「ジャンプ」驚異の「2発屋」マンガ家4人 バトルものから異例のラブコメ転身も?
マグミクス / 2022年2月9日 11時50分
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■一生分の疲労を二度も経験?
世の中「一発屋」なんて人を揶揄する言葉がありますが、大大大前提として、し烈な競争社会において一発当てることはとんでもなく難しいことであり、それだけですでに偉大なのです。
そんななか、アンケート至上主義とされる「週刊少年ジャンプ」という戦場で、一発どころか、二発以上ヒット作を持つ、神に選ばれたとしか思えないマンガ家の先生が多くいらっしゃいます。本稿ではそのなかでも、現段階において確実なヒット作を2作品持っていらっしゃる先生を、少々、軽薄な響きの呼称ではありますが「2発屋」と讃えて、その偉業をご紹介します。
●奇跡のカムバックを遂げた……島袋光年先生
この方の存在は「ジャンプ」史において重要です。1997年に『世紀末リーダー伝たけし!』を連載開始すると、これが大ヒット。初期はヒューマンドラマの要素が強かったですが、のちにギャグ編とバトル編を交互に連載するという変わった連載構成になります。
ことギャグ編における影響は大きく、『ボボボーボ・ボーボボ』の澤井啓夫先生をはじめ、ギャグマンガのみならず、お笑いシーン全般に大きな影響を与えました。ただ、残念ながら『たけし』は先生の不祥事で打ち切りとなってしまいます。
しかし、「しまぶー」はカムバックします。読み切りとして発表していた、美食バトルファンタジー『トリコ』でジャンプ本誌に連載復帰。これがコミックス全43巻のロングラン作品となり、累計発行部数はなんと2500万部を突破します。アニメも放送され、『たけし』と並んで島袋先生の代表作となりました。
●2ジャンル制覇!矢吹健太朗先生
可愛い女の子キャラを描かせたら他の追随を許さない矢吹健太朗先生ですが、ある世代の方々はその「転身」ぶりに驚かされたことでしょう。
矢吹先生は2000年連載開始の『BLACK CAT』で、スマッシュヒットを飛ばします。能力系バトルマンガにクライムサスペンスの要素を取り入れた本作は、主人公トレインをはじめとする男性キャラのあふれんばかりの魅力に女性読者の心もつかみ、連載終了後もアニメ、ゲーム、小説と多くのメディア展開がされました。
そんな矢吹先生は、2006年にジャンプ本誌で『To LOVEる -とらぶる-』(脚本:長谷見沙貴)を連載開始。これが第1話から過激なお色気シーンの連続で、前作とはうって変わって男性読者の脳髄を蹴飛ばしに蹴飛ばし、大ヒットとなりました。
■心身を削って描いた大ヒット作たち
●「3発目」も大好評連載中……松井優征先生
現在、『逃げ上手の若君』が好評連載中であり、とっくに「3発目」を成功させているのではないかという声も聞こえてきそうですが、松井優征先生も紹介させてください。
2004年連載開始のデビュー作『魔人探偵脳噛ネウロ』が、いきなり全23巻のロングランヒット。魔人と女子高生コンビによる、トリッキーな設定の極上ミステリーエンタメでした。アニメ化、ゲーム化もされています。
そして2012年からは謎の生物である担任を暗殺しなくてはならない、インパクト抜群な設定の『暗殺教室』が、これまた全21巻で累計発行部数2500万部の大ヒット。本作はアニメ化、そして実写映画化もされ、街中のいたるところに「殺せんせー」のあの笑顔が出現しました。
●巨匠中の巨匠……鳥山明先生
恐縮も良いところですが、鳥山明先生もまた「ジャンプ」本誌の連載に限っていえば堂々たる、あまりにも偉大な「2発屋」です。3年以上にわたる長期連載においては1980年連載開始の『Dr.スランプ』、そして1984年連載開始の『ドラゴンボール』の2作品、どちらも社会現象、そして地球規模の人気を獲得しているのです。作品のスケール感と、その人気が相関を成すというのも非常に珍しいのではないでしょうか。
さてご存知の通り鳥山明先生はその後、短期集中連載という形でジャンプ本誌に作品を発表しています。先生曰く「(もともと)週刊連載はむいていないのでありました」とのことで、いかに上記2作品を心身削りながら執筆されていたかがうかがえます。
鳥山先生だけではありません。今回、ご紹介させていただいた先生がたも、当然のごとく、長期週刊連載を終えるだけでも「一生涯」分に相当する疲労が蓄積されていたことでしょう。それほどハードな連載を終えてなお、次回作の構想を練り、改めて「週刊連載」で発表する……。「しまぶー、新連載が始まったのか」とのんびり構えて読んでいましたが、よく考えればそこには尋常ならざる覚悟が必要だったはずです。改めて、すべての週刊連載中のマンガ家の先生に敬意を表したく思います。
(片野)
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