『ゴーショーグン』最終回から40年 「美しい」を流行語にした伝説のロボットアニメ
マグミクス / 2021年12月28日 17時10分
![『ゴーショーグン』最終回から40年 「美しい」を流行語にした伝説のロボットアニメ](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_73778_0-small.jpg)
■それまでのロボットアニメにない「軽快なセリフ回し」
本日12月28日は、40年前の1981年にTVアニメ『戦国魔神ゴーショーグン』の最終回「果てしなき旅立ち」が放送された日です。本作はロボットアニメでありながら、その個性的なキャラクターの会話と人物描写で人気を得た作品でした。
内容は、進化する謎のエネルギー「ビムラー」を巡って、悪の秘密結社「ドクーガ」と、謎の男サバラス率いる「グッドサンダーチーム」との争奪戦をメインに、主人公の少年・真田ケン太の成長を追っていく物語です。
当初はシリアスな雰囲気がメインでしたが、徐々にギャグを交えた軽快なテンポへと作劇がシフトしていきました。やがて、予告編に代表される声優陣のアドリブのような軽妙なセリフのやり取りが、ファンから注目されるようになっていきます。
実は本作の企画時には、かなりシリアスな展開が予定されていました。本来はレミー島田などが死ぬことでケン太が成長していくという流れでしたが、製作の葦プロダクションが国際映画社と共同で作った前作にあたる『宇宙戦士バルディオス』がシリアスで暗すぎたことの反省から、明るい方向性にシフトしたそうです。この方向転換が序盤から機能したことで、作品が多くのファンに受け入れられるきっかけとなりました。
もちろん、最初に設定された設定は重いもので、特にグッドサンダーチームの3人の過去は作品内で見せる軽い調子とは別の一面を見せています。この二面性がキャラの魅力を一層ふくらまして本作の人気につなげたのでしょう。
キャラ人気といえば、敵側ドクーガ三幹部のひとりであるレオナルド・メディチ・ブンドルは多くのファンを生みました。声を担当した塩沢兼人さんによる「美しい」と「美しくない」のセリフは、当時のアニメファンなら誰もがマネした1981年のアニメ流行語です。この美意識に対するこだわりのエピソードは多く、戦闘中にクラシック音楽を大音量で流す行為は、後のゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズでも再現されていました。
名セリフが多いことでも有名な、ブンドル最大の名セリフだと筆者が思っているのは、ドクーガに6兆ドルの損失を出して、その返済をローンにするか聞かれた時に言った……
「もちろん、潔く一括払いだ!」
……でしょう。この年の第4回アニメグランプリのキャラクター部門で、『六神合体ゴッドマーズ』の明神タケル、『うる星やつら』のラムに次いで3位だったことからも、当時のブンドル人気の高さがわかります。
ちなみに女性声優部門では、それまで不動の1位だった小原乃梨子さんを抜いて本作のレミー役だった小山茉美さんが1位を獲得。作品部門では本作が2位でした(1位は『さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅』)。そして、サブタイトル部門の1位が本作の第26話「果てしなき旅立ち」だったのです。これらの結果だけ見ても、当時の人気の高さがわかることでしょう。
※以下、『ゴーショーグン』最終回のストーリー内容が大量に含まれた文章がありますのでご注意ください。
■ファンからの高い人気は「続編」を生み出したが…
作中の人気エピソードを再編集した劇場版『戦国魔神ゴーショーグン』ポスタービジュアル
それでは、最終回だった第26話「果てしなき旅立ち」について解説しましょう。
ビムラーの地球を破壊するほどのエネルギーが安定するまでのカウントダウンが始まった。その時を待って最終決戦の準備をする両陣営。そして全人類が見守るなか、総力戦が開始される。
……というロボットアニメらしい展開を迎えますが、いわゆるメカ戦には至りませんでした。ゴーショーグンの進化したゴーフラッシャー・スペシャルによって、すべてのメカは自分の意志を持ち、戦うことを拒絶するようになったからです。その後、ドクーガの黒幕のネオネロス皇帝との決着がつき、物語はメインキャラのほとんどが生き延びるというハッピーエンドで終わりました。
この最終回の最後にメインキャラの1年後が簡潔に語られます。こういった手法はそれまでのアニメではあまりなく、ファンサービスとして好評でした。ちなみに、ゲーム『第4次スーパーロボット大戦』のエンディングはオマージュとして、この手法が取り入れられています。
最終回を迎えてもなおファンの熱気は冷めることなく、人気の高かったエピソードの第17話「グッドサンダー危機一発」と第20話「宇宙中継これがドクーガだ」を中心に編集された劇場版が1982年4月24日公開されました。また、この年にスタートした「アニメージュ文庫」で脚本を担当した首藤剛志さんによるノベライズ版が12月に発売されます。
このノベライズ版で続編となる『その後の戦国魔神ゴーショーグン』が発表され、小説による新シリーズとして、続編を希望するファンを喜ばせました。この新シリーズの人気から、新たな劇場版『戦国魔神ゴーショーグン 時の異邦人(エトランゼ)』(1985年4月27日公開)という新作も生み出します。
ほかにも、放映中に発売されたLPレコード「闇よ美しくあれ」は、TV版とは別の新録ドラマが入っていたことで高い人気がありました。当時はまだビデオの普及数がそれほどでもなかったことからアニメのドラマ編は多くありましたが、新録はほとんどなく貴重な存在だったのです。後にヒットするカセット文庫の先を行くタイプのドラマ編でした。
前述しましたが、本作のブンドル人気で声優の塩沢さんも本格的にブレイク、以降はキザなキャラの第一人者ともいえる存在になります。小山さんも本作のレミー役と、この同年に放送開始した『Dr.スランプ アラレちゃん』(1981~1986年)の則巻アラレで一気にトップ声優に上り詰め、不動の人気を得るきっかけとなった『魔法のプリンセス ミンキーモモ』(1982年)のミンキーモモへとつながることになりました。
残念ながら小説版は首藤さんの急逝で未完のまま終了します。また、葦プロダクションのリメイク企画に上がったこともあるそうですが、実現には至っておりません。そのせいか、後年にあまり話題として上がることがない作品となってしまいました。
しかし、前述した通り、当時の高い人気と後世に影響するような作品だったことは間違いありません。それゆえ、当時まだ生まれていなかった若い世代の方々に、ぜひとも見ていただきたい名作だと筆者は思っています。
(加々美利治)
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