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巨匠・松本零士の「宇宙バカ一代」伝説 弟は工学博士で、リアル「宇宙兄弟」だった?

マグミクス / 2021年12月11日 15時10分

巨匠・松本零士の「宇宙バカ一代」伝説 弟は工学博士で、リアル「宇宙兄弟」だった?

■少年時代に宇宙や「ワープ」の概念を学んだ、1冊の本

『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』など、宇宙を舞台にした数々のSFマンガで私たちの目を広大な世界に向けてくれた松本零士先生。作品群の魅力はいまだ色あせることなく、代表作『銀河鉄道999』は連載開始から45年目の2022年に、本格ミュージカル作品として上演されることも発表されています。

 そんな宇宙マンガの巨匠・松本先生は、自身も子どもの頃から宇宙が大好きで、「火星や金星、ブラックホールを探検するような宇宙に関わるマンガばかり描いていた」というほどのめり込んでいたそうです。かつて、空手に一生を捧げた大山倍達氏の生涯が『空手バカ一代』というマンガに描かれましたが、それにならい最上級の敬意をもって「宇宙バカ一代」と言いたいほど、宇宙を愛してやまない漫画家なのです。この記事では松本先生の宇宙愛伝説の一端をご紹介しましょう。

●小学生ですでに宇宙の総概念を理解していた?

 父が陸軍のパイロットだったため、幼い頃から大空に興味をもっていたという松本先生。自分も空を駆け巡りたいという思いがやがて宇宙へと広がり、大いなる憧れをもって夜空の星を見上げていたそうです。でも、ぼんやりと眺めていただけではないのが、すごいところ。なんとお祖父さんの老眼鏡を組み合わせた自作の望遠鏡で、本格的な宇宙観測に励んでいたのです。

 そんな松本先生は小学6年生のとき、運命の1冊とも呼ぶべき本と出会います。それはアインシュタインに直接教えを受けた宇宙物理学者の荒木俊馬博士が、子ども向けに著した天文書「大宇宙の旅」。後年同書が復刻された際に、「この本に巡り会えなかったら、確実に自分の歩む道は違ったものになっていただろう」との言葉を寄せたように、松本先生の人生を決める1冊となりました。この本で松本少年は宇宙の総概念を学び、後に作品にも登場する「ワープ」の概念まで、すでに理解していたのだそうです。

 ちなみにこの本は、ひとりの少年が光の精や彗星と大宇宙を旅する物語なのですが、その少年の名前はなんと「星野」くん。そう、『銀河鉄道999』の主人公・星野鉄郎と同じ苗字なのです。松本先生自身も復刻版を読んで気づき驚いたそうですが、無意識に同じ名前にしてしまうほど、先生の心に染みこんでいた1冊なのでしょう。

■東大の研究室に忍び込むほどの宇宙好き

『宇宙海賊キャプテンハーロック』の主人公ハーロックは数々の松本作品に登場する。画像は電子版『宇宙海賊キャプテンハーロック』第1巻(秋田書店)

●「宇宙開発の父」につかまった!?

 宇宙と同時にマンガも大好きで、5才の頃からマンガを描いていたという松本先生は、高校1年生の時に漫画家デビューします。そして高校を卒業すると、出版社に請われて九州から上京しました。

 文京区本郷の下宿先のすぐそばには、東京大学がありました。マンガを描きつつも宇宙への興味を抑えられない松本先生は、学生のふりをして大学内をうろうろし、あろうことか「日本の宇宙開発・ロケット開発の父」と称される糸川英夫教授の研究室にも勝手に入り込んでいたのだそうです。

 そこで糸川教授本人につかまってしまったものの、宇宙への熱い思いを語ったところ、「これからは事前に言ってから入ってくれ」と入室の許可を得たのだとか。「一念岩をも通す」のことわざのように、子どもの頃からの宇宙への熱意はその道の第一人者の心をも動かしてしまったのです。松本先生によると糸川教授はその後、日本の終戦直前までの機械工学の進化や実験についての話などを丁寧に教えてくれたそうです。

●松本ブラザーズはリアル「宇宙兄弟」

 漫画家として名を成したものの、糸川教授の研究室に忍びこんだことからもうかがえるように、本当は機械工学の道に進みたかった松本先生。けれども家が貧窮していたために、当時すでにデビューしていたマンガの道で家族を養うべく、大学進学をあきらめたのだそうです。その際松本先生は両親に「弟だけは進学させてくれ」と頼み、弟の將(すすむ)氏はやがて兄の思いを受けて工学博士となり、ロケット開発にも携わるようになりました。

 その後も松本先生は作品のなかの物理的な理論を將氏に確認してもらい、將氏もまた、深海艇などの構造上のアイデアを松本先生に求めるなど、それぞれの道に進んだからこその兄弟タッグが生まれました。

 松本先生が「私と弟は兄弟分業で、私のかなわなかった夢の半分は、弟がやってくれました」というように、ふたりはまさにリアル「宇宙兄弟」なのです。

●たとえ片道切符でも宇宙にいきたい

 御年83歳の松本先生の究極の夢は、宇宙に行って自分の目で地球を見ること。「片道切符しかなくてもかまいません」「それを最後の思い出にして、あの世に行きたい」とまで言うほど熱望しているのです。でも、それが最後の願いであるはずがありません。松本先生はこんな発言もしていました。

「ある方向からだけ描いた絵でも、裏側まで知っている人間が描いた絵と、そうじゃない絵というのは見抜ける」「この目で見ると、描く地球の雰囲気が変わると思う」「見れば、もう少しましな地球が描けるはず」……もう、描く気満々です。

 宇宙から地球を見た時、松本零士先生の新たなマンガ人生が始まりそうですね。

(古屋啓子)

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