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『ダイの大冒険』ポップついに覚醒! 編集部から「殺しましょう」と言われた危機も

マグミクス / 2022年1月29日 10時30分

『ダイの大冒険』ポップついに覚醒! 編集部から「殺しましょう」と言われた危機も

■味方だけでなく敵にも影響を与える存在感

 TVアニメ『ダイの大冒険』、2022年1月29日の放送でついに光ったポップの持つ「アバンのしるし」。原作でも人気の高かった名シーンがようやくアニメ化されました。今回のことで精神的に急成長を遂げたポップ。これまでの歩みを振り返ってみましょう。

※原作マンガはすでに完結してから日が経って、最終回までの展開を知っている人も多いことと思いますが、本稿ではあくまでも現在放送中のTVアニメでの展開のみを記載いたします。

 ポップの一番スゴいところ。それは他者に与える影響力だと筆者は思っています。大魔王バーンに敗れ、戦う意思をなくしたダイを立ち直らせたのもポップでした。まさにパーティーの中心人物。その力は意識せず、敵対する相手にも大きな影響を与えていました。

 たとえばクロコダイン。最初はポップを小物と軽く見ていました。しかし、かなわないとわかっていても必死に戦うポップの姿が、捨てたはずの武人の心と誇りを取り戻させ、後悔の涙を流させるきっかけになります。その結果、クロコダインは頼もしい仲間となりました。

 こういった経緯で、ポップから親しみを込めて「おっさん」と呼ばれるようになったクロコダイン。キルバーンからひとりで逃げるポップの姿を見て、救出すると、いきなり逃げたことがありました。勇猛果敢なクロコダインの不意を突いた行動にポップを逃がしてしまうキルバーン。その後、クロコダインは今のポップがひとりで逃げていたことから緊急事態を察し、それゆえにためらわず逃げることを選んだことを告げます。

「そろそろ付き合いも長いからな」

 そう言ったクロコダインに抱きついて号泣するポップ。以前の勇猛果敢なだけのクロコダインではありえない戦法に、ポップとの出会いで大きく成長したことがうかがえる名シーンです。おそらくダイやマァムと同じくらい、クロコダインもポップを理解しているのでしょう。

 また、ハドラーもポップの影響を大きく受けた人物です。ハドラーはザボエラとの夜襲を「見損なった」とポップに罵られ、結果的に失敗、自身の保身ではなく誇り高き武人であることを願って超魔生物となりました。ほかにも理由はありますが、このポップの言葉も少なからずハドラーの変心に影響を与えていると思います。

 ここで面白いのが、クロコダインもハドラーもザボエラの甘言によって武人の誇りを失い、ポップの言葉で目が覚めて真の武人としてリスタートしている点。ポップ自身は正々堂々と戦うというよりも、相手を挑発して自分の有利な状況を作るという策士の面があります。そう考えるとむしろザボエラに近い戦闘スタイルかもしれません。

 しかし大きく違うのは、ポップはいつも敵を自分より格上と考え、真摯に向き合って必死に自分の身体を動かします。他者を見下し、利用できるものは何でも利用するというザボエラとは真逆の考え方。同じ頭脳戦を得意とする者同士ですが、この一点で真逆の戦い方になるわけです。

 このポップの根底にある相手へのリスペクトの気持ちが、ザボエラにない武人たちの心を動かす原動力になっているのでしょう。

 もちろん、ポップ自身も他者からの影響で大きく成長してきました。そういう意味では本作の成長の物語は、ポップ中心にあったと言っても過言ではないかもしれません。

■ダブル主人公として期待される今後の展開

 もともとポップは、原作者の三条陸先生がダイとのダブル主人公として考えていたそうです。勇者としていつもカッコいいダイ。その逆に情けない一般人代表がポップでした。このポップが徐々に成長することで「ジャンプマンガ」のセオリーにない魅力的なキャラになると思ったそうです。

 結果的に三条先生の狙い通り、ポップは本作のもうひとりの主人公として人気を得ましたが、そこまでは苦難の道でした。

 ポップの成長を描くため、当然、最初はダメなところをいくつも見せなくてはなりません。しかし、それは先のことを知らない読者はもちろん、ジャンプ編集部にもわからず、ポップの人気は下がる一方でした。そして、ついに「ポップを殺しましょう」と編集部から言われたそうです。

 もちろん三条先生は事情を説明して編集部を説得しました。この話はクロコダイン戦の直前だったそうで、確かにまぞっほとのエピソード以降から、ポップの成長エンジンがかかってきた感じでしょうか。実際、バランとの戦いで一度ポップが死んだ頃には、惜しむ声の方が大きかったと思います。

 振り返ってみると、ポップの活躍シーンがダイに匹敵するほどあることも、本作がダブル主人公だと分かる点でした。特にポップの活躍シーンはさっそうとカッコいいダイと比べると、ピンチからの逆転劇が多く、ドラマ的に盛り上がるシーンを一手に引き受けている感じです。最終的に敵を倒すダイの前座として、舞台を温める役どころと言ったところでしょうか。

 このように成長著しいポップですが、いまだに克服できない欠点がありました。それは今回のアバンのしるしの一件でも露呈した、自分のことに自信を持てないという点です。

 マトリフの教えもあって、戦場ではクールに状況を把握し、パーティーの頭脳として活躍するポップ。しかし、自分のことをいつも低く見て、正当に評価するのは苦手でした。それは自分が選ばれた存在でなく、一般人ということも影響しているのかもしれません。

 それが今回、アバンのしるしが光らなかったこと。そして、これまでメルルの気持ちに気付かなかったことに通じています。自分が女の子に惚れられるようなことはないと、自分のことを卑下していたせいでしょう。

 しかし、本人はそう思っていても仲間や周囲はそう思っていません。ポップには絶対的な信頼を寄せている。……そう思わせる描写が随所に出ています。今回の一件で誰もがアバンのしるしが光らなかったことで、ポップを責める人がいなかったのも信頼の証でしょう。

 あえて筆者の感想を言うと、ポップのアバンのしるしだけほかの人に比べて難易度が高いように思えます。そう思うファンの方も多かったようで、ネットでは「ポップだけ絶縁シートを外していないのでは?」という声も出てきました。みなさんポップのことが大好きですね。

 ちなみに気付いた人も多いことですが、TVアニメでは過去にポップのアバンのしるしが光った描写がありました。こういったアニメオリジナルも原作マンガを終了させた作品ならではです。

 このように、今回の一件がポップを格段に成長させました。今後、パーティーメンバーでもっとも活躍する可能性大。戦いはバーンパレスに移り、物語はついに最終局面までノンストップです。これからの物語を楽しみに見ていきましょう。

(加々美利治)

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