク・オムを置き、数々の非道な作戦を実行していきました。
また、ティターンズの兵士は一般将校より1階級上で、一般の軍律は通用しないと言って階級が上のブライト・ノアを集団暴行するなど、高いエリート意識ゆえの横暴な態度がしばしば描かれています。このほかにも、人質作戦や暗殺、民間施設の破壊といった軍組織としてはあるまじき行為。コロニーレーザーやG3ガス、核兵器の使用といった大量破壊兵器を平然と使用するなど、おおよそ国家の軍隊の行動として眉をひそめることを行っていました。
しかし、こういった行動のほとんどがバスク率いる一部の過激派の仕業だと言われています。ティターンズのなかにはエリートとして志の高い者もいる可能性がありました。例えば、ダカール駐留のティターンズ兵士には民間人に迷惑をかける連邦兵をたしなめたり、街中で戦闘を続ける自軍機を制止したりするなど、軍人としての矜持(きょうじ)を持つ者もいたからです。
情報操作により前述したような非道な行為を隠していったティターンズでしたが、宇宙世紀0087年11月6日のダカールの議場で、エゥーゴのクワトロ・バジーナことシャア・アズナブルの演説でそれが露見し、急速に地球連邦内での勢力を減少させてしまいます。
そして、宇宙世紀0088年1月25日に指導者であるジャミトフが暗殺され、エゥーゴだけでなくアクシズとの三つ巴の戦いが宇宙世紀0088年2月20日に勃発。ここで敗北したことで組織は瓦解することになりました。これが後に「グリプス戦役」と呼ばれる戦いです。
■ティターンズが失敗した要因は人材不足にあった?
ティターンズが開発を主導したモビルスーツ、ガンダムMk-II。画像は「HGUC 194 機動戦士Zガンダム ガンダムMk-II (ティターンズ仕様) 1/144スケール 色分け済みプラモデル」(BANDAI SPIRITS)
ティターンズが瓦解した要因は、ジャミトフの理想とバスクの行動がかみ合わなかったことにあります。
ジャミトフは悪人ではありますが、上に立つ者としての器量は持ち合わせていました。自分の乗り込んだ戦艦が被弾した際も、「私には構うな! ティターンズの艦隊員の心配をしろ!」と発言しています。また、富野由悠季監督の書いた小説版では、ティターンズ設立時に家族と離縁して迷惑が及ばないよう考慮していました。
この小説版ではTVアニメ版では不明瞭だったジャミトフの考え方がたびたび出てきます。TVアニメ版でもここまで描いていれば、ジャミトフの評価は多少なりとも変わっていたかもしれません。その行動は許せないものかもしれませんが、本質は地球再生を目的とした理想家だったのでしょう。
一方、バスクはまさしく暴力装置ともいうべき人物でした。徹底した地球至上主義者であるだけでなく、一般市民の大量虐殺を平然とこなし、射線上の友軍を顧みず敵もろとも攻撃する、自身の作戦に意見した部下を殴り飛ばすことまであります。徹底した悪役として描かれていました。
連邦議会の懐柔など、ジャミトフは政治家としては有能でしたが、それに専念するためにも片腕となる有能な軍人が必要だったのでしょう。それがバスクというわけです。バスクはジャミトフの期待に応えるだけの戦果をあげますが、その行き過ぎた過激な行動が長期的な目で見ればティターンズに悪影響を及ぼします。
その結果、バスクへのけん制も兼ねて、危険だとわかっていながらもジャミトフはパプテマス・シロッコを重用することになりました。血判状を差し出すというシロッコの芝居がかった行動に注意を払っていたジャミトフでしたが、結果的に暗殺されて命を落としてしまいます。
その行動をうかつと思う人も多いのですが、シロッコも当初の目的はハマーン・カーンの暗殺で、寸前まで両者の利害は一致していました。ジャミトフ最大の誤算は会談場へのシャアの乱入、そしてその結果シロッコとふたりっきりになってしまったことでしょう。
こう振り返ってみると、ティターンズの組織崩壊の要因は、急速に勢力を拡大しながらも、責任ある立場に席を持つ人物の少なさ。つまり人材不足だったのでしょう。物語終盤でジェリド・メサを側近にしたことも、バスクやシロッコが信用できないことからの行動だったのでしょうが、一介のパイロットを傍に置くほど人材がいなかったとも考えられます。
内に秘めた野心の成就のため、ティターンズを結成したジャミトフでしたが、結果的にその目的を理解できないバスクの行動が組織崩壊のきっかけを作ってしまいました。そして、ジャミトフの思惑を知りながらもそれを利用したシロッコ。心から信用できる同志がいなかったことがジャミトフ最大の敗因だったのかもしれません。
(加々美利治)
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