放送終了15年目で白熱する『ウルトラマンマックス』人気の秘密 原点回帰と自由な革新性
マグミクス / 2021年12月29日 9時30分
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■原点と革新を両立させた『ウルトラマンマックス』
「最強!最速!」……そんなキャッチコピーを掲げたウルトラ作品が、2005年に放送されていました。『ウルトラマンマックス』と、シンプルでわかりやすいタイトルの作品が放送終了15年を迎えた2021年になって、人気が再燃しています。なぜ今になって話題に上がっているのか? 本作が「原点回帰」と「革新」という相反するふたつの要素を両立させた稀有な作品だったことが、理由のひとつに挙げられます。
『ウルトラマンマックス』の魅力は、まず「単純明快」であることです。これは放送当時から支持される要因であり、ハードでシリアスな連続ドラマ方式だった前作『ネクサス』とは一転、『マックス』はシンプルな一話完結のオムニバス方式で制作されました。
大人向けの作風であった『ネクサス』はハマる人もいる一方、「土曜の朝からメンタル削られる」という声もあり評価は二分されましたが、『マックス』は「子供と一緒に盛り上がった」と、ウルトラ作品が本来持つワクワク感を親子で楽しめる作品でした。
そもそも『ウルトラマンマックス』は「原点回帰」をかなり重要視して制作されています。ウルトラマンの原点である「『ウルトラQ』の摩訶不思議な世界にヒーローが登場する」という視点を意識し、主役はあくまで怪獣や宇宙人。その意思表明として第1話ではいきなり2体の怪獣が投入され、主役をハッキリさせていました。「原点回帰ながらも派手にいく」というメッセージも込められています。
さらに、それまでの平成作品ではオリジナル怪獣ばかりが登場していたのに対して、ゼットンやキングジョー、バルタン星人といった昭和シリーズのスター怪獣たちも登場しました。ハヤタ隊員役=黒部進さんやアキコ隊員役=桜井浩子さんら『ウルトラマン』のスーパースターたちも、別の役として再登場。旧怪獣や過去作の俳優陣が登場する展開は今となっては定番となりつつありますが、『マックス』はその先駆けとなる作品でした。
しかも、過去作とつながりは見せつつも、世界観は全く関係のないパラレルワールドという設定であり、この点も現在では新鮮味があるのかもしれません。
■29人の新旧の才能が集結
全40話の裏話が詳しく読める『ウルトラマンマックス 15年目の証言録』(立東舎)
その他の平成~令和作品との違いといえば、『マックス』がタイプチェンジを行わないのも特徴的です。平成ウルトラシリーズは最初の『ティガ』から、見た目も能力もハッキリ変化する、いわゆるタイプチェンジが採用されてきましたが、『マックス』では昭和シリーズと同様にそれがありませんでした。
平成後期?現在の作品では、使用するアイテム数の増加やデザインの派手化も進んでいますが、本作では一貫して見た目もアイテムも増加しません(中盤でマックスギャラクシーという武器は登場します)。『マックス』の人気が再燃しているのは、「シンプルさ」を求める視聴者の揺り戻しとも取れそうです。
そして、いま『マックス』の面白さを語る人びとのなかでよく言われているのが、「ストーリーが完成されている」ということです。本作は原点回帰を目指した作品でしたが、革新的なのが全39話(スペシャル編も含めて40話)を総勢29人の監督・脚本家たちで作り上げている点です。「バルタン星人の生みの親」である飯島敏宏監督が再びバルタン星人を描いたり、三池崇史監督がウルトラシリーズに初挑戦したりと、伝統と革新を織り交ぜながら制作されました。
2021年に出版された『ウルトラマンマックス 15年目の証言録』によると、各監督には「放送できるものであれば何をやっても構わない」という旨が伝えられ、何よりもクリエイターの自由さを尊重したそうです。さらにストーリーをより良く、長く見せるために番組フォーマットの変更も行われました。それまで定番だったエンディングを廃止し、本編尺を増やすことでクリエイターが描きたいものを存分に活かす工夫をしたのです。
昭和作品もエンディングがないため、この点も原点回帰を意識した部分だそうです。その結果、コメディ回があったり、涙する感動回があったりと、全体の振り幅が非常に大きな作品に仕上がっているのも、『マックス』の見応えが増す大きな特徴でした。
「子供向けに作るが大人が見ても楽しめる作品」と制作チームが目指した通り、放送当時の子供たちが15年経って大人になったからこそ、まさにこのような現象が起きているのかもしれません。
(椎名治仁)
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