『ガンダム』のお約束「生身の戦い」の意味 互いの思いをぶつけ合うが、結果は…
マグミクス / 2022年1月29日 6時10分
■「今、君のようなニュータイプは危険すぎる」
生身。
全高10メートルを超える巨大兵器「モビルスーツ」が闊歩する宇宙世紀の戦いにおいて、人の肉体は、あまりにも頼りないものです。
「MS-06 ザクII」が手にする口径120mmのザクマシンガンは、RX-78-2ガンダムには通じませんが、もし人間に対して使用されたならば、直径12cmの金属塊は容易に五体を消し飛ばすでしょう。
それでも、生身でモビルスーツ相手に戦闘を行った事例は存在しています。『機動戦士ガンダム』第14話では、本国に帰りたいジオン兵が生身でガンダムに爆弾を取りつける勇敢さを見せ、ガンダムを窮地に陥れています。
『機動戦士Vガンダム』では、ウッソ・エヴィンを動揺させるために水着姿の女性兵士がガンダムに群がり、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』ではシロー・アマダが3機のザクを相手にロケットランチャー片手にゲリラ戦を仕掛けています。
しかしこれらの戦いは、巨大なマシン相手に生身で戦わなければいけない状況に追い込まれたためでもあります。本来、「ガンダム」は生身で決着をつける世界では無いのです。
それでも、「ガンダム」には生身の人間同士が戦う場面がしばしば描かれています。それらの場面は、数多くの因縁に彩られてきた登場人物たちが思いのたけをぶつけ合うケースが多く、印象的なシーンとして多くの人の心に残っています。
●『機動戦士ガンダム』最終話のアムロとシャア
代表的な場面として知られているのが『機動戦士ガンダム』最終話「脱出」で繰り広げられた、アムロとシャアの戦いでしょう。
互いに乗機を失い、もはや戦う意味はない状況にも関わらず、シャアは強力すぎるニュータイプであるアムロを危険視し、あるいはララァを殺された恨みからか戦いを挑みます。
ふたりの男は激しく言葉を交わしながら戦い続けました。最終的にはアムロの剣がシャアのヘルメットを貫通し額を傷つけ、アムロは右腕を貫かれたところで、セイラとララァの介入もあり、戦いは止まります。このときつかなかった決着は、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にまで引き継がれ、そこでも生身の戦いが繰り広げられたのは真に「因縁」というものなのでしょう。
■「ならば、今すぐ愚民どもに英知を授けてみせろ!」
ジュドーとハマーンの生身の戦いが描かれた最終話「戦士、ふたたび……」を収録した、「機動戦士ガンダム ZZ 12」DVD(バンダイビジュアル)
●『Zガンダム』主要人物どうしが遭遇、人間の本音と本性をさらけ出す
続編である『機動戦士Zガンダム』でも、最終話「宇宙(そら)を駆ける」で主要人物が生身で一堂に会する場面が見られました。パプティマス・シロッコとハマーン・カーンに追い込まれたクワトロ・バジーナはコロニーレーザーの居住区画へと逃げ込みますが、シロッコとハマーンも後を追い、エゥーゴ、ティターンズ、アクシズの三勢力を代表する人物が図らずも相対することになりました。
ハマーンはシャアに執着するも、シャアはハマーンのもとへ行くつもりはなく、話は平行線に。また、シロッコは銃を出さずに登場し、ハマーンに銃口を向けられ狼狽する醜態を見せ、傲岸不遜な性格ゆえに相手を侮る性格であることが示されるなど、生身でこそわかる本音と本性があからさまになったシーンでもあったのです。
●『ガンダムZZ』相手を「求める心」と「拒絶」
『機動戦士ガンダムZZ』の最終話「戦士、ふたたび……」でも、わずかではありますが生身で本音をぶつけ合うシーンがありました。ジュドーとハマーン、ふたりのニュータイプが激突した最後の戦いで、コア・ファイターからはじき出されたジュドーに直接とどめを刺そうと、ハマーンもキュベレイのコクピットを飛び出します。
しかしジュドーは銃撃を巧みにかわすと、あろうことか鉄パイプでハマーンを殴打します。
心の奥底で、密かにともに歩む相手を探していたハマーンは「ジュドー、私と来い……」と叫びますが、ジュドーは拒絶します。寒く孤独な地位で生きてきたハマーンにとって、ニュータイプとしてともに歩める可能性があるジュドーへの呼びかけは本心からのものだったのでしょう。結局ジュドーはハマーンを拒絶してしましますが、もし応えていたらどうなっていたのかは興味深いところです。
●『逆襲のシャア』草原での取っ組み合い
そして前述したように、『逆襲のシャア』でもアムロとシャアは生身での戦いを繰り広げています。サイド1のコロニー・ロンデニオンで遭遇したふたりは、草原を転がりながら取っ組み合い、殴り合いを繰り広げ、互いの想いをぶつけ合いました。
いちパイロットとして見た現実をぶつけるアムロ。あくまで理想を叫ぶシャア。かつて幾度となく死闘を繰り広げ、時として味方でもあったふたりの間には、すでに深くて広い溝があることだけが明らかになり、最後の戦いへとつながっていきました。
「ガンダム』世界における生身同士の激突は、総じて「互いが分かり合えないことを再確認する」ために行われているように思えます。全てをぶつけあう前の、覚悟を決めるための最後の儀式。そういうものなのかもしれません。
(早川清一朗)
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