上坂すみれが「パーフェクトな声優」である理由 ロシア語の「子守唄」はアドリブだった！

■ロシア語という絶対的な個性

　12月19日は声優・上坂すみれ（うえさか・すみれ）さんの誕生日です。2012年のTVアニメ『パパのいうことを聞きなさい！』のヒロイン・小鳥遊空役で本格的な声優活動を開始。その後も数多くの作品で主役級のキャラクターを演じています。また、ロシア語やミリタリーについても堪能で、しばしば専門知識を生かした演技や企画で活躍を見せています。

　上坂さんと聞いて真っ先に思い出すのが、『ガールズ＆パンツァー』のノンナ役という方も多いのではないでしょうか。金元寿子さん演じるカチューシャと共に歌い上げた「カチューシャ Sung by カチューシャ＆ノンナ」も見事なものでしたが、9話でカチューシャを寝かしつけるために歌った「コサックの子守唄」のネイティブなロシア語に心底驚かされたのを思い出します。というよりも、最初に聴いた時は筆者自身、ロシア語をほとんど耳にしたことがなく、後に原曲と聴き比べ「この上坂すみれって声優さん、ロシア語上手すぎないか……」と驚愕したのが本当のところです。

　しかも台本では元々「子守唄」としか書かれておらず、アドリブで歌っていたことも明かされています。この出来事は上坂すみれさんの声優としての実力とロシア語に対する造詣の深さを多くの人に知らしめました。次々と高い実力を持つ新人が現れ、常に厳しい状況にさらされている女性声優のなかで、ロシア語という容易に真似のできない絶対的な個性を持っていたことは、上坂さんの活躍にとって大きな武器となっているのは間違いないでしょう。

　そんな上坂さんはデビューしたての頃は上智大学外国部学部に在籍する学生で、ロシア語を専攻していました。声優やタレントとしての仕事、レッスン、学業を両立しながら多忙な日々を送りますが、2012年には上智大学学業優秀賞を受賞するなど優秀な成績を修めています。2014年には大学を卒業していますが、まだ在学中の2013年には『アウトブレイク・カンパニー』のエルビア・ハーナイマン役、『GJ部』の神無月環役、『げんしけん 二代目』の吉武莉華役、『波打ち際のむろみさん』の隅田さん役、『ファンタジスタドール』の羽月まない役と実に5つのTVアニメ作品でメイン級のキャラクターを演じています。殺人的なスケジュールをこなすタフネスさも、一流の声優として活躍するには重要なのでしょう。

■歌手としても精力的に活動

『POP TEAM EPIC 【期間限定アニメ盤】』（キングレコード）

　上坂さんは歌手としても顕著な活躍を見せています。2013年に『波打際のむろみさん』のオープニングテーマ「七つの海よりキミの海」でアーティストとしてデビューしたのを皮切りに、数多くの楽曲を発表。特に2018年のTVアニメ『ポプテピピック』のオープニングに起用された「POP TEAM EPIC」は、2月12日付けのオリコン週間シングルランランキングで1.0万枚を売り上げデビュー以来の最高記録を樹立。デジタルランキングでは2.6万ダウンロードで2位にランクインし、当時のアニメ楽曲の最高ダウンロード数を記録しています。

　また、キャラクターソングについてはデビュー直後から数多く担当しており、元々歌唱力は高く評価されていました。アプリ『アイドルマスターシンデレラガールズ』ではアナスタシア役を務め、多くのファンを魅了しました。積極的に活動していたライブもコロナ禍で一時中断していましたが、2021年10月末に再開しており、今後の状況次第ではありますが、生歌を聴く機会も増えていきそうな気配です。

　ロシアへの愛を公言し、関連するイベントにも出演している上坂さん。ミリタリーにも詳しく、BT-5をはじめとする軽戦車（快速戦車）シリーズが好きと公言しています。ラジオやイベントでもしばしばロシア語の表現をファンと共に用いており、ロシアと上坂すみれさんは切っても切れない関係にあります。この唯一無二の武器に加えて声優としての演技力と歌唱力、さらにトーク力まで備えたパーフェクトな声優である上坂さんの活躍は、これからもまだまだ続いていくことでしょう。

（早川清一朗）