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『鬼滅の刃』原作とアニメの「ナレーション」を比較 鱗滝さんが代弁する他は?

マグミクス / 2021年12月26日 17時10分

『鬼滅の刃』原作とアニメの「ナレーション」を比較 鱗滝さんが代弁する他は?

■アニメで気になる「ナレーション」の表現

 吾峠呼世晴先生のマンガが原作のアニメ『鬼滅の刃』。2021年12月に「遊郭編」の放送が始まり、毎週の放送が注目されています。『鬼滅の刃』がTVアニメ放送によって社会現象になるまでの人気を得たのは、原作に忠実な映像化もひとつの理由でした。

 とはいえ当然ながら、マンガとアニメでは表現方法がさまざまな点で異なります。例えば、マンガにおける「ナレーション」は一般的に矩形の枠線内に状況の説明が書かれます。アニメ化される場合、ナレーションを担当する声優が「ナレーター」としてこれを読み上げることが多いですが、『鬼滅の刃』にはナレーションを専任で担当する声優はいません。

 では、アニメ『鬼滅の刃』ではマンガのナレーションをどのように表現しているのでしょう。ひとつは、ナレーションはカットし、映像で見せるという方法です。ufotableによる、劇場アニメ並みにハイクオリティな作画がこの手法を実現しています。そのほかの手法がとられているシーンを見ていきます。

●キャラが代弁する

 アニメ第3話「錆兎と真菰」では、冒頭で鱗滝左近次が「鬼殺隊」について語ります。マンガ原作を見ると、明確に鱗滝のセリフもしくは「心の声」であるようには描かれていません。

 ですが、物語の流れから、鬼殺隊について詳しく知る鱗滝が語ることに違和感はありません。このほかにも、鱗滝役の声優・大塚芳忠さんは、『鬼滅の刃』関連のPVでナレーションを担当しています。『鬼滅の刃』のナレーション、と言えば大塚芳忠さんというイメージが強いかもしれません。

 また、那田蜘蛛山の戦いで、ナレーションを蟲柱・胡蝶しのぶが代弁したシーンがあります。下弦の伍・累と戦う炭治郎は、命の危機に瀕します。自らの「死」を意識した炭治郎は、家族との思い出を見、父の舞う「ヒノカミ神楽」を思い出します。炭治郎は、「ヒノカミ神楽」を技に応用することで窮地を切り抜けます。マンガでは、走馬灯についてこのようにナレーションが入ります。

「死の直前に人が走馬灯を見る理由は 一説によると今までの経験や記憶の中から迫りくる“死”を回避する方法を探しているのだという」

 アニメでは、走馬灯を見る理由についてしのぶが語ります。蜘蛛の鬼の毒で倒れた善逸のもとに、しのぶが現れます。うわごとのように、善逸は「今、じいちゃんが出てきて、あきらめるなって」と口にします。それを聞いたしのぶが、「あぁ~それは走馬灯ですね」と、原作と同様の内容を善逸に対して説明する、という形で違和感なく表現しています。

●アニメだからできる「キャラの声がかぶさる」

 柱合会議で、鱗滝からの手紙をお館様の5つ子、白髮の女の子が「一部抜粋して」読み上げます。禰豆子が人を殺せば自分と義勇が命をかけて責任をとる、という内容です。

 原作では白髪の女の子が最後まで読み上げますが、アニメならではの表現がとられています。

「”炭治郎が鬼の妹と共にあることをどうかお許しください”」

 そして、次から鱗滝の声が重なっていきます。

「”禰豆子は強靱な精神力で人としての理性を保っています”」

 ここまでは、白髮の女の子と鱗滝が声を合わせます。「”飢餓状態であっても……」からは、鱗滝の声に切り替わります。場面も鱗滝が夕焼けの山に立っている姿に替わります。鱗滝が本当に炭治郎と禰豆子を思いやっている気持ちが伝わってきます。最後には、再び場面はお館様の屋敷に戻り、白髪の女の子が「鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫びいたします」と読み上げ、炭治郎は義勇の姿を見るのです。

 いわば、白髮の女の子が作中の「ナレーター」にあたり、もちろん炭治郎に鱗滝の声は聞こえません。しかし、視聴者の視点ではより深く心を揺さぶられる表現となっています。

●「遊郭編」ではユニークな表現

「遊郭編」では、これまでとは少し違うナレーションの使い方がされました。例えば、第2話「遊郭潜入」で女装した炭治郎が鯉夏花魁に嘘をつく時です。歯を食いしばり、白目をむきそうになる炭治郎の「変顔」の理由を説明するため、原作ではこのようにナレーションが入ります。

「正直者の炭治郎は嘘をつく時 普通の顔ができない」

 これは動きで表現するのも困難なのでナレーションが必要です。鱗滝が説明するのも、ここではそぐいません。では、炭治郎が「心の声」として説明するのか……と思いきや、ユニークな表現がとられました。炭治郎の変顔が白黒になり、フィルム映画のように回り出します。そしてレトロな字体でテロップが登場します。まるで、戦前の無声映画のような演出です。

 また、「遊郭編」では音柱・宇髄天元が使う「ムキムキねずみ」が登場します。原作では、こちらも四角の枠でナレーションが入りました。

「天元の使いである “忍獣”ムキムキねずみ 特別な訓練を受けており極めて知能が高い 御覧の通り力も強い 一匹で刀一本持ち上げられる」

 この説明は、どうやってアニメで表現されるのか、今後の放送が特に楽しみなシーンです。

※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記

(マグミクス編集部)

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