最終的にどちらが勝った? 誕生50周年の『ミラーマン』と奇妙な因縁で結ばれたヒーロー
マグミクス / 2021年12月5日 6時10分
![最終的にどちらが勝った? 誕生50周年の『ミラーマン』と奇妙な因縁で結ばれたヒーロー](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_70171_0-small.jpg)
■円谷プロが新路線を目指した名作
本日2021年12月5日は、半世紀前の1971年にフジテレビで特撮ヒーロー番組『ミラーマン』が放送開始した日。つまり、2021年は放送50周年の節目になります。
『ミラーマン』は『ウルトラマン』をはじめとする円谷プロが制作した巨大ヒーロー特撮番組。当時の子供たちの人気も高く、後述するようにリメイク作品も複数あるので比較的、知名度の高いヒーローのひとりでしょう。しかし、TV放送までには紆余曲折がありました。
もともと本作の企画は1969年に円谷プロを退社し、その後は沖縄県に帰郷した脚本家の金城哲夫さんが置き土産として残したものだったそうです。それから本格的なTV番組として企画されていくのですが、その間に小学館の学習雑誌などの児童誌で本編とは異なるデザインのミラーマンが活躍するマンガが連載され、そのデザインのソフビ人形がブルマァクで発売されるなど、本作の知名度を上げることに貢献していました。
余談ですが、このマンガ版ミラーマンのデザインは、後のリメイクとなるビデオ作品『ミラーマンREFLEX(ミラーマンリフレックス)』(2006年)や、劇場版『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(2010年)に登場したミラーナイトに活かされています。
その後、円谷プロは在京5局及び系列局に本作を売り込みます。一度は『巨人の星』の後番組に決まりかかるも実現には至らず、原作者の許諾が下りなくて製作中止となったアニメ作品『長くつ下のピッピ』の代わりとして、フジテレビでの放送が決まりました。奇しくも、このふたつの放送枠のメインスポンサーは大塚製薬グループでした。
こうして放送開始が決まった本作は、同じ時期の円谷プロ作品『帰ってきたウルトラマン』との差別化を図るため、子供向けながらもドラマ作りに重点を置いたシリアスな作風を目指して作られます。そして、「ウルトラシリーズではやらなかったことをやる」ということを念頭に置いて世界観が構築されました。
ウルトラシリーズのような戦闘的な防衛チームでなく、兵器を持たない科学者たちの専門チーム「SGM」を生み出し、主人公である鏡京太郎はチームの一員でなく新聞社のカメラマンという設定になります。この他にもインベーダーが作品全体を通しての敵としてレギュラーに据えられたり、同じ怪獣が何度も出たりする点も、ウルトラシリーズとの差別化のためだったそうです。
こうして円谷プロの意欲作として放送開始された『ミラーマン』ですが、思わぬライバルとの戦いが待ち受けていました。
■因縁の同門対決だった二大ヒーロー番組
ウルトラシリーズの多くのスタッフが手掛けていた『シルバー仮面』。画像は「放送開始45周年記念企画 甦るヒーローライブラリー 第24集 シルバー仮面 Blu-ray Vol.2」(TCエンタテインメント)
『ミラーマン』最大のライバルとなったのが、TBSで1週間前に放送を開始した特撮ヒーロー作品の『シルバー仮面』でした。皮肉にも、両番組ともこれまでにないシリアス路線の特撮ヒーロー番組として企画された、兄弟のような存在だったのです。
もともとTBSの日曜日19時からの30分枠は、「タケダアワー」と呼ばれる「ウルトラシリーズ」が放送されていた時間帯でした。円谷プロにとって古巣とも呼べる枠で、しかも『シルバー仮面』のスタッフには、かつてウルトラシリーズを一緒に製作した人も多くいたのです。
ウルトラシリーズ終了後、タケダアワーはさまざまな作品を放送してきました。円谷プロは『ウルトラセブン』の後番組『怪奇大作戦』を最後に枠から撤退しています。その後はウルトラシリーズの一作である『キャプテンウルトラ』を製作していた縁で、東映の特撮時代劇『妖術武芸帳』を放送するも打ち切りとなりました。しかし、穴埋めで製作したスポコンものの『柔道一直線』が予想外のヒットとなり、同じくスポコンものの『ガッツジュン』を経て、ふたたび特撮ものである『シルバー仮面』に戻ってきたのでした。
一方の『ミラーマン』も、前番組がスポコンアニメの代表作ともいえる『アタックNo.1』で、そのころからフジテレビは激しい視聴率争いを続けていました。しかも、フジテレビが大塚製薬、TBSは武田薬品と、スポンサー同士も同系列のライバル関係だったのです。さらに、この放送枠には子供向けだけでなく、85年まで続いたNET (現在のテレビ朝日)の長寿番組『アップダウンクイズ』もありました。
おまけに、不思議なことに『シルバー仮面』の主人公・春日光二役の柴俊夫さんは『ミラーマン』のパイロット版で主人公を演じており、逆に『ミラーマン』の主人公を演じた石田信之さんには『シルバー仮面』の出演依頼がきていたそうです。それだけヒーローとしての資質を期待されたふたりだったということでしょう。そして、両方のスタッフともに、この奇妙な因縁のあるライバル関係を意識して番組制作にあたっていたことを、後年に語っていました。
結果的に、視聴率と放送話数を見れば『ミラーマン』が勝利をおさめました。しかし、番組強化案で途中からSGMが武装化して普通の防衛隊になり、ミラーマンもインベーダーに爆弾を埋め込まれてカラータイマーを取り付けるようになるなど、当初の目指していた方向性からズレてしまったことは否めません。
後番組で企画されていた『ミラーマン兄弟』が実現しなかったことからも、ライバル対決は実質的には痛み分けだったのでしょう。もしも、それぞれが別の時間枠で放送されていれば、お互いに最初に目指したシリアス路線を初志貫徹できたかもしれません。
後年、再放送に恵まれたこともあって、『シルバー仮面』を見ていた子供たちも『ミラーマン』を見ることができました。もちろん、『シルバー仮面』も再放送で見る機会がありましたので、本放送当時に見られたかどうかくらいの差でしかないと思います。それだけ『ミラーマン』も『シルバー仮面』もファンに愛された作品であり、後年にリメイク作品が作られるなど印象的な作品だったということでしょう。
(加々美利治)
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