『ガンダム 水星の魔女』で復活!「日5アニメ枠」の歴史 昭和時代から話題作を放送
マグミクス / 2022年1月31日 17時10分
■平成ガンダムシリーズなどの名作を生み出した放送枠
ガンダムシリーズのTVアニメ最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が、MBS/TBS系全国28局ネットの日曜午後5時のアニメ枠(通称「日5」)にて、10月より放送開始となることが決定しました。そこで、あらためて「日5」の歴史について振り返ってみましょう。
公式的には「日5」最初の作品は『コードギアス 反逆のルルーシュR2』(2008年4月6日~9月28日)となっています。続いて放送された『機動戦士ガンダム00(2nd Season)』(2008年10月5日~2009年3月29日)が、「日5」初のガンダムシリーズでした。
もともと、この「日5」と呼ばれる枠は、土曜午後6時からの「土6」と言われる枠が移動してきたものです。報道枠の拡大という形で、日曜日に放送されていたニュース番組が「土6」に移動、アニメ枠は「日5」に移動しました。
後に「日5」は『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ(第2期)』(2016年10月2日~2017年4月2日)を最後に8年半にわたって続いてきた枠が消滅、MBS/TBS系列の全国ネットのTVアニメは『アニメサタデー630』と呼ばれる土曜午後6時半から7時半の1時間のアニメ枠に引き継がれます。
しかし、この枠も『ゾイドワイルド』(2018年7月7日~2019年6月29日)と『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』(2018年1月6日~2019年6月29日)を最後に消滅しました。
こういった経緯から「日5」として5年半ぶり、MBS/TBS系列としても深夜の時間帯以外のファミリー枠で、再放送ではないTVアニメを放送するのは3年3か月ぶりとなるわけです。
「日5」枠のTVアニメは、とにかく話題性がありました。まず前述した作品のように、TVアニメにシーズン制を本格的に導入したことが挙げられます。それまでも人気作品では続編が制作されることがありましたが、マンガ原作作品などのTVアニメ化で原作に追いつくという問題を解決し、分割クール制を一般に定番化させたのは「日5」がきっかけでしょう。
逆にリメイクという形になった『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(2009年4月5日~2010年7月4日)では、原作マンガ最終回に合わせる形で1クール(3か月)延長させ、ほぼ同時に最終回を迎えて話題になりました。
しかし、この分割クール制の弊害か、枠が消失したために他局で放送されるようになった作品もあります。『七つの大罪』(2014年10月5日~2015年3月29日)や、『僕のヒーローアカデミア』(2016年4月3日~6月26日)などがそうでした。
ガンダムシリーズも「ガンダムビルドシリーズ」や「SDガンダムシリーズ」などの新作、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』(2019年4月29日~8月12日)といった編集作品は他局で放送されています。しかし、「日5」枠消滅以降に「機動戦士ガンダム」のタイトルを継承したTV用新作では製作されていません。
つまり「日5」枠復活は、ガンダムTVシリーズ復活にふさわしい古巣の舞台、ということになるかもしれません。
■歴史の影に埋もれた「日5」作品があった?
昭和時代に「日曜5時」枠で放送されたアニメ「ビデオ戦士レザリオン DVD COLLECTION VOL.1」(東映)
前述した文章のなかで、公式的には「日5」最初の作品という言い方をしましたが、その理由は、それ以前に日曜午後5時にTBS系列で放送されたTVアニメ作品があるからです。その第一号となる作品が、当時の人気作品のひとつだった『プラレス3四郎』(1983年6月5日~1984年2月26日)です。(ただしMBSなど一部のテレビ局では放送日時が違いました)
原作マンガは「週刊少年チャンピオン」に連載されていた同名の作品で、原作は牛次郎先生、作画は神矢みのる先生です。連載開始から1年ほどしか経っていない段階でのTVアニメ化は異例の速さで、本作に対する期待の高さがうかがえることでしょう。
しかし、そのために原作のストックがなく、登場キャラは同じだったものの、ストーリーはほぼTVアニメオリジナルになっていました。また、登場するプラレスラー(主人公たちが使用する1/6スケールのフィギュアロボット)は原作マンガでは表情豊かでセリフもありましたが、TVアニメでは完全なロボットとなっています。
当時、アニメではキャラクターデザインのいのまたむつみさんや、独特のアクションが人気だった金田伊功さんの作画が話題になっていました。
その後番組として放送された『ビデオ戦士レザリオン』(1984年3月4日~1985年2月3日)も話題になった作品です。この作品は、『超電磁ロボ コン・バトラーV』から続く、東映テレビ事業部製作のロボットアニメシリーズの9作目にして最終作でした。
本作はシリーズの異色作としてスタートします。敵が異星人ではなく地球人の反乱軍となり、敵も味方も量産型のロボットを持っているという、後にリアルロボットものと呼ばれる要素を組み込んでいました。物語にも、いくつかハードな人間ドラマを組み込む予定だったそうです。
主役ロボであるレザリオンも、それまでのロボットと違って「合体」をしないタイプで、変形パターンも従来のものとは大きく異なるタイプの異色な存在でした。パワーアップ形態も増加装甲のレーザーバトルギアを装備するというもので、商品名が「フルアーマーレザリオン」だったことからも、多分にリアルロボットものを意識したものだったことがわかります。
しかし、本編ではこういった設定が生かされることなく、異色のエピソードがいくつかあったものの、より子供向けの方角に舵を切ることになりました。そして、後半から当時放送中だった『宇宙刑事シャイダー』との掛け持ちで、吉川進プロデューサーと脚本家の上原正三さんがメインとして参加、敵が従来と同じく異星人というパターンになります。
ちなみにタイトルにある「ビデオ」はビデオゲームの略だそうで、前番組の『プラレス3四郎』同様、家庭用ゲーム機の普及直前でコンピューターという存在が身近になってきた世相の影響下にあったと言えるかもしれません。
実は、日曜午後5時からの30分枠は上記の2作品と、「日5」と呼ばれる作品以外のTVアニメの本放送は関東ではありません。もちろん他局の放送もです。一説には、日曜夕方は子供が遊んでいて、まだ帰る時間ではないからテレビ局側が避けている……ともいわれています。
ちなみに日曜午後5時半からの時間帯では、テレビ東京がアニメ枠を作る21世紀以降まで、関東ではTVアニメの本放送はありません。録画機器が各家庭に一台あるのが当たり前になった昨今では考えられない話ですね。
こういった歴史のある「日5」枠再開の第一弾となる『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。はたしてどんな作品になるのでしょうか? 次なる情報解禁を期待して待ちたいと思います。
(加々美利治)
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