25年前の『ガンダムX』視聴を薦めたい理由 放送短縮の憂き目に遭うも、見事な完成度
マグミクス / 2021年12月28日 18時10分
![25年前の『ガンダムX』視聴を薦めたい理由 放送短縮の憂き目に遭うも、見事な完成度](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_73384_0-small.jpg)
■『GX』は面白い。当時からその思いは変わらない
今からちょうど25年前の1996年12月28日は、『機動新世紀ガンダムX』の最終回が放送された日です。本作は1993年から放送開始された『機動戦士Vガンダム』『機動武闘伝Gガンダム』『新機動戦記ガンダムW』に続いてTVで放送された、1990年代半ばを飾るガンダムシリーズの最終作として、人類の革新「ニュータイプ」に新たな解釈をもたらしました。
しかし関東圏では放送途中から放送が早朝枠に移動され、放送期間も当初予定の4クールから3クールへと短縮されたことでも知られています。
『ガンダムX』の放送開始直前、筆者を含むガンダムのファンは、「次のガンダムはどのような作品なのだろう」と興味深く見守っていました。同じ時間枠で放送され、ガンダムに新機軸をもたらした『機動武闘伝Gガンダム』のインパクトと、多くの女性ファンを獲得した『新機動戦記ガンダムW』のエネルギーは絶大で、新作である『ガンダムX』は次に何をもたらしてくれるのかと、大きな期待がかかっていたのです。
そうして放送された作品は、戦争により荒廃した世界、今でいうポスト・アプカリプス作品として、独特な世界観で展開されるロードムービーでした。
崩壊した世界をたくましく生きる主人公のガロード・ランと、人類に残された唯一のニュータイプとされるティファ・ディールの心の交流。そして地上戦艦フリーデンのクルーたちが織り成す人間模様。ふたつの流れを軸として展開されるストーリーは、一見地味ではあるものの決して他の作品に劣るところはありませんでした。
また、ROMANTIC MODEが歌い上げた初期オープニングの「DREAMS」、後期オープニングの「Resolution」は、ともに名曲として知られています。特に「DREAMS」は当時50万枚以上のシングルCDを売り上げるほどの人気を誇りました。
エンディングに関しては次回予告とエンディングテーマが同時に流れるという独特の演出が取り入れられました。1話から13話、最終回は「HUMAN TOUCH」。14話から26話は「HUMAN TOUCH(日本語版)」。27話から38話までは「銀色Horizon」と、いずれもしっとりとした印象の名曲に合わせてナレーションが入り、最後に次回タイトルがセリフとして語られる、非常に印象的なものでした。
特に、キャッチコピーにも使われた「月は出ているか?」、第3話の「私の愛馬は狂暴です」、第7話の「ガンダム、売るよ!」などは、次回のストーリーに強い期待を抱かせるインパクトを与えていました。
■なぜ放送が短縮されたのか?
『ガンダムX』物語後半で主人公機として活躍した「ガンダムダブルエックス」。画像は「HGAW 1/144 GX-9901-DX ガンダムダブルエックス」(BANDAI SPIRITS)
しかし、『ガンダムX』は当初予定の4クールから、3クールへと放送が短縮されています。しかも関東地方の放送枠が金曜日の17時から土曜早朝の6時へと移動させられるという、ガンダムシリーズにおいて前代未聞の出来事も発生しました。なお地方ではもとの時間帯のままの放送だったため、メインの放送局であるテレビ朝日のみが遅れて放送する逆転現象も発生しています。
なぜ放送が短縮されたのでしょうか。現実問題として、当時のガンダムシリーズは視聴率としてはそれほど良くはなく、『ガンダムX』も初回こそ6.2%だったものの、時間枠移動の影響もあり平均視聴率は2.75%と低迷しています。
初代から『ZZ』までのシリーズ作が放送されていた時期はまだ家庭用ビデオデッキの普及率が低かったのですが、『V』から『X』の時期には一般家庭にも普及が進んでおり、視聴者の年齢上昇に伴い夕方の外出も多くなるため、視聴率の低下は避けられなかったと考えられます。
また、当時のテレビ朝日は外資とベンチャー企業による敵対的買収を受け混乱していた時期にあたり、この問題が『ガンダムX』を直撃したとも言われています。
ただし、シリーズ構成と全話の脚本を担当した川崎ヒロユキ氏によると、半年分の物語を3か月分にまとめ、完結まで持っていくことには成功したそうです。本作ならではのニュータイプ描写と解釈も最後まで描かれ、生き残ったキャラクターたちが次の人生に向かって歩みだす部分もきちんと描写されていました。
混乱こそあったものの、ガンダムシリーズにふさわしいクオリティが保たれていることは間違いありません。もし機会があれば、ぜひ見てほしいと自信を持って推薦できる作品です。
(早川清一朗)
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