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たった12話で終わった特撮番組『魔人ハンターミツルギ』 斬新すぎる戦闘描写は「伝説」に

マグミクス / 2022年1月8日 9時30分

たった12話で終わった特撮番組『魔人ハンターミツルギ』 斬新すぎる戦闘描写は「伝説」に

■長らく謎の存在だった『ミツルギ』

 筆者が初めて『魔人ハンターミツルギ』の存在を知ったのは、小さいころに訪れた親戚の家で見たLPレコードでした。

 そのレコードは特撮作品のオープニングとエンディングを集めたもので、他にも数多くの作品がラインナップされていました。どの作品も面白そうでしたが、中でも『ミツルギ』のスペースには黒く輝く巨大神ミツルギの写真が掲載されており、「なんだかすごく格好いいし、強そうだ」と興味を引かれたのです。

 当時は配信どころかレンタルビデオすらまだ黎明期の時代。昔の特撮番組を見る手段は再放送を待つしかありません。ウルトラシリーズや仮面ライダーシリーズを始めとするさまざまな特撮を日々楽しんでいましたが、待てど暮らせど筆者の住んでいた地域では『ミツルギ』が再放送されることはなく、いつしか存在を忘れ去ってしまいました。

 それから十数年後、秋葉原の中古ショップで『ミツルギ』のLD(レーザーディスク)BOXを見るまでは。

 瞬時に子供のころのワクワクを思い出し、その場でLD-BOXを衝動買いした筆者は急いで家に帰り、でかいディスクをデッキにIN。『ミツルギってどんな作品なんだろう?』と期待に胸膨らませ、映像が表示されるのを待ち構えていたのです。

 ……なんと言いますか、さまざまな面において極めて斬新、極めて奇抜、実にユニークな作品でした。

 作品のベースは時代劇。江戸時代に宇宙のかなたからやってきた、サソリ軍団を相手に戦う正義の忍者・ミツルギの三きょうだい。巨大な宇宙怪獣が現れれば「智・仁・愛!」と叫び、3振りの剣と心を重ね合わせ、巨大神ミツルギを呼び出し立ち向かうストーリーが展開されました。

 本作を見て、何より驚かされたのは戦闘シーンです。当時の筆者はミツルギの写真を数枚見たことがあるだけで、「アニクリエーション」なる技法については何も知りません。

 バトルシーンでは他の特撮番組で見慣れている、着ぐるみによるバトルが展開されるかと思いきや、子供のころにたまに見たクレイアニメのような戦いが始まったのです。巨大神ミツルギがぎこちなく動き、宇宙怪獣と戦うシーンは非常に興味深いものがありました。しかし後に賛否両論あることを知り、「それはそうだろう。これは子供には辛いかもしれない」と感じたものです。

■新技法への挑戦と苦闘が続いた

『魔人ハンターミツルギ』LDに付属のライナーノーツ表紙

 何せ『ミツルギ』が放送された1973年(昭和48年)は、特撮番組が豊富に放送された年です。初代『仮面ライダー』に『ウルトラマンA』。『人造人間キカイダー』『変身忍者嵐』『怪傑ライオン丸』『レインボーマン』『アイアンキング』『サンダーマスク』『ファイヤーマン』と、そうそうたるラインナップが並びます。子供たちの人気を獲得するのは並大抵の難易度ではありません。視聴率低迷により12話で終了したのも無理はないことでしょう。

 しかし、現場のスタッフが特撮の世界に新たな技術を盛り込むべく奮闘していたのもまた事実です。

 本作のモデルアニメーターとして腕を振るった真賀里文子さんは、後にインタビューに答えて当時のさまざまなエピソードを語っています。

 本作でのアニクリエーションは実際に作られたミツルギや怪獣のモデルを少しずつ動かし、コマ送りのようにして戦闘シーンを表現することを指していますが、1日で撮影できるアニメーションは1分にも満たず、アニメーションをせずにカメラの方から寄ってアップにする手法を使って何とかしのいでいたとのこと。

 まず企画から放映までの時間がかなり短く、放映開始時点で3本しかストックがなかったことを明かしています。放送開始後はすぐにスケジュールに追いつかれてしまい、脚本が来たら1週間の間にデザインをして発注し、撮影に入らなければいけなかったそうです。

 予算も少なく、セットに使うヒムロ杉を自分で取ってきたり、爆発に使う火薬はおもちゃ屋で買ってきた花火を自分でバラして使ったりと、さまざまな工夫も行われていました。

 ノウハウや技術はあるから面白くすることはできるのに、時間がないからできない。予算は無くても時間さえあればなんとかなるのに……と、真賀里さんは製作現場で歯がみしていたそうです。終了が決定したときは、やりたいことができなかった悔しさと残念さを感じたものの、正直ホッとした気持ちがあったとも語っています。

 果たして、時間があったらどれほど素晴らしいものができたのか。それを知るすべはもうありませんが、少なくとも、世に出た『ミツルギ』は今でもこうして語られる伝説の特撮作品となっています。少なくとも、特撮の世界に新たな試みを持ち込んだその挑戦の精神は、語り継いでいくべきものでしょう。

(早川清一朗)

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