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1982年に起こった「月曜19時アニメ」の攻防 子供たちは「裏番組」の存在に困惑!

マグミクス / 2022年1月3日 17時10分

1982年に起こった「月曜19時アニメ」の攻防 子供たちは「裏番組」の存在に困惑!

■かつて夕方から夜は「アニメの時間」だった

 1980年代半ばまで、アニメは視聴率のドル箱でした。今となっては考えられませんが、19時以降放送のアニメなら、20%超えは当たり前。20%を切ったらアニメじゃない。そのように言われていた時代もあったのです。

 なぜ当時はアニメが高い視聴率を誇ったのか。大きな理由としては、日本の人口ボリュームで多数を占める団塊ジュニア世代が子供の時期だったため、視聴者として大きな存在感を示していたことが挙げられます。家庭用のビデオデッキもまだ普及しておらず、アニメはTVで直接見るのが当たり前だった点も大きいでしょう。

 また、子供たちの塾通いや習い事も今ほど盛んではなく、夕方は家にいることが多い時代でした。子供たちが食卓につきながら、アニメを見る環境が完ぺきに整っていたのです。

 自然と、TV局もアニメに力を入れることになります。どの曜日でもチャンネルを回せば何かしらアニメを放送しており、子供たちは夢中になって見ていたものです。今から思えば、子育てをしていたお母さんからすれば、とてもありがたい存在だったのではないでしょうか。

 しかし、のどかな光景の裏側で、業界ではし烈な競争が繰り広げられていたのもまた事実だったのです。

 例を挙げると、関東圏の1981年10月の金曜18時は日本テレビで『六神合体ゴッドマーズ』が、テレビ東京では『太陽の牙ダグラム』がスタートし、当時の少年たちを困らせていました。1983年10月には当時子供たちの間で爆発的な人気を誇っていた『ドラえもん』と同じ時間に『銀河漂流バイファム』が放送されるなど、複数のアニメ放送がぶつかり合うことなど日常茶飯事だったのです。

 このような「裏番組」競争は、他にも数知れず存在していましたが、その中でも特にすさまじい競争が繰り広げられたのが、1982年春の月曜夜7時の枠です。

 しかもこの時の争いは、ただアニメ同士が視聴率を競い合っただけでなく、アニメの歴史に残る事件まで巻き起こっていました。いったいこの時なにがあったのか、紹介していきましょう。

■1982年、月曜よる7時は戦場だった

『手塚治虫のドン・ドラキュラ』は、1982年の「月曜7時枠」で競争を繰り広げたアニメのひとつ。画像は原作マンガ『ドン・ドラキュラ』1巻(秋田書店)

※以下、すべての時間枠は関東圏での話となります。

 1982年4月の月曜日、夜7時から放送されていたアニメとは……。

・日本テレビ『ゲームセンターあらし』
・フジテレビ『釣りキチ三平』
・テレビ朝日『あさりちゃん』
・テレビ東京『手塚治虫のドン・ドラキュラ』

 以上、4作品となります。『ゲームセンターあらし』は、すがやみつる先生が月刊『コロコロコミック』などで連載されたマンガを原作としたアニメで、主人公の石野あらしがさまざまな強敵とゲームで対戦する物語です。当時の子供からは熱狂的な支持を受けており、筆者もこの時期は『あらし』を中心に見ていた覚えがあります。

『釣りキチ三平』は故・矢口高雄先生原作のマンガをアニメ化した、当時の子供に釣りの面白さを教えてくれた名作です。筆者自身も『三平』を見て釣りを始め、40年近く経った今でも暇を見ては海釣りに繰り出しているのですから、アニメの影響力おそるべしです。ただしこの時期は放送2年目に当たり、翌5月に放送は終了しています。

『あさりちゃん』は室山まゆみ先生原作のアニメで、小学生のあさりちゃんがママのカミナリや姉のタタミからのイビリにもめげず、元気に日々を過ごす物語です。アニメ化された時期は連載開始数年の状況でしたが、後に長期連載となり2014年に連載終了。単行本100巻の金字塔を打ち立てるなど、少女マンガ史に燦然と輝く偉大な作品です。

 そして4つ目の作品が、『手塚治虫のドン・ドラキュラ』です。その名の通り、故・手塚治虫先生の原作マンガ『ドン・ドラキュラ』をアニメ化した作品ですが、本作は日本のアニメにおいて「最短で終了したTVアニメ」という記録を持っています。関東地方は全4話、地方局では7話、もしくは8話まで放送されたところも確認されています。

 脚本を担当した小山高生氏によれば、担当した広告代理店が4月末までに払わなければならない電波料を納められず、5月末まで伸ばしてほしいと交渉したが認められなかったため、放送を打ち切られてしまったとのこと。脚本は21話まで完成していたものの5本分が不渡りとなったことを明かしています。

『ドン・ドラキュラ』は真価を発揮することなく終了してしまいましたが、同じ曜日、同じ時間に並べられたタイトルとしては、歴史に名を残すレベルの作者が手掛けた作品ばかりです。もし機会があれば、今は大人となった当時の子供たちに、「あの頃どのアニメを見てた?」と聞いてみたいものです。

(早川清一朗)

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