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野球界の「夢」を現実にした水島新司先生のマンガ作品。イチローも、清原も…

マグミクス / 2022年1月18日 7時20分

野球界の「夢」を現実にした水島新司先生のマンガ作品。イチローも、清原も…

■水島先生のマンガに影響を受けた有名選手たち

 2022年1月10日、漫画家・水島新司先生が肺炎のため82歳で亡くなられました。『ドカベン』『野球狂の詩』『大甲子園』など多数の野球マンガを描き、1958年のデビューから2020年まで63年もの間、現役の漫画家として活動されました。謹んで哀悼の意を捧げます。

 1970年代から80年代にかけて、水島先生の野球マンガは少年たちの血を沸騰させていました。『ドカベン』『男どアホウ甲子園』『一球さん』『球道くん』などの作品に登場する魅力的なキャラクターたちが繰り広げる汗と涙の物語は、少年たちに野球部の扉を叩かせる大きな原動力となっていたのです。

 作品の多くはアニメ化も果たしており、筆者も子供のころにはずいぶん楽しませていただきました。特に『ドカベン』はしばしば再放送も行われていたため、筆者も何回見たのかまったく覚えておりません。TVのチャンネルを合わせて時間が来ればオープニングが流れ始め、山田が、岩鬼が、殿間が、里中が生き生きと躍動する姿を毎日のように見ることができた時代があったのです。

 プロ野球選手のなかにも『ドカベン』を見て野球を始めたと語る方も多く、特に清原和博氏は『ドカベン』秋田文庫版(秋田書店)5巻のあとがきで「私に野球を教え、4番バッターのイメージを強烈に植え付けてくれたのが山田太郎だった」ことを明かしています。

 また、文庫版のあとがきを依頼された清原氏が、水島先生に「ドカベンを再び描いてほしい」と頼んだことが後の『ドカベン プロ野球編』の執筆につながっています。『プロ野球編』で山田は西武ライオンズに入団していますが、これは執筆のきっかけとなったのが当時西武ライオンズに所属していた清原氏だったといいます。

 イチロー氏も『ドカベン』の愛読者であり、『プロ野球編』開始の際に「殿間と一緒にプレイしたい」と要望したため、殿間はオリックス・ブルーウェーブ(現:オリックス・バファローズ)に入団した経緯があります。日本の野球界に水島作品が与えた影響の大きさを物語るエピソードです。そもそも『プロ野球編』で実在の球団と選手の使用許可が出たこと自体が異例なのです。プロ野球界が水島先生の存在をどれだけ重視していたのかを、いま改めて実感します。

■女性プロ野球選手・水原勇気の誕生

女性のプロ野球選手の活躍を描いた『野球狂の詩 水原勇気編』第3巻(講談社)

 水島先生は熱烈なホークスファンとしても知られていました。代表作のひとつ『あぶさん』は、主人公・景浦安武が南海からダイエー、ソフトバンクとホークス一筋37年を渡り歩いており、ホークスの年代史としても貴重な資料となっています。

 ソフトバンクがホークスの経営権を取得した際に、取締役オーナーに就任した孫正義氏が「ホークスに詳しい人から話を聞きたい」と周囲に相談したところ、皆がこぞって水島先生の名前を挙げたことを明かしています。水島先生逝去の際には王貞治会長が「南海・ダイエーとホークスが弱い時に支えていただいたホークスの恩人です」とコメントを出し、故人を悼んでいました。

 球界最高の知将だった故・野村克也氏とのエピソードも秀逸です。女性のプロ野球選手を出したいと考えていた水島先生が知り合いのプロ野球選手にアイデアを打ち明けたところ、ただひとり野村氏だけが「その投手にしかないボールがあれば、ワンポイントとしてなら通用するかもしれない」とアドバイスを送り、『野球狂の詩』の女性投手、水原勇気が生み出されました。

『ドカベン』でルールブックの盲点による得点が物議をかもした際、野村氏は当初水島先生のミスだと考えたものの、後に水島先生が正しいと理解し、自分の勉強不足だと語ったそうです。水島先生の野球へのあくなき探求心を感じさせるエピソードといえるでしょう。

 水島先生の野球、そしてマンガへの情熱は凄まじいものがあり、すでに十分すぎるほどの実績を持っているにもかかわらず、20年ほど前には「もし連載が終わってしまったら、持ち込みをする」と語っておられたことが印象的でした。そんな水島先生も2020年1月に漫画家を引退。ついにこの日を迎えてしまいました。

『大甲子園』の中西球道が163キロを投げていたころ、現実の高校生が160キロ代を出すなど夢物語でした。しかし2019年に佐々木朗希投手が163キロを記録し、ついに夢は現実となったのです。水島先生は亡くなられましたが、先生が描いた物語は現実となって、新たな世界を切り拓き続けているのです。

 最高の漫画、最高の情熱を、たくさんたくさんありがとうございました。水島先生、お疲れさまでした。

(早川清一朗)

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