『劇場版 呪術廻戦 0』ネタバレなしレビュー 原作ではパッとしないキャラにも見せ場！

■『呪術』ファンも新規の観客も楽しめる！

　2021年12月24日（金）に、映画『劇場版 呪術廻戦 0』が全国380館で公開されました。東京・TOHO渋谷の朝イチの回（8：20）は、平日ながらも満席で、物販コーナーも大行列になるなどすさまじい熱気でした。

『劇場版 呪術廻戦 0』は本編の『呪術廻戦』とは異なり、呪術高専1年の乙骨憂太（本編では2年）と彼に取り憑（つ）いた特級過呪怨霊にして憂太の幼なじみである折本里香を中心とした物語です。すべての原点であり正式な前日譚にあたるエピソードを映像化した同作の大きな見どころを、「ネタバレなし」で紹介したいと思います。

『劇場版 呪術廻戦 0』の原作にあたる『東京都立呪術高等専門学校』は、「ジャンプGIGA」で2017 vol.1から2017 vol.4まで連載されていたマンガで、同作が好評を博したことでジャンプ本誌での『呪術廻戦』が始まっています。

　本編の『呪術廻戦』は2020年後半に放送開始したTVアニメが好評を博し、原作を含めた『呪術廻戦』全体の人気がさらに一気に跳ね上がっています。このような盛り上がりのなかで、独立した作品として楽しめる上に「シリーズの原点」として特別視されている『呪術廻戦 0』が満を持して劇場版として登場した形になります。

　公開された『劇場版 呪術廻戦 0』は、4話（単行本だと1巻）だけで「友情・努力・勝利」、それに愛の物語を詰め込んだ原作『呪術廻戦 0』を過不足なく映画化した素晴らしい作品でした。原作本編やTVアニメは追っているけれど『呪術廻戦 0』は未読……という人でも、新鮮に楽しめるでしょう。

■緒方恵美さん、花澤香菜さんの見事すぎる芝居

　まず、何よりも今回の映画から参戦した乙骨憂太役の緒方恵美さん、折本里香役の花澤香菜さんの演技が本作のクオリティを高めていたと思います。原作者の芥見下々先生が最初に名前を挙げてオファーが来たという緒方さんは、「人と違う境遇や、突如放り込まれた異常な環境に悩む青少年」をやらせたら右に出る人はいない声優です。だんだんと強者として覚醒していく乙骨の変化の振れ幅も見事で、今後本編で登場する乙骨をどう演じるのかも楽しみです。

　花澤さんは、かわいらしいけど「里香と憂太は結婚するの！」と宣言するおませな一面もある生前の里香と、最強の呪霊と化した里香の禍々しい声の演じ分けが素晴らしいです。怨霊となって6年経っても内面は幼少期のままという解釈で、また声帯や口の形が違うために昔のように上手く喋れないという点も考慮された繊細な演技で、恐ろしくも可愛らしさを伴った、原作よりも感情移入しやすい「ヒロイン」として里香を体現しています。

　詳しくは書けませんが、終盤の乙骨のとあるセリフと行為によって里香が覚醒する場面は、緒方さんの色気ある演技と花澤さんの圧巻の絶叫によって、本作でもっとも映画的なカタルシスが爆発した名シーンになっていました。

　また、原作のシーンはほぼ完全再現したうえで、バトルシーンを中心にオリジナルの場面が大幅に増えていたのもうれしい部分です。TVアニメと同じく制作を担当したMAPPAが本領を発揮したダイナミックな戦闘描写だけでも、チケット代を払う価値はあるでしょう。

　また、夏油傑一派による百鬼夜行の場面では、原作には登場していなかった七海、日下部、家入、京都高の面々も登場して戦闘を披露しています。原作ではパッとしない猪野にまで、カッコイイ場面が用意されていました。「前日譚」なら本来はいたはずのキャラをきちんと登場させ、無理なく短い時間で見せ場を作る手腕も見事です。

　原作本編を踏まえた五条悟と夏油の過去と因縁を示唆する場面もいくつか追加されており、アニメ2期で描かれるであろう内容も予感させます。

　ファンにはたまらない内容になっているのはもちろんのこと、予備知識ゼロの人がいきなり見ても、自分の生き方に悩む少年の成長譚、幼なじみへの愛、特殊設定の学園ファンタジーと青春要素、圧巻の作画による幻想的映像美と大迫力のバトルなど、さまざまな要素が詰まった娯楽作として楽しめる作品です。友達や家族に『呪術廻戦』を布教したい人は、この映画から見せるのがベストかもしれません。

　見どころたっぷりな『劇場版 呪術廻戦 0』は、公開後しばらくはどこの映画館も賑わいそうな人気ぶりです。気になっている人は、早めにチケットを押さえて劇場に見に行くことをおすすめします。

（マグミクス編集部）