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『鬼滅の刃』伊之助はなぜ愛おしいのか? たぐいまれな「素直力」

マグミクス / 2021年12月18日 15時10分

『鬼滅の刃』伊之助はなぜ愛おしいのか? たぐいまれな「素直力」

■強い=偉い! 徐々に人の心を知った伊之助が発揮する「素直力」!

 TVアニメ「遊郭編」も始まり、未だ人気の衰えを知らぬ『鬼滅の刃』(原作:吾峠呼世晴)。この「遊郭編」では、野生児・嘴平伊之助の活躍が見られるのがまたうれしいところです。

 『鬼滅の刃』の登場人物は皆、炭治郎はもとより柱や、時には鬼ですらチャーミングな一面をのぞかせます。そうした『鬼滅』ワールドの住民のなかでも異彩を放つのが伊之助です。猪に育てられた野生児であり、常識を知らず、乱暴で口汚い彼ですが、それでいてどうしようもなく愛おしく感じさせる魅力があります。一体、伊之助の何がこんなにも私たちをして愛おしくさせているのでしょう。

●「強い=偉い」 この単純さがむしろ愛おしい

 伊之助は『鬼滅の刃』きっての「素直さ」の持ち主でもあります。なにせ「猪突猛進!」と言いながら猪突猛進してくるのですから。猪に育てられた彼にとっては、「生き残ること」が何よりも重要であり、それゆえに「強い=偉い」というシンプルな価値観が備わっています。だからこそ、自分より強い者に対する反応も実に素直なものです。

 たとえば那多蜘蛛山で水柱・冨岡義勇に助けられた際は「すげぇすげぇすげぇ!!」と感動し、猗窩座と炎柱・煉獄杏寿郎の死闘の際も普段の勝気は消え失せ、実に素直に賞賛します。そしてこの「強さ」に対する素直さがいよいよ極まったのが治療中の「ゴメンネ。弱クッテ」発言と言えるでしょう。思わず抱きしめたくなるいじらしさでした。

●「ホワホワ」に対する戸惑いもまた素直!

 藤の花の家紋を持つ家でもてなしを受けた際、伊之助は初めて触れた優しさに「ホワホワ」してしまいます。しかし胸に去来したこの「ホワホワ」なるものをどう扱えば良いのかわからずただ悶絶。適当にやりすごさず、しっかり向き合おうとするところがまた素直で愛おしいのです。また炭治郎に助けられた際は伊之助屈指の名言「これ以上俺をホワホワさすんじゃねぇぇ!!」が飛び出します。伊之助は戸惑うときもまた全力。こうした経験を経て、彼は徐々にではありますが人間の心の機微を理解していくのです。

●猪の被り物を脱げば…友達思いの素直な男の子

 鬼殺隊としての日々のなか人の心にふれ、仲間がいかにかけがえのないものかを伊之助は知ってしまいます。だからこそ、その仲間を喪ったときの哀しみは凄まじく、猪の被り物からたくさんの涙をあふれさせました。そして最終決戦において、目の前で「一緒に飯を食った仲間」が殺されたとき、その哀しみと怒りは頂点に達し「百万回死んで償え!!」と戦闘中だというのに大粒の涙を流しながら斬りかかっていくのです。決して相容れぬ野生児に思えた伊之助ですが、実は誰よりも友達を大切に想える「男の子」でもありました。

 ここまで伊之助の愛おしさについて「素直さ」を軸に解説してきました。強さに対しても、優しさに対しても、命に対しても、それぞれまっすぐ全力で向き合う彼だからこそ、私たちの心に猪突猛進してくるのかもしれません。

(片野)

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